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新人魔女の魔道具製作(1)

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 リッカは水晶の洞窟へとやって来ていた。目的は特にない。

 フェンの能力測定をした後、今日は急ぎの仕事がないため、好きに過ごせとリゼから言われた。少し混乱していたリッカは、静かな所へ行きたいと思いここへ来た。

 洞窟へ一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気が頬を撫でる。静かだ。聞こえる音と言えば自分の息遣いくらいだろう。

 奥の方へ進むにつれ、壁や天井には光苔と呼ばれる発光するコケ類が生えており、徐々に視界が明るくなる。

 そうして辿り着いた場所は、天井から光が差し込む神秘的な空間。地面のところどころから水晶が生えており、そこから発せられる光で、まるで宝石箱の中にいるかのようだ。

(やっぱりここは落ち着くな)

 自然と口元に笑みを浮かべたリッカは、壁に寄りかかりながら座り込んだ。

(……リゼさんのあの言葉は、どう言う意味なのかな?)

 ふいに浮かんできた疑問。リゼは、使い魔であるグリムとフェンが違うと言った。その違いとは一体何なのだろうか。

 確かに、使い魔だからといって皆が同じ能力を持っているわけではないだろう。個体差だってあるはずだ。リッカは改めて考える。

 しかし、いくら考えても答えが出るはずもなく、時間だけが過ぎていく。考えがまとまらず、だんだん思考が鈍くなってきた頃だった。

 クゥンと控えめな鳴き声と共に、足下にモフッとした感触を覚える。ゆっくりと視線を下げるとそこには、心配そうにリッカを見上げるフェンの姿があった。

 そこでようやく、自分が思考の海に沈んでいたことに気が付いた。慌てて顔を上げ、笑顔を作る。そして優しくフェンを抱き上げた。

 そのまま膝の上に乗せると、背中をゆっくり撫でる。フェンを撫でているうちに心が落ち着いてくる。リッカの表情の変化を見てとったのか、フェンが遠慮がちに口を開いた。

「リッカ様。僕は、先ほど何か失敗したのでしょうか?」

 不安げな声色で尋ねてくるフェンに対し、首を横に振ることで否定を示す。それを見たフェンはホッとした様子を見せた後、再び質問を口にした。

「では、どうしてリッカ様は難しいお顔をされていたのですか?」

 今度はすぐに答えることができなかった。なぜなら、自分の中で明確な答えが出ていなかったからだ。

 正直に話せば、師匠の使い魔であるグリムとフェンが違うというリゼの言葉が、リッカの心に引っかかっているのだ。使い魔にだって個体差はある、そう思うのに、なぜか釈然としない気持ちが残る。
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