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新人魔女とギルド長(4)
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オリバーが首を傾げて尋ねる。すると、リッカが答えるより早くジャックスが静かに口を開いた。
「以前の工房主から嬢ちゃんが工房を引き継いだ。工房名は、前の工房主の名だ。嬢ちゃんの師でもある」
ジャックスがリッカに代わって説明をすると、オリバーは気にかかることでもあるのか、腕を組み口の中で小さく「マグノリア」と呟く。リッカはそんなオリバーの様子を不思議に思いながらも、ジャックスの言葉に何か補足を付け加えたほうがよいかもしれないと口を開きかけた。そんなリッカの腕を隣に座るジャックスがそっと掴む。リッカは驚いてジャックスの顔を見た。彼は小さく首を振り、静かにするようにと目で合図をした。そんなジャックスの態度から、何が余計なことになるか分からないから口を噤んでいた方が良いと判断したリッカは開きかけた口を閉じ、こくりと頷く。
ジャックスとリッカのやり取りに気が付くことなく、オリバーは「なるほど」と納得顔で頷いている。オリバーが納得したように頷いた様子から、もしかしたら前の工房主が大賢者であるリゼだと知っているのかもしれないとリッカは感じ取った。しかし、それを尋ねることは躊躇われる空気だったので、リッカはあえて口を開かなかった。
しばらくの沈黙の後、オリバーは顔を上げた。そしてにっこりと微笑む。
「分かりました。登録申請書を受理しましょう。これまではギルドに登録されていなかったようですので、次にギルドカードの登録を行います。お嬢さん、こちらの板に指を一本当てて下さいますかな」
オリバーは手のひらサイズの透明の板を先ほど記入した登録用紙の上に置いた。まるで薄いガラス板のようなそれをリッカはしげしげと見つめる。板を縁取るようにぐるりと模様に似せた魔法陣が描かれている。つるりとして指触りの良さそうなそれに、一体どんな秘密があるのかと不思議に思いながらも、リッカはそっと人差し指を触れさせる。すると、透明の板が淡く光り出した。
リッカは驚いて手を引っ込める。何事かと驚いているリッカを気にも留めずオリバーが登録用紙の下の方に触れると、板が放つ光がさらに増す。しかしそれは束の間で、光は次第に弱まりやがて消えていった。完全に光が消えると、板の下にあった羊皮氏は無くなっており、その代わりに板に文字が浮かび上がっていた。
「さあ、出来ましたよ。こちらをどうぞ」
透明の板には先ほど登録用紙に記入した事項が記載されていた。
「以前の工房主から嬢ちゃんが工房を引き継いだ。工房名は、前の工房主の名だ。嬢ちゃんの師でもある」
ジャックスがリッカに代わって説明をすると、オリバーは気にかかることでもあるのか、腕を組み口の中で小さく「マグノリア」と呟く。リッカはそんなオリバーの様子を不思議に思いながらも、ジャックスの言葉に何か補足を付け加えたほうがよいかもしれないと口を開きかけた。そんなリッカの腕を隣に座るジャックスがそっと掴む。リッカは驚いてジャックスの顔を見た。彼は小さく首を振り、静かにするようにと目で合図をした。そんなジャックスの態度から、何が余計なことになるか分からないから口を噤んでいた方が良いと判断したリッカは開きかけた口を閉じ、こくりと頷く。
ジャックスとリッカのやり取りに気が付くことなく、オリバーは「なるほど」と納得顔で頷いている。オリバーが納得したように頷いた様子から、もしかしたら前の工房主が大賢者であるリゼだと知っているのかもしれないとリッカは感じ取った。しかし、それを尋ねることは躊躇われる空気だったので、リッカはあえて口を開かなかった。
しばらくの沈黙の後、オリバーは顔を上げた。そしてにっこりと微笑む。
「分かりました。登録申請書を受理しましょう。これまではギルドに登録されていなかったようですので、次にギルドカードの登録を行います。お嬢さん、こちらの板に指を一本当てて下さいますかな」
オリバーは手のひらサイズの透明の板を先ほど記入した登録用紙の上に置いた。まるで薄いガラス板のようなそれをリッカはしげしげと見つめる。板を縁取るようにぐるりと模様に似せた魔法陣が描かれている。つるりとして指触りの良さそうなそれに、一体どんな秘密があるのかと不思議に思いながらも、リッカはそっと人差し指を触れさせる。すると、透明の板が淡く光り出した。
リッカは驚いて手を引っ込める。何事かと驚いているリッカを気にも留めずオリバーが登録用紙の下の方に触れると、板が放つ光がさらに増す。しかしそれは束の間で、光は次第に弱まりやがて消えていった。完全に光が消えると、板の下にあった羊皮氏は無くなっており、その代わりに板に文字が浮かび上がっていた。
「さあ、出来ましたよ。こちらをどうぞ」
透明の板には先ほど登録用紙に記入した事項が記載されていた。
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