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新人魔女の初報酬(2)

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 そして一夜開けた今日、街は完全に喪に服している。沈黙を守る街を見下ろしながらリッカはポツリと呟く。

「わたし、国王様が身罷みまかられた時、リゼさんと弔いの儀式をしたんです」

 その言葉にエルナが小さく頷く。

「……ええ」
「静まり返った墓所に凛としたリゼさんの詠唱を唱える声が響いて、それに答えるかのようにたくさんの星が雨のように流れたんです。すごく厳かで不思議な時間でした」

 リッカはその時の感覚を思い出すように、目を閉じて胸に手を当てた。その瞼の裏にはまだ鮮明に残っている。何とも言えない幻想的な光景と、あの時目にしたリゼの涙が。

 静かに耳を傾けてくれるエルナに向かってリッカは言葉を続けた。

「わたし、リゼさんに頼られて、お力になれてとても嬉しかったんです。でも、……わたしがあの場所に居ても良かったのかなって今になって思うんです」

 リッカは胸に当てていた手をギュッと握り込んだ。

「墓所は歴代の王族方が眠る神聖な場所。一国民がおいそれと行くような場所ではありません。それなのに、国王様と面識のなかったわたしが……」

 リッカは声を詰まらせる。胸の中で渦巻く感情に上手く言葉が続かない。そんなリッカをエルナは優しく見つめる。そして、その小さな背中にそっと手を当てた。優しい温もりに背中を押されるようにリッカは再び口を開く。

「国王様のことを実は少しも存じ上げなかったのです。それなのに、そんなわたしが国王様の崩御を神聖な場所で悼んでしまって……。それで、本当に良かったのかなと」
「リッカさん……」

 エルナはリッカの背中に当てていた手をそっと彼女の肩に回すと、静かに寄り添うように彼女の体を抱き寄せた。

「国王様はご不快ではなかったでしょうか? 歴代の王族方は神聖な場所へ足を踏み入れたわたしを怒ってはいないでしょうか?」

 小さく震えるリッカの肩を優しく抱き締めながら、エルナはリッカの耳元でハッキリとした声で告げた。

「いいえ」

 あまりにもはっきりとした言葉にリッカは驚きの表情でエルナを見る。その視線をしっかりと受け止めてエルナは微笑んだ。

「それは違いますよ、リッカさん。確かに墓所では軽はずみな行動は許されません。ですが、人の死を悼むことの何がいけないのです?」
「ですが、わたしは……」

 尚も食い下がろうとするリッカをエルナは首を振って制止する。そして穏やかな口調で更に続けた。

「国王様はどんな状況でも他人に寄り添ってくださる方でした」
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