75 / 155
砂浜の結婚式(7)
しおりを挟む
そこで、挙式にかかる費用を抑えることはもちろんだが、挙式そのものに付加価値をつけることはできないか。私たちはそう考え、今回の体験型挙式に辿り着いた。
賑やかな立食パーティーの様子を見るに、ゲストたちも楽しんでいるようで、今回の企画は概ね成功したのではないかと、私はひとまず安堵した。しかし、まだまだ気は抜けない。披露宴はまだ続くのだから。
しばらくすると、会場の隅の方から歓声が上がった。お色直しを終えた新郎新婦が戻ってきたのだ。新郎が羽織っているのは、真っ白なタキシード。一方の新婦は純白のミニのウェディングドレス姿である。
会場が拍手に包まれる中、新郎新婦は揃ってお辞儀をして、拍手に応えた。新郎新婦は顔を上げると、「今日は心ゆくまで食事を楽しみながら、私たちと一緒に過ごしてください」と、ゲストに向かって言葉をかけた。
その後、新郎新婦はゲストの間を歩きながら、一人ひとりと握手を交わしていく。新郎新婦がほとんどのゲストと言葉を交わし終えると、再び会場が盛り上がる。いよいよラストスパートだ。
司会の合図で、立食パーティーの会場中央にスペースが作られる。そこには、大きなハート型のチョコレートケーキが置かれた。ケーキ入刀だけはどうしてもやりたいという、新婦の強い希望を叶えたのだ。ケーキを囲んでいたゲストたちが、一斉に拍手を送る。
「それでは皆さん、準備はいいですか? せーの!」
――カシャッ!
シャッター音が鳴り響く。新郎新婦が、ゲストたちに囲まれて一緒に写真を撮られている様子を、少し離れた場所から眺めていると、ふいに私の名前が呼ばれた。
振り返ってみると、そこに立っていたのは、管理部の三嶋さんだった。
「八木さん、明日花さん、お疲れ様です。大成功ですね」
「ああ、三嶋さんお疲れ様です」
私とシロ先輩は、三嶋さんにペコリと、頭を下げた。彼女は、にこっと微笑む。しかしそれは一瞬のこと。彼女の表情が真剣なものに変わった。
(なんだろう。何か良くない話だろうか)
私が身構えると同時に、三嶋さんの口から思いがけない話が飛び出してきた。
「実は先ほど、プランナー部から連絡がありまして……。挙式の予約が一件キャンセルになりそうだと……」
三嶋さんの話によると、挙式を予定していたカップルから、急に予約をキャンセルしたいと申し出があったらしい。どういうわけかと理由を聞くと、なんでも、花嫁のお腹の中に新しい命が誕生したらしい。
賑やかな立食パーティーの様子を見るに、ゲストたちも楽しんでいるようで、今回の企画は概ね成功したのではないかと、私はひとまず安堵した。しかし、まだまだ気は抜けない。披露宴はまだ続くのだから。
しばらくすると、会場の隅の方から歓声が上がった。お色直しを終えた新郎新婦が戻ってきたのだ。新郎が羽織っているのは、真っ白なタキシード。一方の新婦は純白のミニのウェディングドレス姿である。
会場が拍手に包まれる中、新郎新婦は揃ってお辞儀をして、拍手に応えた。新郎新婦は顔を上げると、「今日は心ゆくまで食事を楽しみながら、私たちと一緒に過ごしてください」と、ゲストに向かって言葉をかけた。
その後、新郎新婦はゲストの間を歩きながら、一人ひとりと握手を交わしていく。新郎新婦がほとんどのゲストと言葉を交わし終えると、再び会場が盛り上がる。いよいよラストスパートだ。
司会の合図で、立食パーティーの会場中央にスペースが作られる。そこには、大きなハート型のチョコレートケーキが置かれた。ケーキ入刀だけはどうしてもやりたいという、新婦の強い希望を叶えたのだ。ケーキを囲んでいたゲストたちが、一斉に拍手を送る。
「それでは皆さん、準備はいいですか? せーの!」
――カシャッ!
シャッター音が鳴り響く。新郎新婦が、ゲストたちに囲まれて一緒に写真を撮られている様子を、少し離れた場所から眺めていると、ふいに私の名前が呼ばれた。
振り返ってみると、そこに立っていたのは、管理部の三嶋さんだった。
「八木さん、明日花さん、お疲れ様です。大成功ですね」
「ああ、三嶋さんお疲れ様です」
私とシロ先輩は、三嶋さんにペコリと、頭を下げた。彼女は、にこっと微笑む。しかしそれは一瞬のこと。彼女の表情が真剣なものに変わった。
(なんだろう。何か良くない話だろうか)
私が身構えると同時に、三嶋さんの口から思いがけない話が飛び出してきた。
「実は先ほど、プランナー部から連絡がありまして……。挙式の予約が一件キャンセルになりそうだと……」
三嶋さんの話によると、挙式を予定していたカップルから、急に予約をキャンセルしたいと申し出があったらしい。どういうわけかと理由を聞くと、なんでも、花嫁のお腹の中に新しい命が誕生したらしい。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です

拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる