新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう

文字の大きさ
上 下
187 / 461

新人魔女の休職相談(3)

しおりを挟む
「やめえや。そないにいけずな言い方をせんでええやろ。あんたも気にすることないで。リゼラルブは、エルナ・オルソイが居らんようになって、ちぃと寂しいだけやから」
「グリム、何を言っている! 余計なことを言うな!」

 リゼが大きな声を出すと、グリムはケタケタと笑う。リゼとグリムは基本淡々としているので、これまでリッカは言い争いをしているところなど見たことがなかった。珍しすぎる光景に呆気に取られてしまう。

 リゼが一つ咳払いをしてから続けた。

「良いか? 確かに私は君を雇っているし、他の者よりは気を許しているかも知れぬ。だが、最低限の礼儀は弁えろ」

 リゼの言葉にリッカは何も言えず黙り込んでしまう。実際、最初の頃よりもリゼとの距離は縮まったように思う。それなりに上手くやれていると思っていた。しかし、ピシャリと言い放たれ、リゼとの関係が良好だと思っていたのは、自分の勝手な思い込みに過ぎなかったのだと、リッカはさらに気持ちが重たくなる。

「すみません……」

 リッカはシュンと首を垂れて、再び謝った。その声は、消え入りそうなほどに小さい。そんなリッカを見て、リゼは深々とため息を吐く。

 リッカがしょぼんとしていると、リゼは再びため息を零す。しばし二人の間に沈黙が流れる。やがて、いやに陽気な声でグリムが二人の間に割り込んで来た。

「今までが浮かれすぎやったんや。このいけずな対応が本来のリゼラルブやから、気にすることあらへん。軽く聞き流しておけばええんや」

 グリムが再びリッカに助言すると、リゼは「うるさい」とグリムを睨む。

「全く……なんておしゃべりな奴なんだ」

 リゼがむすっとした様子で言うと、グリムはケタケタと笑って返す。

 リッカがそんな二人のやり取りを見ていると、リゼがコホンと一つ咳払いをした。そして、何事もなかったかのようにリッカに告げる。

「とにかく、今後素材の保管は個人の責任で行うように」
「はい……申し訳ありませんでした」

 リッカが申し訳なさそうに謝ると、リゼは気まずそうな顔をする。そして再び息を吐いた。

「……もう良い」

 リゼは面倒くさくなったのか、この話は終いだとでも言うように、手をヒラヒラと振る。リッカは最後にもう一度反省の意を込めて深く頭を下げた。それから顔を上げると、おずおずとリゼに尋ねる。

「あ、あの。それでエルナさんが居ないというのは……」

 リゼはチラリと横目でリッカを見ると、ため息交じりでこう告げたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...