14 / 155
シロヤギさんからの手紙(4)
しおりを挟む
「はぁ~? うっせ。そんな事あるか」
ケラケラと笑う白谷吟に、酔っ払いのシロ先輩は遠慮なく突っかかる。私は、爽やかイケメンの発言と、酔っ払いの妄言に心を乱されながらも慌てて仲裁に入る。
「ま、まあまあ、シロ先輩、落ち着いてください」
「何だぁ、クロは、吟の肩持つのかぁ~?」
「肩を持つとかそう言う事じゃなくてですね……」
「矢城さん、大丈夫だよ。史郎は酔うと、いつもこんな風だから、適当に揶揄って遊べばいいよ」
爽やかイケメンは、さも当たり前と言うようにニコニコとしているが、よくよく考えると、この人のシロ先輩に対する扱いは雑すぎなのではないだろうか。
「いつもって……。シロ先輩と白谷先輩って、確か、同期でしたよね?」
「うん。同期。というか、腐れ縁かな」
「腐れ縁?」
「そう。僕と史郎は、幼馴染なんだよ」
「そうだったんですか!?」
確かに、普段から仲良くしているなとは思っていたが、まさか幼馴染とは。
それで、こんなに雑な扱いなのか。
驚いてシロ先輩を見れば、酔いが回りすぎたのか、椅子にもたれてウトウトとしていた。
白谷吟は、シロ先輩の前からスッと空のジョッキや皿を退かしながら、呆れたようにシロ先輩に視線を注ぐ。その眼差しは、同期や幼馴染というよりは、まるで、兄が危なっかしい弟を見ているようだった。
「何か、白谷先輩、シロ先輩のお兄さんみたいですね」
「あはは。そうかな。まぁ、子供の頃から史郎の世話を焼いていたから、いつの間にかそんな感じになっちゃったのかなぁ」
サラッと笑うその笑顔は、私と歳が一つしか違わないのに余裕があり、大人びて見える。
「子供の頃って、いつ頃から一緒にいるんですか?」
「ん~。そうだなぁ。史郎が、僕の家の隣に引っ越してきたのが小4の時だから、それからずっと」
「ずっと?」
「うん。そう。ずっと。小・中・高が一緒って話はよくあると思うけど、僕らは、大学も、会社もずっと一緒」
「ええっ? それって、二人で相談して決めたとかって事ですか?」
話を聞きながら、無意識に目の前の唐揚げへと伸ばしかけていた手を止めて、私は、丸くした目を白谷吟へと向ける。
相変わらず穏やかな笑顔を見せる白谷吟は、私と同じくらいには酒を呑んでいるはずなのに、全く酔いを感じさせず平然と首を振った。
「僕たちは、進路で話し合った事は、一度も無いんだ。高校も大学も会社も、各自で決めて……お互い目指す先を聞いてビックリするって事の繰り返し」
ケラケラと笑う白谷吟に、酔っ払いのシロ先輩は遠慮なく突っかかる。私は、爽やかイケメンの発言と、酔っ払いの妄言に心を乱されながらも慌てて仲裁に入る。
「ま、まあまあ、シロ先輩、落ち着いてください」
「何だぁ、クロは、吟の肩持つのかぁ~?」
「肩を持つとかそう言う事じゃなくてですね……」
「矢城さん、大丈夫だよ。史郎は酔うと、いつもこんな風だから、適当に揶揄って遊べばいいよ」
爽やかイケメンは、さも当たり前と言うようにニコニコとしているが、よくよく考えると、この人のシロ先輩に対する扱いは雑すぎなのではないだろうか。
「いつもって……。シロ先輩と白谷先輩って、確か、同期でしたよね?」
「うん。同期。というか、腐れ縁かな」
「腐れ縁?」
「そう。僕と史郎は、幼馴染なんだよ」
「そうだったんですか!?」
確かに、普段から仲良くしているなとは思っていたが、まさか幼馴染とは。
それで、こんなに雑な扱いなのか。
驚いてシロ先輩を見れば、酔いが回りすぎたのか、椅子にもたれてウトウトとしていた。
白谷吟は、シロ先輩の前からスッと空のジョッキや皿を退かしながら、呆れたようにシロ先輩に視線を注ぐ。その眼差しは、同期や幼馴染というよりは、まるで、兄が危なっかしい弟を見ているようだった。
「何か、白谷先輩、シロ先輩のお兄さんみたいですね」
「あはは。そうかな。まぁ、子供の頃から史郎の世話を焼いていたから、いつの間にかそんな感じになっちゃったのかなぁ」
サラッと笑うその笑顔は、私と歳が一つしか違わないのに余裕があり、大人びて見える。
「子供の頃って、いつ頃から一緒にいるんですか?」
「ん~。そうだなぁ。史郎が、僕の家の隣に引っ越してきたのが小4の時だから、それからずっと」
「ずっと?」
「うん。そう。ずっと。小・中・高が一緒って話はよくあると思うけど、僕らは、大学も、会社もずっと一緒」
「ええっ? それって、二人で相談して決めたとかって事ですか?」
話を聞きながら、無意識に目の前の唐揚げへと伸ばしかけていた手を止めて、私は、丸くした目を白谷吟へと向ける。
相変わらず穏やかな笑顔を見せる白谷吟は、私と同じくらいには酒を呑んでいるはずなのに、全く酔いを感じさせず平然と首を振った。
「僕たちは、進路で話し合った事は、一度も無いんだ。高校も大学も会社も、各自で決めて……お互い目指す先を聞いてビックリするって事の繰り返し」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
さよなら、私の初恋の人
キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。
破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。
出会いは10歳。
世話係に任命されたのも10歳。
それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。
そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。
だけどいつまでも子供のままではいられない。
ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。
いつもながらの完全ご都合主義。
作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。
直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。
※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』
誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。
小説家になろうさんでも時差投稿します。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる