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新人魔女、初めてのお仕事契約(2)
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「ごめんなさい、ラウルさん。わたし、契約を取り消しません」
リッカは何かを決意したような目でしっかりとラウルを見つめ、そう言い放った。リッカの言葉にラウルはもちろん、静かに話を聞いていたギルド長までもが目を丸くする。
「わたしと契約してください!」
「なんだって?」
リッカの言葉にラウルが驚きの声を上げる。オリバーも驚いた表情でリッカを見ていた。
「だって、あのスイーツをもっと美味しく改良して売り出すのでしょう? わたしは薬草農家ではないけれど、原材料の氷精花の在庫を持っていることはラウルさんも知っていますよね? それにスイーツの改良だって、うちのお姉様がいれば捗るんじゃありませんか?」
「でも、それは……」
リッカに詰め寄られたラウルは言い淀む。確かにリッカの申し出はその通りだった。しかし、見習い学校を卒業し働き始めているとはいえ、ラウルから見ればリッカはまだ子どもだ。そんな子どもを専属契約者にしていいものか、ラウルは躊躇していた。
ラウルの迷いを見て取ったギルド長のオリバーは、提案者であるリッカをジッと見つめる。ラウルとの契約は無効にした方が良いと暗に伝えてみたが、どうやらリッカはその意図を理解した上で、それでも今回の契約を望んでいるように見える。
そうだとするならば、それはもう工房主としてのリッカの判断であり、ギルドがとやかく口を出すことではない。オリバーはやがて静かに口を開いた。
「ラウルさん、彼女はまだ年若いですがギルド会員です。つまりはプロということです」
オリバーの言葉に、ラウルはハッとしたような表情をする。そしてリッカをまじまじと見つめる。
「……君は、ミーナさんの店の見習いではないのかい?」
「はい。先日は訳あってミーナさんに少々お世話になっていただけで、わたしは別の工房で働いています。ちなみに、見習いでもありません」
ラウルの疑問にリッカは首を振る。その答えにラウルはますます訳がわからないといった表情になった。
「じゃあ、君は一体何者なんだい?」
ラウルの問いかけにリッカは一瞬なんと答えたものかと思案する。ギルド会員になった際に、ギルド長であるオリバーから、リッカ自身が工房主の立場にあることは明かさない方が良いと釘を刺されたからだ。リッカはどうしたものかと、オリバーに助けを求めるような視線を向けた。
「彼女は工房主ですよ」
リッカの視線を受け止めたオリバーは、静かにラウルにそう告げる。
リッカは何かを決意したような目でしっかりとラウルを見つめ、そう言い放った。リッカの言葉にラウルはもちろん、静かに話を聞いていたギルド長までもが目を丸くする。
「わたしと契約してください!」
「なんだって?」
リッカの言葉にラウルが驚きの声を上げる。オリバーも驚いた表情でリッカを見ていた。
「だって、あのスイーツをもっと美味しく改良して売り出すのでしょう? わたしは薬草農家ではないけれど、原材料の氷精花の在庫を持っていることはラウルさんも知っていますよね? それにスイーツの改良だって、うちのお姉様がいれば捗るんじゃありませんか?」
「でも、それは……」
リッカに詰め寄られたラウルは言い淀む。確かにリッカの申し出はその通りだった。しかし、見習い学校を卒業し働き始めているとはいえ、ラウルから見ればリッカはまだ子どもだ。そんな子どもを専属契約者にしていいものか、ラウルは躊躇していた。
ラウルの迷いを見て取ったギルド長のオリバーは、提案者であるリッカをジッと見つめる。ラウルとの契約は無効にした方が良いと暗に伝えてみたが、どうやらリッカはその意図を理解した上で、それでも今回の契約を望んでいるように見える。
そうだとするならば、それはもう工房主としてのリッカの判断であり、ギルドがとやかく口を出すことではない。オリバーはやがて静かに口を開いた。
「ラウルさん、彼女はまだ年若いですがギルド会員です。つまりはプロということです」
オリバーの言葉に、ラウルはハッとしたような表情をする。そしてリッカをまじまじと見つめる。
「……君は、ミーナさんの店の見習いではないのかい?」
「はい。先日は訳あってミーナさんに少々お世話になっていただけで、わたしは別の工房で働いています。ちなみに、見習いでもありません」
ラウルの疑問にリッカは首を振る。その答えにラウルはますます訳がわからないといった表情になった。
「じゃあ、君は一体何者なんだい?」
ラウルの問いかけにリッカは一瞬なんと答えたものかと思案する。ギルド会員になった際に、ギルド長であるオリバーから、リッカ自身が工房主の立場にあることは明かさない方が良いと釘を刺されたからだ。リッカはどうしたものかと、オリバーに助けを求めるような視線を向けた。
「彼女は工房主ですよ」
リッカの視線を受け止めたオリバーは、静かにラウルにそう告げる。
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