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新人魔女の店舗見学(2)

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 リッカは、お茶に添えられた焼き菓子にも手を伸ばすと、それを口へと運ぶ。ほんのりと甘い。糖分が疲れた体に心地良い。満面の笑みでお菓子を堪能するリッカの様子を、ロレーヌは少し安心した表情で見つめていた。

 舞踏練習に毎回立ち会っているロレーヌは、練習中の娘二人の様子を見てハラハラしていたのだ。失敗する度に講師の老女に叱責され、表情を歪める娘二人を見て胸が痛まない訳がない。しかし、同時に二人が失敗を恐れず、ただ黙々と練習に取り組む姿を見ていると、感慨深いものもあった。

 ロレーヌはエルナに視線を向ける。エルナもリッカ同様お茶を口にしているが、こちらは浮かない表情をしている。しばらく見ていたが全く表情が晴れる気配はない。慣れない舞踏の型を覚えようとして疲れが出ているのだろう。ロレーヌはそう思い、その労をねぎらう様に声をかける。

「エルナ、舞踏練習はいかがですか?」

 声をかけられたエルナは顔をハッと上げると、一呼吸おいてから返事をする。

「はい、お義母様。まだ上手くは踊れませんが、必ずや習得してみせます」

 エルナはそう言ってぎこちない笑みを浮かべた。

 その返答にロレーヌは些か不安を感じる。時間のない中での貴族教育。多少の無理を強いる事は仕方ないと割り切ってはいるものの、養女の聞き分けの良さに、幾ばくかの不安を覚える。この子はいつか許容量をオーバーしてしまい、倒れてしまうのではないだろうか。 ロレーヌはそんな事を危惧していた。

「無理は禁物ですよ。貴女はよくやっているわ」

 ロレーヌがそう言うと、エルナはニコリと微笑み頷いた。

「ありがとうございます、お義母様」

 エルナの笑顔はどこかぎこちない。無理を強いておきながら、無理をするなと矛盾した事を言う自分に、エルナは少しばかり嫌悪感を持っているのかも知れない。

「お義母様、明日はあの方はお見えにならないのですよね?」

 エルナの問いに、ふと胸に過った疑念を振り払いながらロレーヌは頷き返す。

「ええ、そうですよ」

 エルナは一瞬、暗い表情をしたがすぐに取り繕った笑みを見せる。

「明日、わたくしがホールを使用しても構いませんか?」

 エルナの言葉に、それまでお菓子に夢中になっていたリッカが不思議そうに顔を上げた。リッカの視線を感じつつ、エルナは話を続ける。

わたくしは、リッカさんよりも遅れている様ですから、個人的に練習を……」

 エルナはそう言って目を伏せる。ロレーヌはその言葉にため息を漏らした。
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