57 / 92
4.とうもろこし色のヒカリの中で
p.57
しおりを挟む
「え~っと、じゃあ、今までの転送準備って……」
僕の不用意な発言に、小鬼は途端にしょぼくれる。
「僕は、まだまだ経験不足なのです~。でも、今までのやり方が正規ルートなんですよ~」
唇を尖らせながらボソボソと言い訳がましく言葉を並べる小鬼は、やはりかわいい。こんな弟がいたら、溺愛していたかもしれない。
少しいじけていそうな小鬼を微笑ましい気持ちで見ながら、僕は笑って話を流す。
「と言うことは、事務官さんが凄すぎるってことだね」
「そうなのです! 小野さまはすごいのです!」
僕の言葉に、小鬼は一瞬で目をキラキラとさせる。
表情がコロコロと変わって、本当に小鬼を見ていると飽きない。
一頻り小鬼との会話を楽しんだ後、僕は少し離れた場所へと視線を移す。
いつもは小鬼と二人だけの転送だが、今回は僕をここへ送り届けた張本人も一緒のようだ。
「今回は、事務官さんも一緒にいるんですか?」
「ああ。最後だからな」
事務官小野は、ひどくつまらなさそうに肯定した。
「えっと、それで、僕はどうすれば?」
いつもはいない事務官に見られていると、それだけで妙な緊張感がある。そんな僕の気持ちなど知る由もなく、事務官はいつも通り事務的だった。
「いつも通りで良い。私は少し離れた所から観察させてもらおう。それでは始めてくれ」
僕は足元の小鬼に助けを求める。困った時の小鬼様様。
「自由にって言われてもなぁ。どうしようか、小鬼?」
そんな僕の問いかけに、小鬼は僕を見上げながらウキウキを隠しきれない様子。胸の前で手を組んでモジモジとしながら、目をキョロキョロとさせている。
「あ、あのですね~」
「うん。何?」
「もしよろしければ、あちらへ行ってみませんか?」
小鬼の小さな手は、土手の下を指し示している。
「川? 別にいいけど……」
僕の答えを聞くや否や、小鬼は川辺目掛けて飛び跳ねるように土手を降り始めた。
チラリと事務官を見るが、腕を組み、まるで待機モードを体現しているかのように微動だにしない。
多分、ここから動かないのだろうと判断して、僕はのんびりと小鬼の後に続いて土手を降りた。
川岸は、丸みのある小石がたくさんあり少し歩きにくい。ジャリジャリザリザリと小石同士が擦れる音を聞きながら、水面に手が届く場所まで来ると、小鬼はしゃがみ込んで嬉しそうに水面をパシャパシャと叩き出した。
「楽しそだな。川、好きなの?」
あまりにも小鬼が楽しそうにしているので、思わず聞いてしまう。
僕の不用意な発言に、小鬼は途端にしょぼくれる。
「僕は、まだまだ経験不足なのです~。でも、今までのやり方が正規ルートなんですよ~」
唇を尖らせながらボソボソと言い訳がましく言葉を並べる小鬼は、やはりかわいい。こんな弟がいたら、溺愛していたかもしれない。
少しいじけていそうな小鬼を微笑ましい気持ちで見ながら、僕は笑って話を流す。
「と言うことは、事務官さんが凄すぎるってことだね」
「そうなのです! 小野さまはすごいのです!」
僕の言葉に、小鬼は一瞬で目をキラキラとさせる。
表情がコロコロと変わって、本当に小鬼を見ていると飽きない。
一頻り小鬼との会話を楽しんだ後、僕は少し離れた場所へと視線を移す。
いつもは小鬼と二人だけの転送だが、今回は僕をここへ送り届けた張本人も一緒のようだ。
「今回は、事務官さんも一緒にいるんですか?」
「ああ。最後だからな」
事務官小野は、ひどくつまらなさそうに肯定した。
「えっと、それで、僕はどうすれば?」
いつもはいない事務官に見られていると、それだけで妙な緊張感がある。そんな僕の気持ちなど知る由もなく、事務官はいつも通り事務的だった。
「いつも通りで良い。私は少し離れた所から観察させてもらおう。それでは始めてくれ」
僕は足元の小鬼に助けを求める。困った時の小鬼様様。
「自由にって言われてもなぁ。どうしようか、小鬼?」
そんな僕の問いかけに、小鬼は僕を見上げながらウキウキを隠しきれない様子。胸の前で手を組んでモジモジとしながら、目をキョロキョロとさせている。
「あ、あのですね~」
「うん。何?」
「もしよろしければ、あちらへ行ってみませんか?」
小鬼の小さな手は、土手の下を指し示している。
「川? 別にいいけど……」
僕の答えを聞くや否や、小鬼は川辺目掛けて飛び跳ねるように土手を降り始めた。
チラリと事務官を見るが、腕を組み、まるで待機モードを体現しているかのように微動だにしない。
多分、ここから動かないのだろうと判断して、僕はのんびりと小鬼の後に続いて土手を降りた。
川岸は、丸みのある小石がたくさんあり少し歩きにくい。ジャリジャリザリザリと小石同士が擦れる音を聞きながら、水面に手が届く場所まで来ると、小鬼はしゃがみ込んで嬉しそうに水面をパシャパシャと叩き出した。
「楽しそだな。川、好きなの?」
あまりにも小鬼が楽しそうにしているので、思わず聞いてしまう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
ファミコンが来た日
白鷺雨月
ライト文芸
ファミコンが来たから、吉田和人《よしだかずと》は友永有希子に出会えた。それは三十年以上前の思い出であった。偶然再会した二人は離れていた時間を埋めるような生活を送る。
再び大地(フィールド)に立つために 〜中学二年、病との闘いを〜
長岡更紗
ライト文芸
島田颯斗はサッカー選手を目指す、普通の中学二年生。
しかし突然 病に襲われ、家族と離れて一人で入院することに。
中学二年生という多感な時期の殆どを病院で過ごした少年の、闘病の熾烈さと人との触れ合いを描いた、リアルを追求した物語です。
※闘病中の方、またその家族の方には辛い思いをさせる表現が混ざるかもしれません。了承出来ない方はブラウザバックお願いします。
※小説家になろうにて重複投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
僕の目の前の魔法少女がつかまえられません!
兵藤晴佳
ライト文芸
「ああ、君、魔法使いだったんだっけ?」というのが結構当たり前になっている日本で、その割合が他所より多い所に引っ越してきた佐々四十三(さっさ しとみ)17歳。
ところ変われば品も水も変わるもので、魔法使いたちとの付き合い方もちょっと違う。
不思議な力を持っているけど、デリケートにできていて、しかも妙にプライドが高い人々は、独自の文化と学校生活を持っていた。
魔法高校と普通高校の間には、見えない溝がある。それを埋めようと努力する人々もいるというのに、表に出てこない人々の心ない行動は、危機のレベルをどんどん上げていく……。
(『小説家になろう』様『魔法少女が学園探偵の相棒になります!』、『カクヨム』様の同名小説との重複掲載です)
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
よくできた"妻"でして
真鳥カノ
ライト文芸
ある日突然、妻が亡くなった。
単身赴任先で妻の訃報を聞いた主人公は、帰り着いた我が家で、妻の重大な秘密と遭遇する。
久しぶりに我が家に戻った主人公を待ち受けていたものとは……!?
※こちらの作品はエブリスタにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる