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新人魔女と精霊のペンダント(8)
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エルナが尋ねると、リッカは得意げに説明を始めた。
「この水晶は魔力の結晶体です。周りの環境から、きっとあるだろうと思っていましたが、普通の物よりかなり純度が高そうです。これを使えばいい物が作れると思いますよ」
「作る?」
「わたしも魔女の端くれです。エルナさんのために、魔術道具を一つ錬成させてくれませんか?」
リッカは屈託のない笑みを浮かべて言った。
「リッカ様……」
エルナはリッカの顔を見る。そして、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「いえ、そんな。リゼさんほどの腕はありませんが、わたしなりに精一杯を尽くしますね」
リッカはそう言って微笑んだ。
それからリッカは早速作業に取り掛かった。まずは、水晶の中から透明度の高そうなものを選ぶ。次に木切れで地面にサラリと魔法陣を描きつけた。
「すみません。エルナさんがいつも身につけている物はありますか? 触媒にしたいのですが」
「これでよろしいですか?」
エルナは、首から下げていたペンダントを外してリッカに手渡した。
「はい、充分です」
リッカはそれと水晶を丁寧に魔法陣に並べると、その上に手をかざした。すると、淡い緑色の光が浮かんできた。それは次第に強くなり、洞窟の中が優しい緑色に包まれる。
「〈精霊の加護〉」
リッカが呟くと、光がさらに輝きを増した。その光景はとても幻想的で、エルナはその美しさに思わず見惚れてしまった。
やがて光が収まると、リッカはふうっと息を吐いた。
「終わりました」
「えっ?」
エルナが聞き返すと、リッカはニッコリと笑って言った。
「完成しました。はい、どうぞ」
リッカは出来上がったばかりの品物をエルナに手渡す。ペンダントは、先程よりも一回り大きくなっていた。エルナがそれを手に取ってじっと見つめていると、リッカが言った。
「ペンダントに精霊の加護を付与しました。このペンダントを身につけていれば、エルナさんの忘れ物を精霊が教えてくれるはずです」
「えっ!?」
エルナが驚いて顔を上げると、リッカは悪戯っぽく笑った。
「あ、ほら」
エルナがペンダントへ視線を戻すと、石の部分が淡く光り波紋が広がっていった。そして、そこにぼんやりと映像が映し出された。
「あ……鞄……」
そこにはエルナの鞄が映っていた。どうやら工房に置き忘れてきていたようだ。
「と、とりあえず使えそうですね」
二人は何とも言えない表情で顔を見合わせる。
その後、二人は森を出て慌てて工房へ戻ったのだった。
「この水晶は魔力の結晶体です。周りの環境から、きっとあるだろうと思っていましたが、普通の物よりかなり純度が高そうです。これを使えばいい物が作れると思いますよ」
「作る?」
「わたしも魔女の端くれです。エルナさんのために、魔術道具を一つ錬成させてくれませんか?」
リッカは屈託のない笑みを浮かべて言った。
「リッカ様……」
エルナはリッカの顔を見る。そして、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「いえ、そんな。リゼさんほどの腕はありませんが、わたしなりに精一杯を尽くしますね」
リッカはそう言って微笑んだ。
それからリッカは早速作業に取り掛かった。まずは、水晶の中から透明度の高そうなものを選ぶ。次に木切れで地面にサラリと魔法陣を描きつけた。
「すみません。エルナさんがいつも身につけている物はありますか? 触媒にしたいのですが」
「これでよろしいですか?」
エルナは、首から下げていたペンダントを外してリッカに手渡した。
「はい、充分です」
リッカはそれと水晶を丁寧に魔法陣に並べると、その上に手をかざした。すると、淡い緑色の光が浮かんできた。それは次第に強くなり、洞窟の中が優しい緑色に包まれる。
「〈精霊の加護〉」
リッカが呟くと、光がさらに輝きを増した。その光景はとても幻想的で、エルナはその美しさに思わず見惚れてしまった。
やがて光が収まると、リッカはふうっと息を吐いた。
「終わりました」
「えっ?」
エルナが聞き返すと、リッカはニッコリと笑って言った。
「完成しました。はい、どうぞ」
リッカは出来上がったばかりの品物をエルナに手渡す。ペンダントは、先程よりも一回り大きくなっていた。エルナがそれを手に取ってじっと見つめていると、リッカが言った。
「ペンダントに精霊の加護を付与しました。このペンダントを身につけていれば、エルナさんの忘れ物を精霊が教えてくれるはずです」
「えっ!?」
エルナが驚いて顔を上げると、リッカは悪戯っぽく笑った。
「あ、ほら」
エルナがペンダントへ視線を戻すと、石の部分が淡く光り波紋が広がっていった。そして、そこにぼんやりと映像が映し出された。
「あ……鞄……」
そこにはエルナの鞄が映っていた。どうやら工房に置き忘れてきていたようだ。
「と、とりあえず使えそうですね」
二人は何とも言えない表情で顔を見合わせる。
その後、二人は森を出て慌てて工房へ戻ったのだった。
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