夏の大三角関係

田古みゆう

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 あの日から3年。これまでに2度、晴彦さんは夏の夜の月の無い時に、青い淡い光を放つ浜辺に姿を現した。今年もそろそろ会いにきてくれるはず。

 白鳥さんの言うように、私は少なからず期待をしてこの秘密基地へとやってきていた。けれど、不思議なことに、彼が姿を見せてくれるのは、月の無い時だけなのだ。今日のように明るい月夜に彼が姿を見せたことはこれまでない。

 夏が来たと言うのに、あの頃よりも少し冷静になりつつある自分に戸惑いながら、隣に座る白鳥さんをチラリと見る。相変わらずぼんやりと空を眺めている彼は、あの頃から何も変わらない。

 彼の取り乱した姿を見たのは、これまでに1度だけ。私が、淡い光を放つ晴彦さんに再会した時だけだ。

「晴彦さんがいたの」
「そんなわけない。しっかりするんだ、織ちゃん」
「本当に晴彦さんがいたのよ。今は、そばにいられないけど、必ず私のことを迎えに来てくれるって。それまでは、あいつの想いをって言っていたわ。でも、あいつって誰のことかしら?」
「そんな……まさか………だって、あいつが知るはず……」

 私の言葉を聞いた白鳥さんは珍しく、青白い顔をして取り乱していた。何故だか、海と丘の上の方を忙しなく見ていたっけ。

 何かを知っていそうな白鳥さんに、その後何度となく「あいつ」について尋ねたけれど、白鳥さんは、いつも、何も知らないと首を振る。初めのうちは、晴彦さんの姿さえも、私の勘違いだと強く否定していた。

 いつしか夏の夜に会える晴彦さんのことは否定しなくなったけれど、私がどんなに誘っても、白鳥さんは私たちの邪魔はしたくないと言って、晴彦さんに会おうとはしない。

 もしかしたら、晴彦さんが私のそばを離れたあの時に、二人の間に私の知らない何かがあったのかもしれない。そう思うが、どんなに尋ねても、どちらもそのことについては答えてくれないのだろう。

 昔よりも少しだけ互いの距離が変わってしまっていることに今更ながら気がついた私は、小さくため息をついてベンチから立ち上がる。

 今年も立派に成長した向日葵は月明かりの中でも、眩しく輝いている。

 毎年思うけれど、ここの向日葵は随分と大きく育つのね。白鳥さんが毎日、大切に管理をしているからかしら。

 そんな事を思いながら、私は、向日葵の間をゆっくりと歩く。

 不意に雲が月を隠し、辺りが暗闇に包まれる。浜辺の方で淡い小さな光が灯ったような気がした。明日あたり、あの人に会えるかしら。





完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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