クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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それって、まさかお見合い!?(12)

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 由香里は、答えを待つようにじっと私を見ている。

 これはきっと私が答えを言わない限り、解放されないなと思った。だから、私は諦めて口を開く。でも、答えは決まっているのだ。最初から。

「私? 何もないよ」

 私の返事に、由香里はやっぱりという顔をした。私はそんな彼女に苦笑いを浮かべると、ジャスミン茶を飲み干す。空っぽになったカップの底を見て、私は心の中で呟く。

 本当に、何もない。由香里みたいに、結婚に対して明確な意思もない。そもそも、結婚なんてまだ考えてすらいない。結婚願望がないわけではないけれど、今すぐ結婚したいわけではないし、そこまで焦ってもいない。

 これまで付き合った人は何人かいるし、それなりに好きになった人もいる。だけど、結婚まで考えたことはなかった。何より、今は付き合っている人すらいないのだ。

 結婚なんて遠い先の話で、自分が結婚するイメージは全くわかなかった。

 もし結婚するなら、この先もずっと一緒にいたいと思える人と一緒になりたいとは思う。それがどんな人かはわからないけど。

 私は、ぼんやりと天井を見る。

 そう言えば、私は今までどうやって恋人を見つけてきたのだろう。

 友達の紹介とか合コンとかサークルとかバイトとか……。思い返せば色々あるけれど、もう学生じゃないから、これからはそんな出会い方はしないだろう。

 じゃあ、やっぱりこれからの出会いは、婚活サイト? マッチングアプリ? それともお見合い? どれもいまいちピンとこない。

 私は、もう一度由香里に目をやる。彼女は、私と同じように空になったカップを眺めていた。

 私は、由香里に気付かれないように、静かにため息をつく。

 私には、結婚どころか恋愛さえ、まだまだ先の話のように思える。でも、いつか誰かを好きになって、その人のことがもっと知りたくなって、その人と一緒にいたいと思う日が来るのだろうか。

 そんなことを想像していると、胸の奥がきゅっとなった。自分でもよく分からなくて、私は小さく首を傾げる。

 その時、由香里が意味ありげな顔で問いかけてきた。

「ねぇ。白谷さんとは何かあるの?」
「へ? 白谷さん?」

 由香里の言葉に、私は首を傾げる。私は、彼女の言っていることがよくわからずに聞き返す。すると、由香里はまた同じことを聞いてきた。

「そう。あのイケメン白谷さんと矢城って何かあるの?」

 由香里は、身を乗り出して私に迫ってくる。私は、彼女が何を言っているのか理解するのに時間がかかった。
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