16 / 364
新人魔女と不器用な師匠(8)
しおりを挟む
「ま、そういうことだ。こいつから聞いてなかったのか?」
「はい……、全く」
リッカの答えに、ジャックスは呆れ半分、怒り半分といった様子でリゼを見る。
「おいリゼ。お前、嬢ちゃんに何も言ってないのか?」
「特に言う必要を感じなかったのでな」
「あのなぁ……、良好な人間関係を保つことも雇用主の大事な勤めだぞ」
ジャックスはため息をつくと、リッカに向き合った。
「すまねぇな、嬢ちゃん。こいつは、その……不器用というか……人付き合いが下手というか……」
「いえ、わたしもリゼさんのことをよく知ろうとしなかったのが悪いと思うので」
「そう言ってくれて助かるぜ。じゃあ、改めて俺からこいつの紹介をしよう。こいつはリゼラルブ・ネージュ・マグノリアだ」
「リゼラルブ・ネージュ・マグノリア」
リッカは噛みしめるように言った。それからふと首を傾げる。その名前には聞き覚えがあった。どこで聞いたのだろうかと考えるうち、リッカの顔がみるみる強張った。
「あ、あの……ネージュって……ネージュ・マグノリアって言いました?」
恐る恐るリッカが尋ねると、リゼは静かにうなずいた。リッカは驚愕してワナワナと震えながら口を開く。
「あ、あなたが……あのマグノリア大賢者様なのですか!?」
「大賢者などと大層なものではない」
リゼはさも面倒くさそうに答える。
「で、でも、ネージュって、大賢者様の称号ですよね?」
困惑気味なリッカの言葉に、ジャックスは大きくうなずく。リゼはその言葉に、少しだけ顔をしかめた。
「私は私だというのに、肩書きが一体何だというのだ。くだらない」
リゼは不満げだった。
「く、くだらないって……」
まさか、これから師事しようとしている相手が伝説級の人物だったとは。緊張しないわけがない。リッカはゴクリと唾を飲み込む。
そんなリッカの心中を知ってか知らずか、ジャックスが話を進める。
「まぁなんだ、こいつがネージュなのは事実だ。とはいえ、本人も嫌がるから、今まで通り気軽に呼んでやってくれ。その方がこの男も喜ぶ」
「は、はい。わかりました……え?」
リッカはうなずきつつ、疑問の声を上げた。
「ん? どうかしたか?」
「えっと、今『この男』って……」
リッカは戸惑いがちに聞き返した。
「ああ、こいつは男だぞ」
ジャックスは事も無げに言った。
「えぇっ~! こんなに美人さんなのに!!」
リッカの失礼すぎるほどの驚きの声に、ジャックスがニヤリと笑い、リゼはフンと鼻を鳴らした。
「はい……、全く」
リッカの答えに、ジャックスは呆れ半分、怒り半分といった様子でリゼを見る。
「おいリゼ。お前、嬢ちゃんに何も言ってないのか?」
「特に言う必要を感じなかったのでな」
「あのなぁ……、良好な人間関係を保つことも雇用主の大事な勤めだぞ」
ジャックスはため息をつくと、リッカに向き合った。
「すまねぇな、嬢ちゃん。こいつは、その……不器用というか……人付き合いが下手というか……」
「いえ、わたしもリゼさんのことをよく知ろうとしなかったのが悪いと思うので」
「そう言ってくれて助かるぜ。じゃあ、改めて俺からこいつの紹介をしよう。こいつはリゼラルブ・ネージュ・マグノリアだ」
「リゼラルブ・ネージュ・マグノリア」
リッカは噛みしめるように言った。それからふと首を傾げる。その名前には聞き覚えがあった。どこで聞いたのだろうかと考えるうち、リッカの顔がみるみる強張った。
「あ、あの……ネージュって……ネージュ・マグノリアって言いました?」
恐る恐るリッカが尋ねると、リゼは静かにうなずいた。リッカは驚愕してワナワナと震えながら口を開く。
「あ、あなたが……あのマグノリア大賢者様なのですか!?」
「大賢者などと大層なものではない」
リゼはさも面倒くさそうに答える。
「で、でも、ネージュって、大賢者様の称号ですよね?」
困惑気味なリッカの言葉に、ジャックスは大きくうなずく。リゼはその言葉に、少しだけ顔をしかめた。
「私は私だというのに、肩書きが一体何だというのだ。くだらない」
リゼは不満げだった。
「く、くだらないって……」
まさか、これから師事しようとしている相手が伝説級の人物だったとは。緊張しないわけがない。リッカはゴクリと唾を飲み込む。
そんなリッカの心中を知ってか知らずか、ジャックスが話を進める。
「まぁなんだ、こいつがネージュなのは事実だ。とはいえ、本人も嫌がるから、今まで通り気軽に呼んでやってくれ。その方がこの男も喜ぶ」
「は、はい。わかりました……え?」
リッカはうなずきつつ、疑問の声を上げた。
「ん? どうかしたか?」
「えっと、今『この男』って……」
リッカは戸惑いがちに聞き返した。
「ああ、こいつは男だぞ」
ジャックスは事も無げに言った。
「えぇっ~! こんなに美人さんなのに!!」
リッカの失礼すぎるほどの驚きの声に、ジャックスがニヤリと笑い、リゼはフンと鼻を鳴らした。
3
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる