233 / 364
新人魔女と義姉のアルバイト(1)
しおりを挟む
「おはようございまーす!」
「おはようございます」
新人魔女リッカとその義姉エルナはまだ外が暗い内に商店街のとある店舗へとやって来た。店には既に明かりが灯り、周囲に甘い匂いを立ち込めさせている。
リッカとエルナは店先で挨拶をしながら、厨房にいる店主に声をかけた。店主であるラウルは、厨房から爽やかな笑顔を覗かせると、二人に挨拶をする。
「やあ! 二人ともおはよう。朝早くから悪いね。今日もよろしく頼むよ。……ああ、ミーナさんは店の休憩時に顔を出すって。それまでは何かあれば僕に聞いてくれればいいから」
「はい! よろしくお願いします!」
「よろしくお願い致します」
ラウルはそれだけ言うと再び厨房へ戻って行った。開店までにやることは多い。それでも今日は二人が手伝いにきてくれたので、幾分か楽になるはずだ。ラウルは機嫌よく作業を進める。
厨房から漏れ聞こえるラウルの鼻歌に、リッカとエルナは顔を見合わせ、ふふッと笑い合う。それからエルナとリッカは仲良く開店準備にとりかかった。二人はまず、店内の掃除から始めることにした。それほど広くない店舗だが、食品を扱っているし、飲食スペースも併設しているため、清潔第一なのだと昨日ラウルから説明を受けていた。
二人がかりで隅々まで綺麗にしていく。床を箒で掃き、テーブルや椅子を丁寧に拭き上げる。エルナはこれまでの経験から掃除はお手のものだったし、リッカも工房へ勤め始めてから毎朝工房の掃除をしていたので手慣れたものだ。
厨房の方からは甘いいい匂いが漂ってくる。そんな香りにつられて二人のお腹からぐぅと音が鳴った。二人が互いに照れ笑いを浮かべると、厨房からラウルが顔を覗かせた。
「二人とも掃除は終わったかい?」
ラウルの言葉に二人は頷く。ラウルは満足そうに微笑むと、二人に手招きし厨房へ招き入れた。そこは店内以上に甘い香りが充満していた。作業台の上には出来たばかりのアップルパイが並べられている。それ以外にガトーショコラやシュークリーム、ショートケーキにドーナツなど、様々なお菓子もある。
二人は思わず目を輝かせた。二人にとってこの光景は何とも幸せなものだった。そんな二人をラウルはククッと笑う。
「どれか食べてみるかい?」
その言葉に二人は顔を見合わせ、慌てて二人同時に首を振った。
「遠慮しなくてもいいんだよ。店の手伝いをしてもらっても、ミーナさんとの約束で謝礼は払えないんだから。これくらいは」
「おはようございます」
新人魔女リッカとその義姉エルナはまだ外が暗い内に商店街のとある店舗へとやって来た。店には既に明かりが灯り、周囲に甘い匂いを立ち込めさせている。
リッカとエルナは店先で挨拶をしながら、厨房にいる店主に声をかけた。店主であるラウルは、厨房から爽やかな笑顔を覗かせると、二人に挨拶をする。
「やあ! 二人ともおはよう。朝早くから悪いね。今日もよろしく頼むよ。……ああ、ミーナさんは店の休憩時に顔を出すって。それまでは何かあれば僕に聞いてくれればいいから」
「はい! よろしくお願いします!」
「よろしくお願い致します」
ラウルはそれだけ言うと再び厨房へ戻って行った。開店までにやることは多い。それでも今日は二人が手伝いにきてくれたので、幾分か楽になるはずだ。ラウルは機嫌よく作業を進める。
厨房から漏れ聞こえるラウルの鼻歌に、リッカとエルナは顔を見合わせ、ふふッと笑い合う。それからエルナとリッカは仲良く開店準備にとりかかった。二人はまず、店内の掃除から始めることにした。それほど広くない店舗だが、食品を扱っているし、飲食スペースも併設しているため、清潔第一なのだと昨日ラウルから説明を受けていた。
二人がかりで隅々まで綺麗にしていく。床を箒で掃き、テーブルや椅子を丁寧に拭き上げる。エルナはこれまでの経験から掃除はお手のものだったし、リッカも工房へ勤め始めてから毎朝工房の掃除をしていたので手慣れたものだ。
厨房の方からは甘いいい匂いが漂ってくる。そんな香りにつられて二人のお腹からぐぅと音が鳴った。二人が互いに照れ笑いを浮かべると、厨房からラウルが顔を覗かせた。
「二人とも掃除は終わったかい?」
ラウルの言葉に二人は頷く。ラウルは満足そうに微笑むと、二人に手招きし厨房へ招き入れた。そこは店内以上に甘い香りが充満していた。作業台の上には出来たばかりのアップルパイが並べられている。それ以外にガトーショコラやシュークリーム、ショートケーキにドーナツなど、様々なお菓子もある。
二人は思わず目を輝かせた。二人にとってこの光景は何とも幸せなものだった。そんな二人をラウルはククッと笑う。
「どれか食べてみるかい?」
その言葉に二人は顔を見合わせ、慌てて二人同時に首を振った。
「遠慮しなくてもいいんだよ。店の手伝いをしてもらっても、ミーナさんとの約束で謝礼は払えないんだから。これくらいは」
2
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
こうやさい
ファンタジー
わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。
これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。
義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。
とりあえずお兄さま頑張れ。
PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。
やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる
青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。
ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。
Hotランキング21位(10/28 60,362pt 12:18時点)
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる