復活ラヂオアプリ

田古みゆう

文字の大きさ
上 下
5 / 8

p.5

しおりを挟む
 なかなか目当ての情報は見つからない。それなのに、鬱陶しい事に「ALISアリス」と言う単語は、求めてもいないのに、次々にオレの視界に飛び込んでくる。

 意識的にその単語から目を逸らす。けれども、一旦視界に焼き付いたその単語は、次々とオレの中から、消化し切れない、言葉では表しきれない、モヤモヤとした感情を引き摺り出した。こうなる事が分かっていたから、SNSなどには触れないようにしていたのに。

 いつだって、心の内から発生したモヤモヤとした感情は、オレ自身を縛り付け、身動きを取れなくする。頭の中を埋め尽くし、掻き乱し、オレを混乱に陥れる。だからそうなる前に、オレは心に蓋をする。今は、必死に『復活ラヂオ』についての情報だけを探した。

 ようやく見つけたのは、『復活ラヂオ』の事を書いている、どこかの誰かのブログだった。

 その人はどうやら友人から『復活ラヂオ』アプリのことを聞いたようだ。しかし、どんなに探してもそんなアプリは見つけられず、友人と口論の末、険悪な仲になってしまったらしい。友人が嘘をつくとは思えないが、どうしても、当該アプリを見つけられない。友人と仲直りするためにも、このアプリのことについて、何か知っている人がいれば、教えてほしいと結んでいた。

 ブログを読み終わったオレは、なんだかおかしな話だなと眉根を寄せた。確かにオレのスマートフォンには、当該アプリが入っている。アプリは存在している。しかも、そのラジオを先ほどまで聞いていたのだ。それなのに、この人はと言う。そんな事あるだろうか。最近は、どんな情報だって、簡単に手に入るのに。そう思いながら、ハタと気がついた。

 オレだって、やっとのことで、このブログに辿り着いたのだ。今のところ、このブログ意外に情報はない。簡単に得られる情報ばかりではないのかもしれない。

 急いで、アプリのインストール画面を開いた。検索バーに、「復活ラヂオ」と入力して検索をかける。しばらく待って表示されたのは、全く関係のないマッチングアプリ、1つだけだった。再度検索をかける。次は「復活 ラヂオ」と単語を区切って検索してみた。しかし、結果は同じであった。

 ブログ主の言うように、『復活ラヂオ』のアプリに辿り着けない。オレは、一体どうやってこのアプリを入手したんだ?

 『復活ラヂオ』アプリをタップしてみる。しかし、どれだけ待っても、そこから音は溢れてこなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

みいちゃんといっしょ。

新道 梨果子
ライト文芸
 お父さんとお母さんが離婚して半年。  お父さんが新しい恋人を家に連れて帰ってきた。  みいちゃんと呼んでね、というその派手な女の人は、あからさまにホステスだった。  そうして私、沙希と、みいちゃんとの生活が始まった。  ――ねえ、お父さんがいなくなっても、みいちゃんと私は家族なの? ※ 「小説家になろう」(検索除外中)、「ノベマ!」にも掲載しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。

四季彩カタルシス

深水千世
ライト文芸
それぞれの季節、それぞれの物語。 どこかで誰かが紡ぐ物語は悲喜こもごも。 親子や友情をテーマにした短編集です。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...