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新人魔女の疲れる休日(4)
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父の呆れたような声にリッカは目を伏せた。
「申し訳ありませんでした。ですが、当初の予定は違ったのです。本当は、わたしが魔力暴発を起こす予定で……」
リッカの告白に、父が目を見張る。
「ま、魔力暴発だと!? お前は一体何を考えているんだ! そんなことをしでかしてみろ。一体どうなっていた事か。陛下やリゼラルブ様を危険に晒すつもりだったのかっ!」
父が烈火の如く怒り出す。リッカはその剣幕に首をすくめた。慌てて言い訳を口にする。
「ふ、フリです。フリ。魔道具を使って魔力暴発を起こしている様に見せかける、という計画だったのです。魔力暴発を起こすほどの魔力持ちならば、リゼさんの婚約者から外れるだろうからと……」
「フリだと!? 恐れ多くも陛下を謀るつもりだったと言うことか!? 一体何を考えているのだ! お前は!」
父の怒りは収まるどころか、ますますヒートアップした。リッカは縮こまるばかりだ。実際には魔道具は使用しなかったので、陛下を欺いたわけではないというのに。それを口にしたところで火に油を注ぐようなものだろう。リッカが口を噤んでいると、父の雷が再び落ちる。
「リッカ! お前はその歳になっても善悪の分別もつかないのか! 全く……スヴァルト家の次期当主が聞いて呆れる!」
リッカは項垂れるしかなかった。父の怒りが収まる気配は一向にない。
(……悔しい)
いつもこうだ。何も言わせてもらえないまま言いくるめられておしまいだ。リッカは唇を噛み締めた。リッカが何も言えずに項垂れていると、見かねた母が助け船を出してくれた。
「あなた。そのくらいにしてください。リッカも反省しているでしょうから」
「だがな、お前……。リッカは事もあろうに陛下を謀ろうと……」
「だからといって、あまり怒ってばかりいるとこの子が萎縮してしまいますよ? 今回は未遂で済んだのですから、もう良いではありませんか」
母が宥める様に言うが、父は渋い顔のままだ。
「……全く……。リッカ、お前はエルナと一緒にもう一度貴族教育を受け直す事だ」
「……はい……」
父の言いつけに、リッカは小さく返事をする。
「それで、その皇太子妃はいつ頃こちらに来るのだ?」
「ああ。それは、たぶん明日には。あちらも色々と片付けがあるだろうから」
父の問いに答えた母はやはり上機嫌でお茶を口にする。
「しかし、ずっと上機嫌だな?」
「あら、そうかしら? でも、そうね。娘が一人増えるんですもの。楽しみに決まっているわ」
「申し訳ありませんでした。ですが、当初の予定は違ったのです。本当は、わたしが魔力暴発を起こす予定で……」
リッカの告白に、父が目を見張る。
「ま、魔力暴発だと!? お前は一体何を考えているんだ! そんなことをしでかしてみろ。一体どうなっていた事か。陛下やリゼラルブ様を危険に晒すつもりだったのかっ!」
父が烈火の如く怒り出す。リッカはその剣幕に首をすくめた。慌てて言い訳を口にする。
「ふ、フリです。フリ。魔道具を使って魔力暴発を起こしている様に見せかける、という計画だったのです。魔力暴発を起こすほどの魔力持ちならば、リゼさんの婚約者から外れるだろうからと……」
「フリだと!? 恐れ多くも陛下を謀るつもりだったと言うことか!? 一体何を考えているのだ! お前は!」
父の怒りは収まるどころか、ますますヒートアップした。リッカは縮こまるばかりだ。実際には魔道具は使用しなかったので、陛下を欺いたわけではないというのに。それを口にしたところで火に油を注ぐようなものだろう。リッカが口を噤んでいると、父の雷が再び落ちる。
「リッカ! お前はその歳になっても善悪の分別もつかないのか! 全く……スヴァルト家の次期当主が聞いて呆れる!」
リッカは項垂れるしかなかった。父の怒りが収まる気配は一向にない。
(……悔しい)
いつもこうだ。何も言わせてもらえないまま言いくるめられておしまいだ。リッカは唇を噛み締めた。リッカが何も言えずに項垂れていると、見かねた母が助け船を出してくれた。
「あなた。そのくらいにしてください。リッカも反省しているでしょうから」
「だがな、お前……。リッカは事もあろうに陛下を謀ろうと……」
「だからといって、あまり怒ってばかりいるとこの子が萎縮してしまいますよ? 今回は未遂で済んだのですから、もう良いではありませんか」
母が宥める様に言うが、父は渋い顔のままだ。
「……全く……。リッカ、お前はエルナと一緒にもう一度貴族教育を受け直す事だ」
「……はい……」
父の言いつけに、リッカは小さく返事をする。
「それで、その皇太子妃はいつ頃こちらに来るのだ?」
「ああ。それは、たぶん明日には。あちらも色々と片付けがあるだろうから」
父の問いに答えた母はやはり上機嫌でお茶を口にする。
「しかし、ずっと上機嫌だな?」
「あら、そうかしら? でも、そうね。娘が一人増えるんですもの。楽しみに決まっているわ」
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