新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう

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新人魔女の栽培研究(5)

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 リゼはそう言うとリッカの手から本をヒョイと取り上げる。そして、本を元の場所に戻すと、再びリッカに向き直る。

「さて。それでは、始めよう」
「え? あの、だから何も分からないのですけど……」

 困惑するリッカを黙らせるようにリゼは人差し指をスッと立てると、その指を工房の扉へと向ける。

「来い。ここでグダグダ言っていても仕方がない。研究は始めなければ何も結果を生まないのだ。何事もまずは始めてみる。考えるのはそれからでいい」

 リゼは自信満々に言い放つと、再び工房の外へと出て行ってしまう。リゼの勢いに圧倒されたリッカは、慌ててリゼの後を追いかける。外へと出たリッカはすぐに足を止めた。工房の庭には見慣れぬ建物が立っていた。

「リゼさん、あの建物は?」

 リッカの疑問にリゼは表情を変えることなく淡々と答える。

「君が氷精花の研究をするための作業場だ」
「え?」

 驚くリッカをよそに、リゼはスタスタと建物の方へと歩いていく。

「いつの間にこんなもの……」
「さっきだ。君が情報を漁っている間に、私が魔法で造っておいた」

 リゼはそう言いながら建物の扉を開く。リッカも慌ててリゼの後に続く。

 中は広々とした空間になっていた。天井は高く吹き抜けのようになっており、屋根には陽光を多く取り込むためにガラス窓がはめ込まれている。室内を明るくするためか、部屋の奥の壁一面もガラス張りになっていて外がよく見えた。

 一方で、別の壁には天井まで届くような大きな棚が壁一面に設えられている。棚には薬品や素材が所狭しと並べられている。その棚の前には作業台が設えられており、陶器やガラス製のフラスコなどの実験道具が整然と並んでいる。部屋のあちこちにも所狭しと素材が置かれ、そうかと思えば、畑のような土がむき出しの場所もあった。工房の庭先にリッカが簡易的に作った虹の雫の液を採取する装置も室内に場所を移されている。

「す、凄い……」

 リッカは感嘆の声を上げた。

「この広さがあれば研究するにも十分だろう?」

 リゼはそう言いながら、満足そうに室内を見回している。確かにこれだけの空間があればどんな研究でも出来るだろう。リッカは自分がここでのんびりと好きなだけ実習をする様子を思い浮かべて思わずうっとりとしてしまった。

 だが、すぐにハッと我に返る。隣にいたはずのリゼはいつの間にか作業台の前の椅子に腰を下ろしていた。その顔には楽しそうな笑みが広がっている。

「この席は私専用にする」
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