217 / 364
新人魔女と楽しい貴族教育(1)
しおりを挟む
「ミーナさん、おはようございます」
「おはようございます。ミーナ先生」
ミーナの店が貴族教育の場として相応しいかどうかを議論した翌日、ロレーヌは馬車でリッカとエルナを店に送り届けた。
「おはようございます、お嬢様方」
ミーナはそう言いながら胸に手を当てて一礼する。そして顔をあげると言葉を続ける。
「本日はご来店、ありがとうございます」
そう言うと、リッカとエルナの顔を見て笑顔を見せた。
「それでは早速ですが、お勉強を始めましょう」
「はい! お願いします」
ミーナの言葉にリッカは元気よく返事をした。エルナは初めて来たミーナの店の様子を興味深そうに眺め、周囲の商品にも目を向ける。その様子を見たミーナはエルナに声をかけた。
「リッカ様は何度かこちらへお越しですけれど、エルナ様は初めてですね。もしよろしければ店の中を案内させていただきましょうか? ……と言っても、それほど広くはないのですけれど」
「え? 宜しいのですか?」
エルナはミーナの言葉に少し驚く。
「もちろんです。市場調査をする事は、経済発展を考える上でとても重要な事ですからね」
ミーナはそう言うとイタズラっぽくエルナに笑いかけた。笑みを向けられたエルナは途端に顔を赤く染める。
「あれは……なんとかリッカさんの力になりたくて……」
エルナの言い訳じみた言葉にミーナは笑って答える。
「ふふ、分かっておりますよ。それでもエルナ様ご自身も経済発展や市場調査の重要性を感じておられるから、あの様に仰られたのでしょう?」
ミーナの言葉にエルナは小さく頷く。
「ご立派な事だと思います。しっかりと先のことを考えておられて。ロレーヌ様もそのことがお分かりになったからこそ、こうして邸の外で学ぶ事をお許しになられたのだと思いますよ」
「そうでしょうか? 私、無理を言ってミーナ先生や母を困らせてしまったのではと、気にしていたのです」
そこへ二人の様子を側で見ていたリッカが、会話に割り込む。
「わたしやリゼさんに比べたら、お姉様の我儘なんて大したことないですよ。それに今回の事は、わたしが言い出したんです。お姉様は後押ししてくれただけですから、我儘でも何でもないです」
リッカがそう言うと、エルナに笑みが戻る。
「何故そこでネージュ様のお名前が出てくるのです?」
「だってリゼさんってば、この前も……」
リッカが調子に乗って何かを話し出そうと口を開きかけた時、それを遮る様にパンパンと手が打ち鳴らされた。
「おはようございます。ミーナ先生」
ミーナの店が貴族教育の場として相応しいかどうかを議論した翌日、ロレーヌは馬車でリッカとエルナを店に送り届けた。
「おはようございます、お嬢様方」
ミーナはそう言いながら胸に手を当てて一礼する。そして顔をあげると言葉を続ける。
「本日はご来店、ありがとうございます」
そう言うと、リッカとエルナの顔を見て笑顔を見せた。
「それでは早速ですが、お勉強を始めましょう」
「はい! お願いします」
ミーナの言葉にリッカは元気よく返事をした。エルナは初めて来たミーナの店の様子を興味深そうに眺め、周囲の商品にも目を向ける。その様子を見たミーナはエルナに声をかけた。
「リッカ様は何度かこちらへお越しですけれど、エルナ様は初めてですね。もしよろしければ店の中を案内させていただきましょうか? ……と言っても、それほど広くはないのですけれど」
「え? 宜しいのですか?」
エルナはミーナの言葉に少し驚く。
「もちろんです。市場調査をする事は、経済発展を考える上でとても重要な事ですからね」
ミーナはそう言うとイタズラっぽくエルナに笑いかけた。笑みを向けられたエルナは途端に顔を赤く染める。
「あれは……なんとかリッカさんの力になりたくて……」
エルナの言い訳じみた言葉にミーナは笑って答える。
「ふふ、分かっておりますよ。それでもエルナ様ご自身も経済発展や市場調査の重要性を感じておられるから、あの様に仰られたのでしょう?」
ミーナの言葉にエルナは小さく頷く。
「ご立派な事だと思います。しっかりと先のことを考えておられて。ロレーヌ様もそのことがお分かりになったからこそ、こうして邸の外で学ぶ事をお許しになられたのだと思いますよ」
「そうでしょうか? 私、無理を言ってミーナ先生や母を困らせてしまったのではと、気にしていたのです」
そこへ二人の様子を側で見ていたリッカが、会話に割り込む。
「わたしやリゼさんに比べたら、お姉様の我儘なんて大したことないですよ。それに今回の事は、わたしが言い出したんです。お姉様は後押ししてくれただけですから、我儘でも何でもないです」
リッカがそう言うと、エルナに笑みが戻る。
「何故そこでネージュ様のお名前が出てくるのです?」
「だってリゼさんってば、この前も……」
リッカが調子に乗って何かを話し出そうと口を開きかけた時、それを遮る様にパンパンと手が打ち鳴らされた。
2
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
側妃を迎えたいと言ったので、了承したら溺愛されました
ひとみん
恋愛
タイトル変更しました!旧「国王陛下の長い一日」です。書いているうちに、何かあわないな・・・と。
内容そのまんまのタイトルです(笑
「側妃を迎えたいと思うのだが」国王が言った。
「了承しました。では今この時から夫婦関係は終了という事でいいですね?」王妃が言った。
「え?」困惑する国王に彼女は一言。「結婚の条件に書いていますわよ」と誓約書を見せる。
其処には確かに書いていた。王妃が恋人を作る事も了承すると。
そして今更ながら国王は気付く。王妃を愛していると。
困惑する王妃の心を射止めるために頑張るヘタレ国王のお話しです。
ご都合主義のゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる