89 / 155
弱点は、たまご!?(8)
しおりを挟む
萌乃が不思議そうに尋ねると、白谷吟は小さく首を横に振る。どうやら卵全般が駄目らしい。どんなに調理に手を加えていても、あのデロンとしたものが入っているのだと思うと、どうしても嫌悪感があるのだと言う。
アレルギーではないため、卵が使われていると分からなければ問題なく食べられる。しかし、卵を使った料理が食べられても、苦手意識は拭えないのだという。だから、オムライスなどの卵料理が出てくると、つい避けて通ってしまうらしい。
パーフェクトヒューマン白谷吟にそんな弱点があったなんて知らなかった。私と萌乃は、興味津々といった様子で、卵の何が嫌なのか詳しく聞こうとする。しかし、白谷吟は顔を赤くして、そこで話を終わらせた。
ひとしきり笑い終わったシロ先輩が、息を整えながら口を開く。
「まぁ、こいつにも苦手なものくらいあるさ。あまりイジメてやるなよ」
そう言って、シロ先輩は私と萌乃の肩にポンッと手を置いた。白谷吟は恨めしそうな表情でシロ先輩を睨んでいた。
「誰のせいでこんな話になったと思ってるんだよ」
白谷吟の恨み節は、シロ先輩の耳に届いているのかいないのか、彼は楽しそうに笑みをこぼすだけだった。
結局、その後もその話題で盛り上がり、他の話が進まなかったため、また後日改めて話し合いをすることになった。
でも、たまにはこういう何気ない雑談をするのもいいかもしれない。私たちはチームを組んで仕事をしているのだ。仕事を円滑に進めるためには、お互いのことをもっと知って関係を深めておくべきだろう。
そう考えると、今日のこの時間は無駄ではなかった気がする。そんなことを考えつつ、シロ先輩と白谷吟の顔を見る。二人は言い合いをしながらも、楽しげな笑みを浮かべていた。さすがは幼馴染だなと思い、自然と笑みがこぼれる。萌乃も白谷吟との距離を縮めようと思っているのか、いつもより積極的に彼に話しかけていた。
私はそんな様子を眺めながら、このチームの絆はきっと深まるだろうと確信めいたものを感じていた。これからもっと言葉を重ねて、行動を共にして、そしていつか……。
いつしかシロ先輩のことだけを目で追っていた私は、慌てて首を振る。私は一体何を考えているんだろう。
気を取り直すために、パンッと頬を軽く叩く。突然の行動に驚いた三人がこちらを向いた。呆れたように私を見るシロ先輩のその瞳は、まるで私のことを見透かしているようで、心臓が小さくトクリと跳ねた。
アレルギーではないため、卵が使われていると分からなければ問題なく食べられる。しかし、卵を使った料理が食べられても、苦手意識は拭えないのだという。だから、オムライスなどの卵料理が出てくると、つい避けて通ってしまうらしい。
パーフェクトヒューマン白谷吟にそんな弱点があったなんて知らなかった。私と萌乃は、興味津々といった様子で、卵の何が嫌なのか詳しく聞こうとする。しかし、白谷吟は顔を赤くして、そこで話を終わらせた。
ひとしきり笑い終わったシロ先輩が、息を整えながら口を開く。
「まぁ、こいつにも苦手なものくらいあるさ。あまりイジメてやるなよ」
そう言って、シロ先輩は私と萌乃の肩にポンッと手を置いた。白谷吟は恨めしそうな表情でシロ先輩を睨んでいた。
「誰のせいでこんな話になったと思ってるんだよ」
白谷吟の恨み節は、シロ先輩の耳に届いているのかいないのか、彼は楽しそうに笑みをこぼすだけだった。
結局、その後もその話題で盛り上がり、他の話が進まなかったため、また後日改めて話し合いをすることになった。
でも、たまにはこういう何気ない雑談をするのもいいかもしれない。私たちはチームを組んで仕事をしているのだ。仕事を円滑に進めるためには、お互いのことをもっと知って関係を深めておくべきだろう。
そう考えると、今日のこの時間は無駄ではなかった気がする。そんなことを考えつつ、シロ先輩と白谷吟の顔を見る。二人は言い合いをしながらも、楽しげな笑みを浮かべていた。さすがは幼馴染だなと思い、自然と笑みがこぼれる。萌乃も白谷吟との距離を縮めようと思っているのか、いつもより積極的に彼に話しかけていた。
私はそんな様子を眺めながら、このチームの絆はきっと深まるだろうと確信めいたものを感じていた。これからもっと言葉を重ねて、行動を共にして、そしていつか……。
いつしかシロ先輩のことだけを目で追っていた私は、慌てて首を振る。私は一体何を考えているんだろう。
気を取り直すために、パンッと頬を軽く叩く。突然の行動に驚いた三人がこちらを向いた。呆れたように私を見るシロ先輩のその瞳は、まるで私のことを見透かしているようで、心臓が小さくトクリと跳ねた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
【完結】限界離婚
仲 奈華 (nakanaka)
大衆娯楽
もう限界だ。
「離婚してください」
丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。
丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。
丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。
広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。
出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。
平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。
信じていた家族の形が崩れていく。
倒されたのは誰のせい?
倒れた達磨は再び起き上がる。
丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。
丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。
丸田 京香…66歳。半年前に退職した。
丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。
丸田 鈴奈…33歳。
丸田 勇太…3歳。
丸田 文…82歳。専業主婦。
麗奈…広一が定期的に会っている女。
※7月13日初回完結
※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。
※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。
※7月22日第2章完結。
※カクヨムにも投稿しています。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる