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オレは、紹介された内容に既視感を覚え、次のくだらない話はそっちのけで、必死でその既視感を追いかけた。そして、しばらくして、キャップの内側に「あぁ」と納得のため息を漏らす。
今の話の内容は、まだ、このアプリに出会ったばかりの頃に、必死で探し当てた、どこかの誰かのブログの内容と酷似していたことに思い至ったのだ。
今回の投稿者はあのブログ主の友人だろうか。しかし、それにしては、時期が経ち過ぎているような気がしなくもない。似たような喧嘩をした誰かだろうか。
それにしても……と、流れ続ける奇妙な機械声をうっすらと聞きながら、オレは抱いた違和感を突き詰める。
いつもは辛口コメントを貫くOTO姫さんが、辛口ではなかった事が気になった。しかも、投稿者が友人と仲直りできると、やけにあっさりと肯定しているのだ。
アレは、アドバイスなんてものじゃない。まるで、そうなる事が分かっているかのように、サラリと言い切っていた。
それに最後のあの言葉は、一体何を意味しているのだろう。必要な人にだけ届くとはどう言う事か。
不思議な言葉の意味をあれこれと考えていると、まるで、突然音量を上げられたかのように、OTO姫さんの声に、オレの意識は持っていかれた。
“……ALISの言葉に、私は励まされました。それからは、……”
なんだ? オレの話か?
『復活ラヂオ』からは、オレのファンだと言う人の投稿が流れてきた。
“……でも、ALISは、突然、私の、私たちファンの前から消えてしまいました。そして、私の周りからは光が失われました。週刊誌や、ネットの記事では、勝手な憶測で、いろいろと言われていますが、私は、ALISの言葉を聞きたいし、信じます。だから、私の前に戻ってきてください。私は、ALISの復活を願っています。もし、気持ちが芸能という世界から離れてしまったのならば、無理に戻ってとは言いません。けれど、私に、私たちにお別れの機会を与えてください。どうか、1度だけでいいので、私たちファンにチャンスをください”
土手に寝転んでいたはずのオレは、いつのまにか体を起こしていた。気がつけば、辺りは薄暗くなり、あれほどご機嫌に流れていたOTO姫さんの声も、全く聞こえなくなっていた。ご機嫌な時間は、過ぎ去ったようだ。
OTO姫さんは、彼女の願いになんと答えていただろうか。
“大丈夫。あなたの願いは直ぐに叶う”
オレの心とは裏腹に、そう答えたような気がした。
今の話の内容は、まだ、このアプリに出会ったばかりの頃に、必死で探し当てた、どこかの誰かのブログの内容と酷似していたことに思い至ったのだ。
今回の投稿者はあのブログ主の友人だろうか。しかし、それにしては、時期が経ち過ぎているような気がしなくもない。似たような喧嘩をした誰かだろうか。
それにしても……と、流れ続ける奇妙な機械声をうっすらと聞きながら、オレは抱いた違和感を突き詰める。
いつもは辛口コメントを貫くOTO姫さんが、辛口ではなかった事が気になった。しかも、投稿者が友人と仲直りできると、やけにあっさりと肯定しているのだ。
アレは、アドバイスなんてものじゃない。まるで、そうなる事が分かっているかのように、サラリと言い切っていた。
それに最後のあの言葉は、一体何を意味しているのだろう。必要な人にだけ届くとはどう言う事か。
不思議な言葉の意味をあれこれと考えていると、まるで、突然音量を上げられたかのように、OTO姫さんの声に、オレの意識は持っていかれた。
“……ALISの言葉に、私は励まされました。それからは、……”
なんだ? オレの話か?
『復活ラヂオ』からは、オレのファンだと言う人の投稿が流れてきた。
“……でも、ALISは、突然、私の、私たちファンの前から消えてしまいました。そして、私の周りからは光が失われました。週刊誌や、ネットの記事では、勝手な憶測で、いろいろと言われていますが、私は、ALISの言葉を聞きたいし、信じます。だから、私の前に戻ってきてください。私は、ALISの復活を願っています。もし、気持ちが芸能という世界から離れてしまったのならば、無理に戻ってとは言いません。けれど、私に、私たちにお別れの機会を与えてください。どうか、1度だけでいいので、私たちファンにチャンスをください”
土手に寝転んでいたはずのオレは、いつのまにか体を起こしていた。気がつけば、辺りは薄暗くなり、あれほどご機嫌に流れていたOTO姫さんの声も、全く聞こえなくなっていた。ご機嫌な時間は、過ぎ去ったようだ。
OTO姫さんは、彼女の願いになんと答えていただろうか。
“大丈夫。あなたの願いは直ぐに叶う”
オレの心とは裏腹に、そう答えたような気がした。
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