クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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クロとシロ(6)

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「あれ? そう言えば、先輩、コンビニで夕飯を買ったんじゃ……」
「ん? ああ、明日の昼メシ用に会社の冷蔵庫に入れてきた」
「え!? そんなことしたら、残業してる誰かに食べられちゃいません?」
「大丈夫だろ。まぁ、もし食われたら、逆にそいつに奢ってもらうし」
「それは……そうですけど……」

 私は呆れつつも、ちょっと可笑しくなって、つい笑ってしまった。

「ふふ、先輩らしいですね」

 すると、シロ先輩もニッと笑い返してきた。

「だろ?」

 そんな他愛もない話をしていると、シロ先輩の大盛りオムライスがやってきた。シロ先輩は早速スプーンを握り、大きく口を開いて食べ始める。

 私はその様子を眺めつつ、自分のドリアに手をつけた。チーズの香ばしさと、トロッとしたホワイトソースが絶妙なハーモニーを生み出している。

 シロ先輩はというと、見る間にオムライスの山を片付けていく。相変わらずよく食べる人だと思う。これだけの量を食べた後に、さらにあのスイーツを食べるのだろうか……。私は先輩の脇に置かれたスイーツの入った箱に目を向けた。

「シロ先輩って、甘い物好きですよね」
「おう、好きだぞ」
「その割には、全然太らないですよね」
「そうだな。体質かな」
「羨ましい限りです」
「クロはもっと肉つけた方がいいと思うぞ」
「余計なお世話です!」
「ははは、悪い」

 シロ先輩は楽しそうに笑う。そして、再びオムライスの山を大きく削った。私もシロ先輩のスプーンの動きに合わせて、ドリアを食べ進めていたのだが、ふとあることを思い出す。

「あ……そういえば先輩」
「なんだ?」
「今度一課と二課で合同の飲み会があるって聞いたんですけど、何か知ってます?」

 いつもはそれぞれの課で飲み会が催されるのだが、今回は珍しく合同で行われるようだ。しかも、課長命令で強制参加だという。

 私が尋ねると、シロ先輩は少し面倒くさそうな顔をした。そして、渋々といった感じで口を開く。

「……ああ、俺、その幹事にされた」
「え? 先輩、幹事なんですか?」
「おう……なんか、成り行きで。二課の幹事は吟らしいから、まぁいいんだけど」

 はぁっとため息をつくシロ先輩。どうやらあまり乗り気ではない様子だ。

 しかし、いつもは他の部署と合同で飲むことがないだけに、どのような経緯があって、そのような話になったのか興味が湧いた。

「でも、どうして合同なんですか? めずらしいですよね」

 私が尋ねてみると、シロ先輩はスプーンを置いて腕を組んだ。
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