6 / 8
p.6
しおりを挟む
それから季節が1つ分過ぎた。その間、オレは毎日のように、『復活ラヂオ』をタップしていた。
晴れている日は、キャップとスマートフォン、それからイヤホンをポケットに忍ばせて、あの土手で、くだらない『復活ラヂオ』を聴きながら、ゆったりとした時間を過ごすことが習慣になった。お陰で、酒浸りの日々からは抜け出し、頭もクリアに働くようになった。
少しは、自分自身のことも考えられるようになったが、それでもまだ、心のモヤをどう表したら良いのか分からず、見て見ぬふりを続けている。
そんな時に、『復活ラヂオ』は役に立った。相変わらずくだらない内容を垂れ流しているので、何も考えずに聴いていられた。
ただ、このアプリについては、依然詳細は分からないし、使えたり使えなかったりと謎が多いのだが、気分屋放送なのだろうと理解している。
今日も、土手にゴロリと寝ころぶ。もうずいぶんと鋭くなった日差しを遮るようにキャップで顔を隠し、イヤホンを両耳に入れる。『復活ラヂオ』をタップすれば、すぐに機械的な声が流れ始めた。どうやら今日のご機嫌はいいらしい。オレは、既に馴染みになったその声に耳を傾ける。
“次のお便りは、こちらです。
OTO姫さん、こんにちは。
はい、こんにちは。
早速ですが、私の復活させたい事を聞いてください。私にはとても仲良しの友達がいます。しかし先日、あることがきっかけで喧嘩をしてしまいました。彼女は私のことを、嘘つきだと思っているのか、口もきいてくれません。原因は、私がこのアプリを彼女に薦めたことです。彼女は、どうしてもアプリを見つけることができず、私が嘘をついていると思ったようなのです。どんなに嘘じゃないと言っても、信じてもらえず、険悪な状態です。私は、このまま喧嘩別れになってしまうのは絶対に嫌です。なんとか、私たちの友情を復活させてください。それから、なぜ、私は『復活ラヂオ』が聴けて、彼女には聴けないのか。その理由も教えてください。
という事です。コレは、切実なお悩みですね。当方もどうやら関わっている様子。まず、お悩みの復活の件ですが、大丈夫です。もう一度お友達に話しかけてみましょう。それで、万事解決します。それから、お尋ねの件ですが、こちらは、企業秘密なので詳しくは言えないのですが、まぁ、簡単に言うと、必要な人にだけ、お届けする形をとっています。とだけ、お伝えしておきましょう。
では、次のお便りです……”
晴れている日は、キャップとスマートフォン、それからイヤホンをポケットに忍ばせて、あの土手で、くだらない『復活ラヂオ』を聴きながら、ゆったりとした時間を過ごすことが習慣になった。お陰で、酒浸りの日々からは抜け出し、頭もクリアに働くようになった。
少しは、自分自身のことも考えられるようになったが、それでもまだ、心のモヤをどう表したら良いのか分からず、見て見ぬふりを続けている。
そんな時に、『復活ラヂオ』は役に立った。相変わらずくだらない内容を垂れ流しているので、何も考えずに聴いていられた。
ただ、このアプリについては、依然詳細は分からないし、使えたり使えなかったりと謎が多いのだが、気分屋放送なのだろうと理解している。
今日も、土手にゴロリと寝ころぶ。もうずいぶんと鋭くなった日差しを遮るようにキャップで顔を隠し、イヤホンを両耳に入れる。『復活ラヂオ』をタップすれば、すぐに機械的な声が流れ始めた。どうやら今日のご機嫌はいいらしい。オレは、既に馴染みになったその声に耳を傾ける。
“次のお便りは、こちらです。
OTO姫さん、こんにちは。
はい、こんにちは。
早速ですが、私の復活させたい事を聞いてください。私にはとても仲良しの友達がいます。しかし先日、あることがきっかけで喧嘩をしてしまいました。彼女は私のことを、嘘つきだと思っているのか、口もきいてくれません。原因は、私がこのアプリを彼女に薦めたことです。彼女は、どうしてもアプリを見つけることができず、私が嘘をついていると思ったようなのです。どんなに嘘じゃないと言っても、信じてもらえず、険悪な状態です。私は、このまま喧嘩別れになってしまうのは絶対に嫌です。なんとか、私たちの友情を復活させてください。それから、なぜ、私は『復活ラヂオ』が聴けて、彼女には聴けないのか。その理由も教えてください。
という事です。コレは、切実なお悩みですね。当方もどうやら関わっている様子。まず、お悩みの復活の件ですが、大丈夫です。もう一度お友達に話しかけてみましょう。それで、万事解決します。それから、お尋ねの件ですが、こちらは、企業秘密なので詳しくは言えないのですが、まぁ、簡単に言うと、必要な人にだけ、お届けする形をとっています。とだけ、お伝えしておきましょう。
では、次のお便りです……”
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

みいちゃんといっしょ。
新道 梨果子
ライト文芸
お父さんとお母さんが離婚して半年。
お父さんが新しい恋人を家に連れて帰ってきた。
みいちゃんと呼んでね、というその派手な女の人は、あからさまにホステスだった。
そうして私、沙希と、みいちゃんとの生活が始まった。
――ねえ、お父さんがいなくなっても、みいちゃんと私は家族なの?
※ 「小説家になろう」(検索除外中)、「ノベマ!」にも掲載しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる