クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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砂浜の結婚式(6)

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 そしてフラワーシャワーの代わりに、貝殻や珊瑚を粉砕してパウダー状にしたシェルパウダーを撒く。陽光をキラキラと反射させるパウダーシャワーの中を、新郎新婦は手を振りながら海上で待つ水上バイクへと戻り、激しい水飛沫と共に、ゲストの前から姿を消した。ここまでは予定通り。

 続いては披露宴だ。ゲストたちは一足先に立食パーティーのテントの中へと誘導された。ホテルの最上階に位置するオーシャンビューレストランを使わないのは、大変勿体ないが、今回ばかりは仕方がない。

 テントの中には、ビュッフェ形式の料理が並んでいる。大きな鉄板の上でシェフが肉などを焼いている光景が見える。もちろん、浜辺ということで海鮮バーベキューもあり、多くのゲストから喜びの声が上がった。テーブルには、トロピカルドリンクや、オードブルが並べられており、それを片手に歓談を楽しむことができるようになっている。

 このテント内でも、ホテルのスタッフたちは、まるで室内の披露宴同様動いている。ただし、今回の挙式・披露宴は、できるだけコストダウンする事を目的の一つとしているため、通常の披露宴よりもスタッフの人数は少ない。

 そのため、食事の提供スタイルはビュッフェ形式とし、それぞれのゲストに各自動いてもらうことでスタッフの負担を減らしている。

 そして、もう一つ大切なことがある。

 それは、新郎新婦がすべてのゲストと会話ができるようにすることだ。挙式後の挨拶やスピーチは必要最低限に抑え、可能な限りゲストとコミュニケーションを取ることを重視している。

 そのため、お色直しは挙式から披露宴にうつるこのタイミングのみ。色々なドレスを着てみたいと思う花嫁には不向きなプランとなるだろうが、挙式費用を少しでも抑えたいと思っているカップルにとっては、ありがたい話だろう。

 今回、仕事をして知ったのだが、結婚式には細々としたオプションがあり、それらにお金がかかる事が多いのだ。お色直しの衣装は当然のことながら、テーブルクロスや、テーブルに飾る花、ブーケや花嫁を着飾る小道具。はたまた、司会者やカメラマン。料理もコース料理を提供しようと思えばそれなりの金額になるし、ペーパーアイテムも安くはない。

 もちろんホテルはそれで商売をしているのだから致し方ないのだが、結婚式というのはあまりにもお金がかかり過ぎる。そのせいで挙式を諦めてしまっている潜在顧客がいるのではないかと、私たちは考えた。
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