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新人魔女には少し難しい助言の話(2)
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リッカの案にミーナは思わずプッと噴き出す。静かにリッカの話を聞いていたエルナも驚きに目を見開いていた。二人の反応にリッカは慌てて言葉を付け足す。
「いや、あの、お客様が……ラウルさんの店に来ていたお客様のほとんどが言っていたことを思い出したんですよ」
「ふふふ。何を言っていたのかしら? まさか、ネージュ様の悪口?」
「ミーナ先生!!」
ミーナの冗談めかした物言いにエルナは即座に抗議の声を上げた。
確かにリゼは無愛想な表情のせいで人を寄せ付けない雰囲気がある。しかし、そもそもリゼは森の中に住み滅多に人前には現れないため、大賢者マグノリアとして名前こそ知られているが、容姿や人柄を知る人は少ない。
そのため、平民がリゼの悪口を言おうにも、本人に関する情報のほとんどを持ち合わせていない。せいぜい、「魔物の巣食う森に住む変わり者」とか「人前に姿を見せない引きこもり」とかその程度だろう。それにあのリゼなら誰に何を言われようとも、大して気にも留めないだろうとリッカは思う。
エルナの抗議の声にミーナはクスクスと笑いながら謝罪した。
「ごめんなさい。ちょっと調子に乗りすぎたわ。ネージュ様のことは皆敬意を持っていますよ。でも、リッカちゃんはどうしてネージュ様の表情が硬いことが気になるの?」
ミーナの問いにリッカは大真面目な顔で答える。ラウルの店でリッカは接客をしながら客との会話を楽しんでいたのだが、その途中でふと気付いたのだ。厨房を気にしたり、ラウルはどうしたのかと尋ねてくる客が多いことに。そして、その客たちのほとんどが口を揃えて言うのだ。ラウルの笑顔はとびきり素敵だから、ついまた会いに来たくなると。
リッカの説明にミーナは納得したように頷いた。
「そうねぇ……確かにラウルくんの笑顔は素敵よね。人当たりの良さがにじみ出ているもの。彼はまさに接客の鑑ね」
ミーナは思い出すように瞳を閉じて微笑む。
「だから、リゼさんももっと笑ったらいいんじゃないかなと思うんですよ」
リッカの言葉にミーナは困ったように笑う。
「それは……難しい課題ね……」
ミーナの言葉にリッカはつい乾いた笑いを漏らしたが、二人の会話を聞いていたエルナは不思議そうに首を傾げた。
「ネージュ様はいつでもお優しいですし、笑顔も素敵ではありませんか?」
エルナの言葉にリッカは一瞬ポカンとした表情を浮かべた。そしてすぐに思い至ったように頷く。
「それはお姉様にだけですよ」
「いや、あの、お客様が……ラウルさんの店に来ていたお客様のほとんどが言っていたことを思い出したんですよ」
「ふふふ。何を言っていたのかしら? まさか、ネージュ様の悪口?」
「ミーナ先生!!」
ミーナの冗談めかした物言いにエルナは即座に抗議の声を上げた。
確かにリゼは無愛想な表情のせいで人を寄せ付けない雰囲気がある。しかし、そもそもリゼは森の中に住み滅多に人前には現れないため、大賢者マグノリアとして名前こそ知られているが、容姿や人柄を知る人は少ない。
そのため、平民がリゼの悪口を言おうにも、本人に関する情報のほとんどを持ち合わせていない。せいぜい、「魔物の巣食う森に住む変わり者」とか「人前に姿を見せない引きこもり」とかその程度だろう。それにあのリゼなら誰に何を言われようとも、大して気にも留めないだろうとリッカは思う。
エルナの抗議の声にミーナはクスクスと笑いながら謝罪した。
「ごめんなさい。ちょっと調子に乗りすぎたわ。ネージュ様のことは皆敬意を持っていますよ。でも、リッカちゃんはどうしてネージュ様の表情が硬いことが気になるの?」
ミーナの問いにリッカは大真面目な顔で答える。ラウルの店でリッカは接客をしながら客との会話を楽しんでいたのだが、その途中でふと気付いたのだ。厨房を気にしたり、ラウルはどうしたのかと尋ねてくる客が多いことに。そして、その客たちのほとんどが口を揃えて言うのだ。ラウルの笑顔はとびきり素敵だから、ついまた会いに来たくなると。
リッカの説明にミーナは納得したように頷いた。
「そうねぇ……確かにラウルくんの笑顔は素敵よね。人当たりの良さがにじみ出ているもの。彼はまさに接客の鑑ね」
ミーナは思い出すように瞳を閉じて微笑む。
「だから、リゼさんももっと笑ったらいいんじゃないかなと思うんですよ」
リッカの言葉にミーナは困ったように笑う。
「それは……難しい課題ね……」
ミーナの言葉にリッカはつい乾いた笑いを漏らしたが、二人の会話を聞いていたエルナは不思議そうに首を傾げた。
「ネージュ様はいつでもお優しいですし、笑顔も素敵ではありませんか?」
エルナの言葉にリッカは一瞬ポカンとした表情を浮かべた。そしてすぐに思い至ったように頷く。
「それはお姉様にだけですよ」
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