新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう

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新人魔女と襲撃者(6)

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 唐突にそう返され、リッカは首を傾げる。そんなリッカをエルナは心配そうに見つめた。

「えぇ、その……。周りの方がリッカさんをものすごい目で見ているような気がするのですけれど?」

 義姉の言葉に改めて周りを見てみると、確かに広間のそこかしこから射殺すような視線を感じた。憎しみにも似た視線。リッカは思わず身震いする。

「た、確かに皆さんから睨まれているような気がします」

 リッカは思わず後ずさる。そんなリッカを庇うようにエルナがそっとリッカの手を引いて壁際のあまり目立たない位置へと誘導した。

「お義父様とお義母様はご挨拶にみえる方々のお相手がお忙しいようですし、近くへ行くとかえって目立ってしまうかもしれませんから、こちらで静かにしていましょう。わたくし、飲み物を取って来ますね」

 そう言って、義姉は飲み物を取りにその場を離れる。エルナが立ち去った後、リッカは小さくため息をついた。広間のあちこちにいる貴族の視線が痛い。なぜ自分はこれほどまでに周囲から視線を向けられているのか。リッカは眉間に皺を寄せる。しかし程なくして、チラチラと自分を見ているのが貴族女性ばかりであることに気がついた。つまりこの視線は――。

「お姉様、これはたぶん嫉妬の視線だと思います」
「嫉妬?」

 飲み物を手に戻ってきたエルナがリッカの言葉に首を傾げる。

「はい」

 そう言って、リッカは苦笑いを浮かべた。義姉はそんなリッカを見て不思議そうにしている。

「わたしに視線を投げてくるのが女性の方たちばかりなので、たぶん、勘違いをしているのです」
「一体何を勘違いしているのです?」

 リッカの説明にエルナは首を傾げる。そんな義姉を見て、リッカは罰が悪そうに答えを口にした。

「立太子礼を見た皆さんは、先ほど大広間に現れたのが皇太子であるリゼさんだとわかったはずです。それで、親しげに言葉を交わしていたわたしを……」

 リッカはそこまで言うと口を噤んだ。義姉にこの説明は酷かもしれないと気づいたのだ。皇太子と親しげに言葉を交わしていただけでこれほどまでに嫉妬の目を向けられるのだ。エルナが婚約者であると発表されたら一体どれほどの騒ぎになるか。

 想像して血の気が引いた。小さく深呼吸をしてから改めて周囲を見回すと、誰も彼もが恐ろしく見える。

「お姉様、髪飾りは付けていますね?」

 突然のリッカの質問にエルナは目を瞬かせる。しかしすぐに破顔すると嬉しそうに言った。

「ええ、もちろんですよ」
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