新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう

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新人魔女と楽しい貴族教育(3)

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 二人は静かに話に耳を傾けた。

「欲を言えば、階級社会がなくなるといいかしら。貴族も平民も誰もが平等に、誰もが貧しい思いをせず、楽しく暮らせる。そんな社会が理想ね」

 ミーナはそう言うと、ニコリと二人に笑いかける。その言葉にエルナが反応した。

「それは、貴族制度は必要ないと言う事ですか?」
「いいえ、現状では貴族制度は必要な物だと思います」

 エルナの問いにミーナはそう答える。

「では、どう言う……」

 エルナが更に問いかけようとした時、ミーナがそれを手で制する。そして言葉を続けた。

「……そうですね。例えば、リッカちゃんはこの社会での貴族の在り方についてどう思う?」

 突然の問いかけにリッカは驚くが、少し考えてから口を開いた。

「貴族の在り方、ですか……。そうですね……。やはり爵位を持っている以上はそれに見合った義務や責任があると思います」

 リッカの答えにミーナは頷く。

「そうよね」

 そして、話を続けた。

「ではエルナ様、貴族が果たすべき義務や責任とは一体何でしょう?」

 ミーナはエルナに問いかける。エルナはさも当たり前だと言わんばかりに答えた。

「貴族の責任は、民の幸福を守ること。民を守り導く事が貴族の義務だとわたくしは考えます」

 ミーナはエルナの言葉を聞き、笑顔で頷く。

「ええ、わたくしもそう思います。それが出来る貴族ばかりならば、このままの階級社会であっても良いと思うのです。しかし、今の貴族の在り方は、民を幸福に導くにはそぐわないと思うのです」
「それは……」

 ミーナの言葉にエルナが更に問いかけようとすると、ミーナは再度手で制した。

「本来ならば、平民を庇護すべき立場の者が、我が物顔で権力を振り翳す。今は、そんな貴族ばかりです。そして割を食うのは平民達。だったら、そんな階級社会はなくしてしまった方が良いと思うのです」

 ミーナはそこまで言うと、一口お茶を啜り言葉を続けた。

「……だからと言って一足飛びに階級制度をなくしてしまえば、国に混乱が訪れてしまいます。私達平民側にも、貴族に管理され、貴族に依存しなくては生きていけないという意識が根付いているからです。多少の理不尽は飲み込んで生活する。平民側のそう言った意識の改革もする必要があるでしょう」

 ミーナは少し表情を曇らせた。そして話を続ける。

「長く植え付けられた意識を変えるには、それと同じくらい長い年月がかかるでしょう。急いては事を仕損じる。急な改革は、国に混乱を招くだけですからね」
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