スーパーマンの一日

田古みゆう

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午前6時 品出し準備

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“おはようございます。今日はよろしくお願いします”

 こちらの呼びかけに、彼は作業の手を止め、爽やかな笑顔を見せてくれた。

「おはようございます!」

 その笑顔は、早朝だというのに潑剌はつらつとしていた。

 営業用の作り笑いでも、取材用の格好つけた笑顔でもない。そんな彼の笑顔に、好感を覚える。

 今日は、いい取材が出来そうだ。

 そんな期待を胸に抱きながら、我々は早速、取材を開始した。

“朝から大変な作業ですね”

「コレですか? そうですね。荷物の積み下ろしは、肉体的にキツいです。でも、スーパーでは、必要な作業ですから、仕方ありません。それに、体力トーニングになりますから。僕は、なるべくこの時間のシフト入りを希望しているんです」

 我々、取材クルーに爽やかな挨拶をした際にだけ作業の手を止めた彼は、忙しそうに作業を続ける。

“こんなに大変そうな作業をいつもお一人で?”

「……いつもではないですよ。店長や専務が行う日もあるので……」

 彼は控えめに応えるが、どうやらこのスーパーは、彼の頑張りに支えられているようだ。

 彼は、この店でアルバイトをしている。出勤シフトは、週5日、月に20日程度。出勤時間はまちまちだが、休憩1時間を含む9時間勤務。フルタイム並みに働いても、月の稼ぎは20万円にも満たない。

“それだけの時間働くのであれば、もう少し、働く環境なり待遇面の良い所で働いた方が良いのでは?”

 我々は、素朴なそして至極真っ当な質問を、彼にぶつけてみた。その問いに彼は、はにかんだような困ったような笑顔で応える。

「僕は、この『スーパー ヤス』以外で働くことは今のところ考えていないのです」

“それは何故ですか?”

「あまり大きな声では言えませんが……」

 彼は声を潜めてこう言った。

『僕にとって、この店はとても都合がいい店だから』と。
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