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新人魔女と師匠の静かなる時間(8)

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 リッカの返事を聞くと、リゼラルブは少し安堵したように表情を和らげた。そして、すぐに厳しい顔つきに戻り、言葉を続けた。

「必要な物はこちらで既に用意した。君の準備が済み次第、すぐに始める」
「はい!」

 そうしてリッカは早速準備に取り掛かった。まずは体を清め、リゼラルブがリッカのために用意してくれた儀式用の祭服に身を包む。

 身支度を整えると、リゼラルブと共に王都の外れにある墓所へと向かった。そこは、代々の王や王族たちが眠る場所であり、歴代の大賢者たちも眠っている。

 墓所は静寂に包まれていた。風もなく、木々や草花も音を立てない。まるで時が止まっているかのような錯覚を覚えるほどだった。

 リッカは緊張しながら墓所の中へと足を踏み入れた。そんなリッカに、リゼラルブは淡々と告げる。

「君は魔力の補佐をしてくれればいい。手順は私が指示をするから、それに従ってくれ」
「は、はい」

 リッカは固めに頷く。

「それから、これを」

 リゼラルブは懐から羊皮紙を取り出した。

「これは?」
「詠唱の文言だ。私が指示をしたら読み上げてくれ」
「わ、わかりました」

 リッカは受け取った羊皮紙の文面に目を滑らせたあと、ごくりと唾を飲み込んだ。

「では始める」
「はい」

 リッカは静かに深呼吸をして、気持ちを落ち着けた。リゼラルブが天に向かって手を掲げる。そして、厳かに言葉を紡ぎ始めた。リッカも全力でリゼラルブに倣う。

「亭亭たる天よ。どうか我らが王を受け容れ給え」

 リゼラルブの声が静かな墓所に響く。

「我、ここに願う。御身光となりて、永に我らを導き給え」

 その言葉が終わると同時に、天が眩しいほどの輝きに満ちていく。詠唱はまだ続く。

「その魂、永久に輪廻を巡り、再びこの地に舞い戻り給え」

 最後の一節が唱えられると、眩しいほどの光が次々と空から地上へと降り注ぐ。それは、さながら光の雨のようだった。

 幻想的な光景に言葉もなく空を見上げていたリッカだったが、ふと隣を見ると、天を見上げるリゼラルブの瞳から、はらはらと涙が零れるのが見えた。その姿は、あまりにも美しく、一瞬見惚れてしまった。だが、慌てて視線を逸らす。別れの時を邪魔しないよう、リッカは黙ってリゼラルブに寄り添った。

 やがて光が収まると、リゼラルブはリッカにいつも通りの調子で言う。

「これで終わりだ。帰るぞ」

 そう言って、少し先を歩き出したリゼラルブの髪色は、いつの間にか銀髪へと変わっていた。

 間もなく夜が明ける。
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