クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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それって、まさかお見合い!?(11)

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「お酒飲む人! そう、それ! 別に私、あんまり外見にこだわりないし、年収とか勤め先とかも、普通に生活出来るレベルならそれでいいんだよね。相手に求める条件がなさすぎて、結婚相談所のプロフィール書く時困ったのよ。無難に優しい人とかを条件にしてたけど」

 由香里はそう答えると、満足そうな顔をして、蓮華を口に運ぶ。そんな彼女の様子に、私は呆れてしまうが、一応彼女の答えに納得もしていた。

「なにその緩い感じ……。でも、まぁ、そうだよね。お酒飲む人は外すよね」

 納得顔でうんうんと頷いていると、由香里が首を傾げた。

「え? なんで?」
「え?」

 由香里の反応に私の方が驚く。由香里は不思議そうにこちらを見ていた。

「だって、結婚するんでしょう? 酒癖悪い人は嫌じゃん」
「ああ。なるほど。もちろん酒癖が悪いのは嫌だよ。でも、お酒を飲んで楽しい人なら全然いい。私も結構飲むから、一緒に晩酌できるなら、私としてはむしろ好都合っていうかさ」

 由香里はそう言うと、蓮華を置いて水を飲んだ。私は、そんな由香里を見ながら考える。

 確かに由香里はお酒が好きなようだ。これまでに数回一緒に飲みに行ったことがある。その時もかなりのペースでグラスを空けていた。それを考えると、一緒にお酒を楽しめる相手というのは彼女にとって魅力的なのかもしれない。

「じゃあ、寺田の絶対条件は趣味の合う人ってことか」

 私がそう言うと、由香里は驚いたような顔をした。

「趣味? そっか趣味か。そう言う言い方があるんだ! うんうん。そう。趣味が合う人がいい」

 由香里はそう言って嬉しそうに笑っている。私はそんな彼女を見て小さく微笑むと、残りの麻婆豆腐をかき込んだ。

 話に夢中で麻婆豆腐はすっかり冷めていた。少しだけ味が落ちたような気がするが、それでもお腹いっぱいになった。私は、ふぅっと息を吐く。そして、ジャスミン茶を一口飲んで、口の中をさっぱりとさせた。

 ふと由香里の視線に気がつく。彼女は何かを言いたげに私を見ていた。私は、首を傾げる。すると、由香里はゆっくりと口を開いた。

「ねぇ、矢城は?」

 由香里は、真っ直ぐに私を見ている。私はそんな彼女に戸惑ってしまう。由香里の質問の意味が分からないわけではなかった。

 私は由香里の視線から逃げるように、自分の手元に目を落とす。そこには、まだ半分以上残っているジャスミン茶があった。私はそれをじっと見つめる。なんだか今日はずっとこんな話をしている気がする。
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