上 下
24 / 433

新人魔女と精霊のペンダント(8)

しおりを挟む
 エルナが尋ねると、リッカは得意げに説明を始めた。

「この水晶は魔力の結晶体です。周りの環境から、きっとあるだろうと思っていましたが、普通の物よりかなり純度が高そうです。これを使えばいい物が作れると思いますよ」
「作る?」
「わたしも魔女の端くれです。エルナさんのために、魔術道具を一つ錬成させてくれませんか?」

 リッカは屈託のない笑みを浮かべて言った。

「リッカ様……」

 エルナはリッカの顔を見る。そして、深々と頭を下げた。

「ありがとうございます」
「いえ、そんな。リゼさんほどの腕はありませんが、わたしなりに精一杯を尽くしますね」

 リッカはそう言って微笑んだ。

 それからリッカは早速作業に取り掛かった。まずは、水晶の中から透明度の高そうなものを選ぶ。次に木切れで地面にサラリと魔法陣を描きつけた。

「すみません。エルナさんがいつも身につけている物はありますか? 触媒にしたいのですが」
「これでよろしいですか?」

 エルナは、首から下げていたペンダントを外してリッカに手渡した。

「はい、充分です」

 リッカはそれと水晶を丁寧に魔法陣に並べると、その上に手をかざした。すると、淡い緑色の光が浮かんできた。それは次第に強くなり、洞窟の中が優しい緑色に包まれる。

「〈精霊の加護セイレンナカーゴ〉」

 リッカが呟くと、光がさらに輝きを増した。その光景はとても幻想的で、エルナはその美しさに思わず見惚れてしまった。

 やがて光が収まると、リッカはふうっと息を吐いた。

「終わりました」
「えっ?」

 エルナが聞き返すと、リッカはニッコリと笑って言った。

「完成しました。はい、どうぞ」

 リッカは出来上がったばかりの品物をエルナに手渡す。ペンダントは、先程よりも一回り大きくなっていた。エルナがそれを手に取ってじっと見つめていると、リッカが言った。

「ペンダントに精霊の加護を付与しました。このペンダントを身につけていれば、エルナさんの忘れ物を精霊が教えてくれるはずです」
「えっ!?」

 エルナが驚いて顔を上げると、リッカは悪戯っぽく笑った。

「あ、ほら」

 エルナがペンダントへ視線を戻すと、石の部分が淡く光り波紋が広がっていった。そして、そこにぼんやりと映像が映し出された。

「あ……鞄……」

 そこにはエルナの鞄が映っていた。どうやら工房に置き忘れてきていたようだ。

「と、とりあえず使えそうですね」

 二人は何とも言えない表情で顔を見合わせる。

 その後、二人は森を出て慌てて工房へ戻ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。

新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

隠された第四皇女

山田ランチ
ファンタジー
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた エアコンまとめ

エアコン
恋愛
冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた とエアコンの作品色々

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...