クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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真実はすぐそばに(11)

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 私は、思わず身構えて唾を飲み込む。シロ先輩は、チラッと私を見た。それから、小さな声で言った。

「どうだろうな」

 拍子抜けした。それから、シロ先輩の言葉の意味を考える。

 私は、シロ先輩が認めてくれるものとばかり思っていた。それなのに、シロ先輩は、私の質問に対して否定も肯定もしなかった。どうして、そんな曖昧な返事をするのだろう。

 私が混乱していると、シロ先輩は困ったように笑った。私は、シロ先輩が一体何を言いたいのか分からず困惑していた。シロ先輩は、そんな私を見て言った。

「まぁ、ちゃんと話をするから、とりあえず、飯を食え」

 私は、言われるままに、スプーンを手に取った。シロ先輩は、いつもと同じように優しげに微笑んでいる。私は、戸惑いながらも食事を口に運んだ。

 シロ先輩は、私が食べ始めたのを確認すると、自分も食事を再開した。私は、シロ先輩が何か言い出すのを待ったが、結局、何も話すことはなく、食事を終えた。

 食後のコーヒーを飲んでいる間も、シロ先輩は何も言わなかった。私は、とうとう我慢できずにシロ先輩に声をかける。

「あの。どうだろうって、どう言う意味ですか?」

 シロ先輩は、カップに残っていたコーヒーを一口飲むと、静かにソーサーに置いた。

「いや。お前には悪いんだけどさ」

 そう言ってから、シロ先輩は、申し訳なさそうに頭を掻いた。私は、シロ先輩が何を言うつもりなのか全く予想できなかった。シロ先輩は、一呼吸置くと真っ直ぐな目で言った。

「そのシロヤギっての、よくわからなくて」

 私は、シロ先輩の言葉をすぐ理解することができなかった。頭が真っ白になってしまって、次の言葉が出てこなかった。私は、呆然としたままシロ先輩を見る。

 シロ先輩は、苦笑いを浮かべている。その表情は、とても冗談を言っているようには見えなかった。

 私は、シロ先輩の言葉を頭の中で反すうする。シロ先輩の言ったことを理解しようとするが、なかなか上手くいかない。

 シロ先輩は、そんな私の状態を確認しつつ、言葉を選ぶように慎重に話し始めた。

「シロヤギの話を聞いた時、他人の思い出のはずなのに、妙にその光景が頭にありありと思い浮かんだんだ。だから、俺はその話を知ってる気がすると思った。だけど、お前に確認すると、前にも聞いたことのある話だって言われただろ? それで、ああ、そうか。だから知っていたのかって納得した」

 私は、黙ってシロ先輩の話を聞く。シロ先輩は、さらに続ける。
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