72 / 404
新人魔女に届いた蜂蜜色の丸薬(8)
しおりを挟む
リッカはそこまで書いて、一度筆を止めた。新人魔女のリッカは、まだ社会に出たばかり。こういう時にどのような文章を書くべきなのか、よく分からなかった。仕方がないので、リッカは、なるべく簡潔に書くことにした。
“お薬代については、お仕事へ行った際にお聞かせください”
書き終えると、自分の書いた手紙を二度読み返し、リッカは大きく深呼吸をした。それほど失礼な文章ではないだろう。
リッカは、白フクロウの足に手紙をくくりつけた。
「お願いね」
リッカはそう言い、窓を開ける。白フクロウはバサリと翼を広げ、窓から外へ飛び立った。雨はいつのまにか止んでいるようだった。
リッカは、遠ざかっていく白フクロウの姿をいつまでも見送っていた。
「あの鳥は、リッカ様の手紙をちゃんとリゼラルブ様に届けるでしょうか? 僕が行った方が良かったのではありませんか?」
リッカの使い魔であるフェンが心配そうな声でそう言う。リッカは窓を閉めると、その頭を撫で、大丈夫だよ、と言った。
「だって、あの大賢者、ネージュ・マグノリアが使役している子だよ? ちゃんとリゼさんに届けてくれるよ」
リッカはそう言って微笑んだ。フェンはその言葉を聞いて、ハッと息を飲む。それから、シュンと項垂れた。リッカはそんなフェンの様子を見て首を傾げる。
「どうしたの?」
尋ねると、フェンは申し訳なさげな表情を浮かべ、小さく呟いた。
「申し訳ありません。リッカ様が尊敬されているリゼラルブ様に……僕はなんて無礼なことを言ってしまったんでしょう」
リッカはそんなフェンの姿を見て、思わず笑みがこぼれた。ベッドに腰掛けるとフェンを膝の上に抱き上げる。
「気にしない気にしない! 誰も聞いていなかったから、大丈夫」
リッカはそう言って、フェンの背中を優しく撫でた。フェンはリッカの顔を見上げ、リッカが怒っていないことに安堵したのか、ホッとしたように息を吐き、嬉しそうに目を細めた。
リッカはフェンを撫でながら、改めて窓の外へ目を向ける。
「でもね、リゼさんは本当にすごい人なんだよ。わたしはいつか、あの人のようなすごい魔法の使い手になりたいって思っているの。リゼさんを追い越すことは無理でも、せめて、国一番の魔女と言われるようになりたい」
リッカは力強くそう言った。それから、ぐっと伸びをするように腕を伸ばす。そして、フェンを抱いたままベッドから立ち上がる。
「そのためにも、まずは魔力回復薬を作らなくちゃね」
“お薬代については、お仕事へ行った際にお聞かせください”
書き終えると、自分の書いた手紙を二度読み返し、リッカは大きく深呼吸をした。それほど失礼な文章ではないだろう。
リッカは、白フクロウの足に手紙をくくりつけた。
「お願いね」
リッカはそう言い、窓を開ける。白フクロウはバサリと翼を広げ、窓から外へ飛び立った。雨はいつのまにか止んでいるようだった。
リッカは、遠ざかっていく白フクロウの姿をいつまでも見送っていた。
「あの鳥は、リッカ様の手紙をちゃんとリゼラルブ様に届けるでしょうか? 僕が行った方が良かったのではありませんか?」
リッカの使い魔であるフェンが心配そうな声でそう言う。リッカは窓を閉めると、その頭を撫で、大丈夫だよ、と言った。
「だって、あの大賢者、ネージュ・マグノリアが使役している子だよ? ちゃんとリゼさんに届けてくれるよ」
リッカはそう言って微笑んだ。フェンはその言葉を聞いて、ハッと息を飲む。それから、シュンと項垂れた。リッカはそんなフェンの様子を見て首を傾げる。
「どうしたの?」
尋ねると、フェンは申し訳なさげな表情を浮かべ、小さく呟いた。
「申し訳ありません。リッカ様が尊敬されているリゼラルブ様に……僕はなんて無礼なことを言ってしまったんでしょう」
リッカはそんなフェンの姿を見て、思わず笑みがこぼれた。ベッドに腰掛けるとフェンを膝の上に抱き上げる。
「気にしない気にしない! 誰も聞いていなかったから、大丈夫」
リッカはそう言って、フェンの背中を優しく撫でた。フェンはリッカの顔を見上げ、リッカが怒っていないことに安堵したのか、ホッとしたように息を吐き、嬉しそうに目を細めた。
リッカはフェンを撫でながら、改めて窓の外へ目を向ける。
「でもね、リゼさんは本当にすごい人なんだよ。わたしはいつか、あの人のようなすごい魔法の使い手になりたいって思っているの。リゼさんを追い越すことは無理でも、せめて、国一番の魔女と言われるようになりたい」
リッカは力強くそう言った。それから、ぐっと伸びをするように腕を伸ばす。そして、フェンを抱いたままベッドから立ち上がる。
「そのためにも、まずは魔力回復薬を作らなくちゃね」
2
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる