クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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それって、まさかお見合い!?(8)

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 由香里の話によると、登録している会員同士を引き合わせるために、結婚相談所では定期的に婚活パーティーが開催されるのだそうだ。

「でも、なかなかいい出会いなくてさ~。こんなこと言うとあれだけど、今日もハズレだったんだぁ」

 由香里はそう言って、はぁっとため息をつくと、テーブルに肘をついて項垂れた。由香里が何気なく話すその話を私は驚きの顔で聞いていた。

 結婚相談所以外にも、婚活サイトやアプリなど、今の時代、様々な方法で異性との出会いの場が広がっている。だが、まさか、こうも身近にそれを活用している人がいるとは思っていなかった。

 私だって興味がないわけではないけれど、そこまで積極的に動こうという気持ちになれないのは、きっと面倒くさいという気持ちがあるからだ。それに、今は恋愛よりも仕事を優先したいと思っているし、結婚はしたいと思った時に考えればいいかなと思っていたから。

 由香里の話では、先月入会したばかりのようだ。入会して半年以内なら、退会手続きをすればお金はかからないらしい。

 由香里が、はぁーと大きなため息を吐いた。私は、由香里の様子を窺いながら、そろりと口を開く。

「ねぇ。寺田ってそんなに結婚願望があったの? 今まで全然そんな感じしなかったから意外だわ」

 正直、今日、彼女の口から婚活という言葉が出たことに驚いた。由香里からは、これまでそういった類の話は聞いたことがなかったから。私の問いかけに、由香里が力無く笑った。

「まあね。このまま一人で一生を終えるのかなって考えたら、やっぱり寂しいんだよね」
「ふぅん……でも、やっぱりちょっと意外かも……」

 私は曖昧に相槌を打つ。私たちはまだ二十五歳だ。この先の人生なんて想像できない。人生の行く末を考えるのは気が早すぎるような気もする。

「それで、今回行ったのが、大手の結婚相談所の合同開催だったのよ」
「へぇ。そうなの」

 私は運ばれてきたジャスミン茶を一口飲んでから、湯気を立てる麻婆豆腐を口に運ぶ。ピリリとした痺れが舌先に広がる。辛いけれど、美味しい。

「初めは一対一で何人かの人に会ったんだけどね……。なんか違うなと思って。もう、一人ずつ会うの面倒だなと思って、一度にたくさんの人に出会える婚活パーティーに参加したんだけどさ」

 由香里は、自身が注文した餡掛け蟹チャーハンに蓮華を入れる。それと同時に盛大なため息をついた。

「結局、みんな同じに見えちゃって。自分の話する人ばかり」
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