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新人魔女と師匠の間に起きたわずかな軋轢(7)
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リゼの問いにリッカはキョトンとした顔をする。
「え? ですから、風を起こして雪のように……」
そんなリッカの言葉に、リゼは手にした瓶を作業台に置くとため息を吐いた。
「構造は先ほどの説明で理解した。だが、これの用途は何だ? 何のためにこのような物を作ったのだ?」
リゼの言葉にリッカは首を傾げる。
「用途? そんなもの特にありませんけど? だってコレ、観賞用ですから」
リゼは絶句した。「なっ……」と言葉にならない声を出す。そんなリゼの様子に構うことなくリッカはニコリと微笑んだ。
「まぁ、強いて用途を挙げるなら、癒されたい時に使う、とかですかね」
リゼはリッカの言葉に思わず天を仰いだ。鼻から大きく息を吐く。リッカは師匠の様子を気にすることもなく、再び瓶を起動させ改良点の模索を始めた。そんな弟子を不可解なものをみるような目でしばらく凝視していたリゼだったが、やがて静かに口を開いた。
「何故だ?」
リッカは改良に没頭していたようで、「え?」と言って顔を上げた。
「すみません。この風を出す部分が気になっていて……。上からより下からの方がふわりと粉が舞うでしょうか?……あぁ、でも雪のようにしたいのだから、やはり上からの方が……」
リッカは独り言のように言葉を発しながら作業を再開しようとする。それをリゼが「おい!」と制した。
「君はなぜ、その様に用途のない物を作る?」
リゼの語気が荒い。しかし、リッカはそんなリゼにキョトンとした表情で答えた。
「え? 何故って、依頼を受けたからですよ。ミーナさんから」
さも当然といった様子のリッカの言葉を、リゼは頭を振りながら否定した。
「違う! 私は、何故そんな物を作るのかと聞いているのだ」
リゼの語気に気圧されながらも、リッカは困ったように頰を搔く。
「え? いや……だから頼まれたから……」
その答えにリゼは怒りを通り越して呆れるしかなかった。
「君は……魔術の研究がしたいのではなかったのか?」
リゼの問いに、リッカは目を瞬いた。鈍い反応がリゼをさらに苛立たせる。
「未知の素材を研究したい、育てたい、そのための環境を整えたい。君の考えはいつも突飛だが、直向きな探究心があるのは良いと思っていた。だが、今、君が向き合っているものはなんだ? 魔術も碌に使えない者たちのための玩具など、そこらの魔法使いが作ればいいだろう。何故君が研究時間を削ってまでそんな事をしているんだ! 全くもって無駄な行為だと思わないのか!」
「え? ですから、風を起こして雪のように……」
そんなリッカの言葉に、リゼは手にした瓶を作業台に置くとため息を吐いた。
「構造は先ほどの説明で理解した。だが、これの用途は何だ? 何のためにこのような物を作ったのだ?」
リゼの言葉にリッカは首を傾げる。
「用途? そんなもの特にありませんけど? だってコレ、観賞用ですから」
リゼは絶句した。「なっ……」と言葉にならない声を出す。そんなリゼの様子に構うことなくリッカはニコリと微笑んだ。
「まぁ、強いて用途を挙げるなら、癒されたい時に使う、とかですかね」
リゼはリッカの言葉に思わず天を仰いだ。鼻から大きく息を吐く。リッカは師匠の様子を気にすることもなく、再び瓶を起動させ改良点の模索を始めた。そんな弟子を不可解なものをみるような目でしばらく凝視していたリゼだったが、やがて静かに口を開いた。
「何故だ?」
リッカは改良に没頭していたようで、「え?」と言って顔を上げた。
「すみません。この風を出す部分が気になっていて……。上からより下からの方がふわりと粉が舞うでしょうか?……あぁ、でも雪のようにしたいのだから、やはり上からの方が……」
リッカは独り言のように言葉を発しながら作業を再開しようとする。それをリゼが「おい!」と制した。
「君はなぜ、その様に用途のない物を作る?」
リゼの語気が荒い。しかし、リッカはそんなリゼにキョトンとした表情で答えた。
「え? 何故って、依頼を受けたからですよ。ミーナさんから」
さも当然といった様子のリッカの言葉を、リゼは頭を振りながら否定した。
「違う! 私は、何故そんな物を作るのかと聞いているのだ」
リゼの語気に気圧されながらも、リッカは困ったように頰を搔く。
「え? いや……だから頼まれたから……」
その答えにリゼは怒りを通り越して呆れるしかなかった。
「君は……魔術の研究がしたいのではなかったのか?」
リゼの問いに、リッカは目を瞬いた。鈍い反応がリゼをさらに苛立たせる。
「未知の素材を研究したい、育てたい、そのための環境を整えたい。君の考えはいつも突飛だが、直向きな探究心があるのは良いと思っていた。だが、今、君が向き合っているものはなんだ? 魔術も碌に使えない者たちのための玩具など、そこらの魔法使いが作ればいいだろう。何故君が研究時間を削ってまでそんな事をしているんだ! 全くもって無駄な行為だと思わないのか!」
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