復活ラヂオアプリ

田古みゆう

文字の大きさ
上 下
7 / 8

p.7

しおりを挟む
 オレは、紹介された内容に既視感を覚え、次のくだらない話はそっちのけで、必死でその既視感を追いかけた。そして、しばらくして、キャップの内側に「あぁ」と納得のため息を漏らす。

 今の話の内容は、まだ、このアプリに出会ったばかりの頃に、必死で探し当てた、どこかの誰かのブログの内容と酷似していたことに思い至ったのだ。

 今回の投稿者はあのブログ主の友人だろうか。しかし、それにしては、時期が経ち過ぎているような気がしなくもない。似たような喧嘩をした誰かだろうか。

 それにしても……と、流れ続ける奇妙な機械声をうっすらと聞きながら、オレは抱いた違和感を突き詰める。

 いつもは辛口コメントを貫くOTO姫おとひめさんが、辛口ではなかった事が気になった。しかも、投稿者が友人と仲直りできると、やけにあっさりと肯定しているのだ。

 アレは、アドバイスなんてものじゃない。まるで、そうなる事が分かっているかのように、サラリと言い切っていた。

 それに最後のあの言葉は、一体何を意味しているのだろう。必要な人にだけ届くとはどう言う事か。

 不思議な言葉の意味をあれこれと考えていると、まるで、突然音量を上げられたかのように、OTO姫おとひめさんの声に、オレの意識は持っていかれた。

“……ALISアリスの言葉に、私は励まされました。それからは、……”

 なんだ? オレの話か?

 『復活ラヂオ』からは、オレアリスのファンだと言う人の投稿が流れてきた。

“……でも、ALISアリスは、突然、私の、私たちファンの前から消えてしまいました。そして、私の周りからは光が失われました。週刊誌や、ネットの記事では、勝手な憶測で、いろいろと言われていますが、私は、ALISアリスの言葉を聞きたいし、信じます。だから、私の前に戻ってきてください。私は、ALISアリスの復活を願っています。もし、気持ちが芸能という世界から離れてしまったのならば、無理に戻ってとは言いません。けれど、私に、私たちにお別れの機会を与えてください。どうか、1度だけでいいので、私たちファンにチャンスをください”

 土手に寝転んでいたはずのオレは、いつのまにか体を起こしていた。気がつけば、辺りは薄暗くなり、あれほどご機嫌に流れていたOTO姫おとひめさんの声も、全く聞こえなくなっていた。ご機嫌な時間は、過ぎ去ったようだ。

 OTO姫おとひめさんは、彼女の願いになんと答えていただろうか。

“大丈夫。あなたの願いは直ぐに叶う”

 オレの心とは裏腹に、そう答えたような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

古屋さんバイト辞めるって

四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。 読んでくださりありがとうございました。 「古屋さんバイト辞めるって」  おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。  学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。  バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……  こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか? 表紙の画像はフリー素材サイトの https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

Husband's secret (夫の秘密)

設樂理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

処理中です...