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真実はすぐそばに(13)
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「お前は、俺がシロヤギだったら嬉しいのか?」
私は、シロ先輩の瞳を見つめ返す。不安と期待が入り混じったように見えるその視線に、胸の奥がきゅっとなるのを感じた。私は、ゆっくりと答えた。
「もちろんです。シロ先輩がシロヤギさんなら、私たち、子供の頃に既に出会っていたんですよ! すごくないですか? しかも、シロヤギさんは私の背中を押してくれた、大切な人なんです。それがシロ先輩だったら嬉しいに決まってるじゃないですか。昨日、この可能性に気づいてから、私は何も手に付かないくらいドキドキしていました。シロ先輩も、もしかしたらと思ったから、あの神社に来たのでしょ?」
そこまで一気に話すと、私は大きく深呼吸をした。心臓の鼓動が激しくなっている。シロ先輩は、しばらく黙って考え込むようにしていた。私は、シロ先輩が口を開くのを待つ。シロ先輩は、やがて小さな声で言った。
「……行くまではあの神社の思い出なんてほとんど思い出せなかった。どんな感じのところかも思い出せなかったくらい。俺も子供の頃に神社とかで遊んでいたよなって程度に記憶と言うか、知識として覚えている感じで。昨日も、本当に散歩がてらあの場所に寄っただけだったんだ。だけど、一歩足を踏み入れた瞬間、そうそうこんな所だったって、懐かしさが込み上げて来た」
シロ先輩が一度言葉を切る。私はじっと彼の目を見た。
「それって、幼い頃の記憶を思い出したってことですよね? じゃあどうして、どうだろうなんて」
私の言葉に、シロ先輩が苦笑いを浮かべる。
「クロはさ、シロヤギとの思い出をしっかり覚えているみたいに話すけど、それって完璧か? シロヤギとのやりとりを一言一句正確に覚えているのか? 違うだろ?」
「……それはそうですけど」
シロ先輩は、私の目を覗き込んでくる。私は、その目に吸い込まれそうになる。その目は真剣そのもので、決して話をはぐらかそうとしているようには見えなかった。
「俺が覚えていないのも、それと同じことだ。なんとなくあの神社に遊びに行っていた記憶はあるけど、どんな風に遊んでいたのか、そこまで明確には記憶してないってこと」
私は、小さくため息をつく。
「……そう、ですか」
シロ先輩から肯定の言葉が聞きたかったのに、そうならなかったことに落胆している自分がいる。でも、よく考えるとそんな簡単に思い出せたら、最初から悩んでいたりしないはずだ。それに、シロ先輩の話にも筋が通っている。
私は、シロ先輩の瞳を見つめ返す。不安と期待が入り混じったように見えるその視線に、胸の奥がきゅっとなるのを感じた。私は、ゆっくりと答えた。
「もちろんです。シロ先輩がシロヤギさんなら、私たち、子供の頃に既に出会っていたんですよ! すごくないですか? しかも、シロヤギさんは私の背中を押してくれた、大切な人なんです。それがシロ先輩だったら嬉しいに決まってるじゃないですか。昨日、この可能性に気づいてから、私は何も手に付かないくらいドキドキしていました。シロ先輩も、もしかしたらと思ったから、あの神社に来たのでしょ?」
そこまで一気に話すと、私は大きく深呼吸をした。心臓の鼓動が激しくなっている。シロ先輩は、しばらく黙って考え込むようにしていた。私は、シロ先輩が口を開くのを待つ。シロ先輩は、やがて小さな声で言った。
「……行くまではあの神社の思い出なんてほとんど思い出せなかった。どんな感じのところかも思い出せなかったくらい。俺も子供の頃に神社とかで遊んでいたよなって程度に記憶と言うか、知識として覚えている感じで。昨日も、本当に散歩がてらあの場所に寄っただけだったんだ。だけど、一歩足を踏み入れた瞬間、そうそうこんな所だったって、懐かしさが込み上げて来た」
シロ先輩が一度言葉を切る。私はじっと彼の目を見た。
「それって、幼い頃の記憶を思い出したってことですよね? じゃあどうして、どうだろうなんて」
私の言葉に、シロ先輩が苦笑いを浮かべる。
「クロはさ、シロヤギとの思い出をしっかり覚えているみたいに話すけど、それって完璧か? シロヤギとのやりとりを一言一句正確に覚えているのか? 違うだろ?」
「……それはそうですけど」
シロ先輩は、私の目を覗き込んでくる。私は、その目に吸い込まれそうになる。その目は真剣そのもので、決して話をはぐらかそうとしているようには見えなかった。
「俺が覚えていないのも、それと同じことだ。なんとなくあの神社に遊びに行っていた記憶はあるけど、どんな風に遊んでいたのか、そこまで明確には記憶してないってこと」
私は、小さくため息をつく。
「……そう、ですか」
シロ先輩から肯定の言葉が聞きたかったのに、そうならなかったことに落胆している自分がいる。でも、よく考えるとそんな簡単に思い出せたら、最初から悩んでいたりしないはずだ。それに、シロ先輩の話にも筋が通っている。
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