278 / 364
新人魔女と襲撃者(6)
しおりを挟む
唐突にそう返され、リッカは首を傾げる。そんなリッカをエルナは心配そうに見つめた。
「えぇ、その……。周りの方がリッカさんをものすごい目で見ているような気がするのですけれど?」
義姉の言葉に改めて周りを見てみると、確かに広間のそこかしこから射殺すような視線を感じた。憎しみにも似た視線。リッカは思わず身震いする。
「た、確かに皆さんから睨まれているような気がします」
リッカは思わず後ずさる。そんなリッカを庇うようにエルナがそっとリッカの手を引いて壁際のあまり目立たない位置へと誘導した。
「お義父様とお義母様はご挨拶にみえる方々のお相手がお忙しいようですし、近くへ行くとかえって目立ってしまうかもしれませんから、こちらで静かにしていましょう。私、飲み物を取って来ますね」
そう言って、義姉は飲み物を取りにその場を離れる。エルナが立ち去った後、リッカは小さくため息をついた。広間のあちこちにいる貴族の視線が痛い。なぜ自分はこれほどまでに周囲から視線を向けられているのか。リッカは眉間に皺を寄せる。しかし程なくして、チラチラと自分を見ているのが貴族女性ばかりであることに気がついた。つまりこの視線は――。
「お姉様、これはたぶん嫉妬の視線だと思います」
「嫉妬?」
飲み物を手に戻ってきたエルナがリッカの言葉に首を傾げる。
「はい」
そう言って、リッカは苦笑いを浮かべた。義姉はそんなリッカを見て不思議そうにしている。
「わたしに視線を投げてくるのが女性の方たちばかりなので、たぶん、勘違いをしているのです」
「一体何を勘違いしているのです?」
リッカの説明にエルナは首を傾げる。そんな義姉を見て、リッカは罰が悪そうに答えを口にした。
「立太子礼を見た皆さんは、先ほど大広間に現れたのが皇太子であるリゼさんだとわかったはずです。それで、親しげに言葉を交わしていたわたしを……」
リッカはそこまで言うと口を噤んだ。義姉にこの説明は酷かもしれないと気づいたのだ。皇太子と親しげに言葉を交わしていただけでこれほどまでに嫉妬の目を向けられるのだ。エルナが婚約者であると発表されたら一体どれほどの騒ぎになるか。
想像して血の気が引いた。小さく深呼吸をしてから改めて周囲を見回すと、誰も彼もが恐ろしく見える。
「お姉様、髪飾りは付けていますね?」
突然のリッカの質問にエルナは目を瞬かせる。しかしすぐに破顔すると嬉しそうに言った。
「ええ、もちろんですよ」
「えぇ、その……。周りの方がリッカさんをものすごい目で見ているような気がするのですけれど?」
義姉の言葉に改めて周りを見てみると、確かに広間のそこかしこから射殺すような視線を感じた。憎しみにも似た視線。リッカは思わず身震いする。
「た、確かに皆さんから睨まれているような気がします」
リッカは思わず後ずさる。そんなリッカを庇うようにエルナがそっとリッカの手を引いて壁際のあまり目立たない位置へと誘導した。
「お義父様とお義母様はご挨拶にみえる方々のお相手がお忙しいようですし、近くへ行くとかえって目立ってしまうかもしれませんから、こちらで静かにしていましょう。私、飲み物を取って来ますね」
そう言って、義姉は飲み物を取りにその場を離れる。エルナが立ち去った後、リッカは小さくため息をついた。広間のあちこちにいる貴族の視線が痛い。なぜ自分はこれほどまでに周囲から視線を向けられているのか。リッカは眉間に皺を寄せる。しかし程なくして、チラチラと自分を見ているのが貴族女性ばかりであることに気がついた。つまりこの視線は――。
「お姉様、これはたぶん嫉妬の視線だと思います」
「嫉妬?」
飲み物を手に戻ってきたエルナがリッカの言葉に首を傾げる。
「はい」
そう言って、リッカは苦笑いを浮かべた。義姉はそんなリッカを見て不思議そうにしている。
「わたしに視線を投げてくるのが女性の方たちばかりなので、たぶん、勘違いをしているのです」
「一体何を勘違いしているのです?」
リッカの説明にエルナは首を傾げる。そんな義姉を見て、リッカは罰が悪そうに答えを口にした。
「立太子礼を見た皆さんは、先ほど大広間に現れたのが皇太子であるリゼさんだとわかったはずです。それで、親しげに言葉を交わしていたわたしを……」
リッカはそこまで言うと口を噤んだ。義姉にこの説明は酷かもしれないと気づいたのだ。皇太子と親しげに言葉を交わしていただけでこれほどまでに嫉妬の目を向けられるのだ。エルナが婚約者であると発表されたら一体どれほどの騒ぎになるか。
想像して血の気が引いた。小さく深呼吸をしてから改めて周囲を見回すと、誰も彼もが恐ろしく見える。
「お姉様、髪飾りは付けていますね?」
突然のリッカの質問にエルナは目を瞬かせる。しかしすぐに破顔すると嬉しそうに言った。
「ええ、もちろんですよ」
1
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる
青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。
ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。
Hotランキング21位(10/28 60,362pt 12:18時点)
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる