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新人魔女に新たな依頼(3)

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「フェンは随分と魔法を扱うのが上手くなったようね」

 リッカの褒め言葉にフェンは嬉しそうに尻尾を振る。

「でも、まだまだあいつから水晶を奪えません」

 フェンは鼻息荒く闘争心を見せる。フェンの特訓相手にセバンはちょうど良いようだ。土人形のセバンの存在は、リッカの中でとても優秀な補助要員となりつつあった。それだけに、工房での作業環境を整えてやればもっと役立つのではないかと期待してしまう。

 リッカはセバンたちの作業状況を思い浮かべ、ため息を吐いた。

「リッカ様。どうされたのですか?」

 リッカの足下からフェンが心配そうに問いかける。その様子にリッカは慌てて手を振った。

「ううん! 何でもない。ただ、作業場でいい風を起こす方法はないかなと考えていただけ」
「それなら、僕が風魔法を使いましょうか?」

 フェンの提案にリッカは首を横に振る。

「それはとても助かるけど、あなたは常に作業場にいるわけではないから。セバンたちだけの時にも、屋内の風通しが良くなる方法を考えなくちゃ」

 リッカの返事にフェンは納得したのか、主と一緒になって「う~ん」と唸りながら考え込む。

「あいつに尻尾はないですからね。僕みたいに尻尾で風魔法を起こせればいいのに。……リッカ様の魔法の石をあいつに持たせてみてはいかがですか?」

 フェンの提案にリッカは「そうねぇ」と呟く。その考えはリッカの頭にも過ったが、実は懸念があった。魔石は人間が生みだしたものだ。魔力から生みだされた土人形に果たしてそれを使うことができるのか。試してみないことには結果は分からないが、リッカには難しいように思えた。それよりも、セバンたちの力で風を生み出す方法を考えた方が現実的だ。

 リッカは悩みながらラウルの店へとやって来た。昨日納品をした魔法陣と魔法石の状態を確認するためだ。店の前のドアには休憩中の札がかけられている。午後の仕込みの最中なのだろう。リッカは店の裏側へと周り、そこから中へ声をかけた。

「ラウルさん、こんにちはー」

 リッカの声にラウルが店の奥からひょっこりと顔を出した。

「やあ! リッカちゃん、いらっしゃい」
「きのう納品した魔法陣と魔法石の状態を確認に来たのですが、何か困ったことはありましたか?」
「全然。本当に大助かりだよ」

 ラウルに連れられてリッカが厨房内へ入ると、二体の白いセバンが忙しそうに動き回っていた。小麦粉を捏ねたものを元にして錬成された、この店専用のセバンたちだ。
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