116 / 364
新人魔女とわがまま師匠(4)
しおりを挟む
頑なな姉の姿に即位直後の不安定さを感じたリゼは、姉を安心させるべく提案された婚姻を了承したと言う。但し、もう一人の当事者となる宰相の娘が承諾したらという条件付きで。その相手とはもちろんリッカのことだ。リゼが危惧したエルナの帰任については、婚姻が決まれば何かと慌ただしくなるので、もうしばらくリゼの元に居させるとのことだった。
リゼの説明を受け、リッカは、はぁと曖昧な相槌を打った。その後はリッカも知る通りリゼから婚姻の話を聞き、色々と葛藤した挙げ句、納得した上で婚姻を了承したのだが、その婚姻話は、目の前にいる元凶者によって翻されてしまった。
「それでどうして、エルナさんの養女の話になるのですか?」
リゼの説明を聞いてもリッカにはさっぱり分からない。リゼが自身の気持ちを押し殺し政略結婚を受け入れようとしたことは、上級貴族としては理解できる。しかし、それがどうしてエルナを養女にという話になるのか。リッカは首を傾げるばかりである。
リゼはそんなリッカに、深く深くため息を吐くと、面倒くさそうに言い放った。
「君のせいだ」
リッカは目を丸くする。
「わ、わたしのせいですか?!」
どうにも話が見えないという顔のリッカに、一つ咳払いをした後、リゼは渋々といった様子で口を開いた。
「君がエルナさんの気持ちを聞き出してしまったから……」
「……ネージュ様」
尻すぼみになったリゼの言葉は、リゼの隣で真っ赤な顔をして立っているエルナのため息にも似た呼びかけに遮られた。
リゼはエルナをちらりと見ると、すぐにリッカに視線を戻す。そしてもう一度場を取り繕うように咳払いをすると、何かを諦めたようにぽつりぽつりと話し始める。
「君の計画を一晩私なりに考えたのだ。果たしてそれが最善の策なのか。私は一度君の提案を受け入れた。しかし、考えれば考えるほど欲が出てきた」
「欲……ですか?」
リッカにはリゼの真意が見えない。リゼはそんなリッカに、居心地が悪そうに顔を顰めて話を続ける。
「エルナさんを娶りたい。私の本心を君が掘り起こしてしまったのだ。だが、エルナさんは姉上の侍女。私は王位継承権が無いとはいえ皇子。王家との婚姻など、エルナさんの今の身分では周りが納得しないだろう」
リゼは軽く目を伏せると、苦々しく言葉を吐き出した。
「エルナさんが今も爵位の身にあれば……貴族の身分でさえあれば……私はそう望んでしまったのだ」
リッカはようやく合点がいった。
リゼの説明を受け、リッカは、はぁと曖昧な相槌を打った。その後はリッカも知る通りリゼから婚姻の話を聞き、色々と葛藤した挙げ句、納得した上で婚姻を了承したのだが、その婚姻話は、目の前にいる元凶者によって翻されてしまった。
「それでどうして、エルナさんの養女の話になるのですか?」
リゼの説明を聞いてもリッカにはさっぱり分からない。リゼが自身の気持ちを押し殺し政略結婚を受け入れようとしたことは、上級貴族としては理解できる。しかし、それがどうしてエルナを養女にという話になるのか。リッカは首を傾げるばかりである。
リゼはそんなリッカに、深く深くため息を吐くと、面倒くさそうに言い放った。
「君のせいだ」
リッカは目を丸くする。
「わ、わたしのせいですか?!」
どうにも話が見えないという顔のリッカに、一つ咳払いをした後、リゼは渋々といった様子で口を開いた。
「君がエルナさんの気持ちを聞き出してしまったから……」
「……ネージュ様」
尻すぼみになったリゼの言葉は、リゼの隣で真っ赤な顔をして立っているエルナのため息にも似た呼びかけに遮られた。
リゼはエルナをちらりと見ると、すぐにリッカに視線を戻す。そしてもう一度場を取り繕うように咳払いをすると、何かを諦めたようにぽつりぽつりと話し始める。
「君の計画を一晩私なりに考えたのだ。果たしてそれが最善の策なのか。私は一度君の提案を受け入れた。しかし、考えれば考えるほど欲が出てきた」
「欲……ですか?」
リッカにはリゼの真意が見えない。リゼはそんなリッカに、居心地が悪そうに顔を顰めて話を続ける。
「エルナさんを娶りたい。私の本心を君が掘り起こしてしまったのだ。だが、エルナさんは姉上の侍女。私は王位継承権が無いとはいえ皇子。王家との婚姻など、エルナさんの今の身分では周りが納得しないだろう」
リゼは軽く目を伏せると、苦々しく言葉を吐き出した。
「エルナさんが今も爵位の身にあれば……貴族の身分でさえあれば……私はそう望んでしまったのだ」
リッカはようやく合点がいった。
2
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
こうやさい
ファンタジー
わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。
これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。
義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。
とりあえずお兄さま頑張れ。
PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。
やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
側妃を迎えたいと言ったので、了承したら溺愛されました
ひとみん
恋愛
タイトル変更しました!旧「国王陛下の長い一日」です。書いているうちに、何かあわないな・・・と。
内容そのまんまのタイトルです(笑
「側妃を迎えたいと思うのだが」国王が言った。
「了承しました。では今この時から夫婦関係は終了という事でいいですね?」王妃が言った。
「え?」困惑する国王に彼女は一言。「結婚の条件に書いていますわよ」と誓約書を見せる。
其処には確かに書いていた。王妃が恋人を作る事も了承すると。
そして今更ながら国王は気付く。王妃を愛していると。
困惑する王妃の心を射止めるために頑張るヘタレ国王のお話しです。
ご都合主義のゆるゆる設定です。
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる