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新人魔女には少し難しい助言の話(5)

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「お姉様……」

 エルナはリッカに向き直ると唇に人差し指を当てた。そして、はにかみながら囁く。

「この事はネージュ様には言っては駄目ですよ」
「あら? どうしてですか?」
「だって、は……恥ずかしいじゃありませんか」

 不思議そうに首を傾げた義妹にそう言うと、エルナはリッカの視線から逃げるように顔を背けた。そんな可愛らしい仕草をする義姉を見て、リッカは思わず抱きしめたい衝動にかられたが、ここは慎み深く一礼するに留めておくことにした。

「わかりました。でも、リゼさんが聞いたら喜ぶと思いますけど」

 リッカの言葉にエルナは少し困ったように笑った。そして、「ダメです。秘密ですよ」と再び人差し指を唇に当てたのだった。

 ミーナはそんな二人の力の抜けたやりとりを見て、この姉妹がリゼの側にいることで、常に人を寄せ付けまいとしていたあの頑なな大賢者の心も少しずつほぐされているのだろうなと感じ、思わず笑みがこぼれる。そして、そんな大賢者を支える二人の少女に心からエールを送りたくなるのだった。

 ミーナは立ち上がると、エルナとリッカを優しく抱きしめる。突然抱きしめられた二人は驚いた表情を浮かべた。

「み、ミーナさん?」
「あらあら。ごめんなさい。こんな可愛らしい子たちがそばにいたら、わたくしも毎日楽しいだろうなと想像したらつい」

 真意を柔らかな笑顔で包んだミーナの言葉に、エルナもリッカもキョトンとした表情を浮かべていたが、すぐに嬉しそうに顔を見合わせるとクスクスと笑い合った。そんな二人の笑顔を見ているとミーナも自然と笑顔になる。

 特にエルナの笑顔に安堵した。彼女が時折見せる切羽詰まったような、鬼気迫る眼差しは見ているミーナの胸をも締め付けていたのだ。

 だが今のエルナからは憂いは感じられず、幸福に満ちた笑顔しか見られない。彼女を急きたてる何かから解放されたのだろうか。彼女の心を軽くしたのは一体何なのだろうとミーナは思ったが、まだ付き合いの浅い自分が立ち入る事ではないとミーナは一人納得した。

「ミーナ先生?」

 自身をじっと見つめるミーナの視線を感じたのか、エルナは不思議そうに首を傾げながらミーナに呼びかける。我に返ったミーナは、エルナにニコリと微笑みかけた。

「はい。何でしょうか?」
わたくしの顔に、何か付いていますか?」
「あら? ごめんなさい。違いますよ」

 ミーナの言葉にエルナはホッとした表情を浮かべたが、すぐに不安そうな眼差しをミーナに向ける。
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