21 / 434
新人魔女と精霊のペンダント(5)
しおりを挟む
次の瞬間、羊皮紙は小さな光る鳥へと姿を変えると、そのまま羽ばたいて屋根に吸い込まれるようにして消えていった。おそらく、魔法を使って遠くに飛ばしたのだろう。リゼはリッカの知らない魔法を当たり前のように使う。
「これで大丈夫だ。請求しておいたので、そのうちに支払われるだろう」
その言葉を聞いたリッカは、ホッとしたように息を吐いた。これで本当に依頼完了だ。
「ネージュ様、ありがとうございました。私がしっかりとマリアンヌ様に伺ってきていれば、あなた様のお手を煩わせる事もなかったでしょうに……」
申し訳なさそうに頭を下げるエルナを見て、リゼは小さく首を横に振った。それから困り顔で微笑む。
「いえ、気にしないでください。それにしても……まさかエルナさんがこんなところまで来るなんて思ってもいませんでしたよ。せっかくですから、これからお茶でもいかがですか?」
リゼからの突然の提案に、エルナは目を丸くした。しかし、すぐにやんわりと断る。
「いえ……お茶は先ほどリッカ様に頂きましたので……。それに、ネージュ様は大変お疲れと伺っております。……どうかゆっくり休まれてください」
「えっ!? あぁ、まぁ確かにちょっと疲れていますけど、大丈夫ですよ」
「そうはいきません! お身体を壊したらどうなさるんですか!」
エルナが強い口調で言い放つ。それを見たリゼは、驚いたように目をパチクリさせた。そして、寂しげに肩を落とした。
「わかりました。では、お言葉に甘えて休むことにします」
リゼは素直に従うようだ。彼は肩をすくめながら、「エルナさんには敵わないな……」と呟いていた。それから、リゼはリッカの方へ向き直る。
「君の今日の予定は?」
急に話を振られたリッカは、ビクッと身を震わせた。
「えっと、特には……先日作ったヒヤシンの丸薬の乾燥状態を確認したら、山へ散策に行くつもりでした。天気も良いみたいだし……」
リッカが答えると、リゼは「なるほど」と言って、ニッコリと笑みを浮かべた。
「それなら、彼女を送って差し上げろ」
「はい?」
思わず聞き返す。リッカが困惑していると、隣にいたエルナが慌てた様子で口を開いた。
「そんな、リッカ様にもお仕事がありますでしょ! 私は一人でも大丈夫ですから」
エルナは必死で断るが、リゼはそれを遮るように人差し指を立てた。
「いいや、ダメです。あなたのような美しい女性が一人歩きなど、危険すぎます。もしあなたに何かあったら……」
「これで大丈夫だ。請求しておいたので、そのうちに支払われるだろう」
その言葉を聞いたリッカは、ホッとしたように息を吐いた。これで本当に依頼完了だ。
「ネージュ様、ありがとうございました。私がしっかりとマリアンヌ様に伺ってきていれば、あなた様のお手を煩わせる事もなかったでしょうに……」
申し訳なさそうに頭を下げるエルナを見て、リゼは小さく首を横に振った。それから困り顔で微笑む。
「いえ、気にしないでください。それにしても……まさかエルナさんがこんなところまで来るなんて思ってもいませんでしたよ。せっかくですから、これからお茶でもいかがですか?」
リゼからの突然の提案に、エルナは目を丸くした。しかし、すぐにやんわりと断る。
「いえ……お茶は先ほどリッカ様に頂きましたので……。それに、ネージュ様は大変お疲れと伺っております。……どうかゆっくり休まれてください」
「えっ!? あぁ、まぁ確かにちょっと疲れていますけど、大丈夫ですよ」
「そうはいきません! お身体を壊したらどうなさるんですか!」
エルナが強い口調で言い放つ。それを見たリゼは、驚いたように目をパチクリさせた。そして、寂しげに肩を落とした。
「わかりました。では、お言葉に甘えて休むことにします」
リゼは素直に従うようだ。彼は肩をすくめながら、「エルナさんには敵わないな……」と呟いていた。それから、リゼはリッカの方へ向き直る。
「君の今日の予定は?」
急に話を振られたリッカは、ビクッと身を震わせた。
「えっと、特には……先日作ったヒヤシンの丸薬の乾燥状態を確認したら、山へ散策に行くつもりでした。天気も良いみたいだし……」
リッカが答えると、リゼは「なるほど」と言って、ニッコリと笑みを浮かべた。
「それなら、彼女を送って差し上げろ」
「はい?」
思わず聞き返す。リッカが困惑していると、隣にいたエルナが慌てた様子で口を開いた。
「そんな、リッカ様にもお仕事がありますでしょ! 私は一人でも大丈夫ですから」
エルナは必死で断るが、リゼはそれを遮るように人差し指を立てた。
「いいや、ダメです。あなたのような美しい女性が一人歩きなど、危険すぎます。もしあなたに何かあったら……」
3
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる