クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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シロヤギさんにまた会えた?!(6)

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「まさか文通って……同じクラスの男子と交換日記……なんてオチじゃないだろうな」

 そう言ってシロ先輩はじっと私を見つめてくる。いつも通りの落ち着いた目だけれど、どこか探るような色を帯びている気がする。

「もう、何なんですか。シロ先輩まで」

 シロ先輩の妙に真剣な態度に戸惑ってしまう。何とか話を逸らそうと試みるが、二人とも引いてはくれなさそうだ。

 こんな状況を作り出した白谷吟を恨む気持ちを込めて睨んでみるが、彼は、気にも留めずに平然と笑っているだけだ。

(まったく、何を考えているのやら)

 諦めムードで私が溜息をついていると、またもや白谷吟が爆弾を投下した。

「でも、交換日記っていうのは、当たらずも遠からずって感じだよねぇ」

 そう言いながら愉快そうに笑う。シロ先輩と萌乃は、驚いた顔で同時に私を見た。私は、恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、慌てて首を横に振る。

「いや、あの……交換日記っていうか、メ、メモのやり取りをしてただけですよ……」

(何これ。何の罰ゲーム?)

 頭の中でぐるぐると疑問が渦巻き、羞恥心で体が熱くなっているのを感じる。いや、体が熱いのは酔っているせいもあるかもしれない。

 とにかく、何とかこの状況から逃れたい。しかし、私の願いとは裏腹に、萌乃の興味は止まらない。

「へー、どんな内容の交換日記だったんですか?」
「だから、交換日記じゃないから。本当にちょっとしたやりとりだったの。今日の体育の授業が嫌だったとか、ピーマンを残して親に叱られたとか、そんな些細な日常の愚痴みたいなものを書いていただけなの」

 私の説明に、萌乃は不満げである。頬を膨らませて、本当にそうなのかと訴えるように白谷吟を見る。

 萌乃の無言の圧力を受けても、白谷吟は、涼しい表情でニコニコと微笑んでいる。この人のマイペースぶりには、感服してしまう。その隣でいつの間にか口をつぐんだシロ先輩は、少し考え込むようにして顎に手を当てていた。

 私は萌乃を諦めさせるため、仕方なく詳細を掻い摘んで話すことにする。

「子供の頃、私は大切にしていた物を落としてしまった事があるの。次の日探しに行くと、それは少し高い位置に拾い上げてあったの」
「誰かが拾ってくれたんですね」

 萌乃の言葉に、私は軽く頷いた。

「そうなの。とても大切な物だったから、拾ってくれた人は誰だか分からなかったけど、私はお礼が言いたくて、それが置いてあった場所にメモを残したの。見つけましたって」
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