123 / 124
エピローグ
エピローグ(16)
しおりを挟む
恥ずかしさを誤魔化すように笑う。すると、青島くんは真剣な表情で言った。
「きっと、大切な思い出に心が触れたんだろ。それだけこの花は白野にとって特別ってことさ」
私は思わず息を呑む。この花にまつわる記憶を私は自分の心の中に探したけれど、見つからない。それでも、青島くんが言うように、この花が私にとって特別な存在であることだけは間違いない気がした。
私は、花と、そして青島くんの顔を交互に見た。すると、彼が小さく笑みを浮かべる。
「白野、また来年も見に来るか?」
その言葉に私は胸がいっぱいになる。
「うん! もちろん!」
満面の笑顔で答えると、青島くんは満足げに笑ってくれた。
ホワイトエンジェルの花が満開になるのは、一年先。これから一年の間に私たちは一体どんな想い出を作るのだろう。
今はまだ想像もつかない未来を思って、私がそっと微笑んだとき、リンッと鈴の音が響き、ふわりとした優しい風が私の頬を撫でた。
“たくさん喜んで、時には怒って、悲しんで、精一杯楽しんで、そんなたくさんの感情を大切に大切に積み重ねて。僕はいつだってきみのそばで見守っているから。だから、どうか――幸せでいてね”
そんな声が聞こえたような気がして、風が走り去った方へ目をやる。しかし誰もいない。けれど、誰かがそこにいるような気がして、私は力強くうなずいた。
空は快晴。柔らかな陽光が私たちに降り注ぐ。春風に吹かれ、ホワイトエンジェルの花が、優しく風に揺れていた。
Fin
「きっと、大切な思い出に心が触れたんだろ。それだけこの花は白野にとって特別ってことさ」
私は思わず息を呑む。この花にまつわる記憶を私は自分の心の中に探したけれど、見つからない。それでも、青島くんが言うように、この花が私にとって特別な存在であることだけは間違いない気がした。
私は、花と、そして青島くんの顔を交互に見た。すると、彼が小さく笑みを浮かべる。
「白野、また来年も見に来るか?」
その言葉に私は胸がいっぱいになる。
「うん! もちろん!」
満面の笑顔で答えると、青島くんは満足げに笑ってくれた。
ホワイトエンジェルの花が満開になるのは、一年先。これから一年の間に私たちは一体どんな想い出を作るのだろう。
今はまだ想像もつかない未来を思って、私がそっと微笑んだとき、リンッと鈴の音が響き、ふわりとした優しい風が私の頬を撫でた。
“たくさん喜んで、時には怒って、悲しんで、精一杯楽しんで、そんなたくさんの感情を大切に大切に積み重ねて。僕はいつだってきみのそばで見守っているから。だから、どうか――幸せでいてね”
そんな声が聞こえたような気がして、風が走り去った方へ目をやる。しかし誰もいない。けれど、誰かがそこにいるような気がして、私は力強くうなずいた。
空は快晴。柔らかな陽光が私たちに降り注ぐ。春風に吹かれ、ホワイトエンジェルの花が、優しく風に揺れていた。
Fin
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ChatGPTに陰謀論を作ってもらうことにしました
月歌(ツキウタ)
ライト文芸
ChatGPTとコミュニケーションを取りながら、陰謀論を作ってもらいます。倫理観の高いChatGPTに陰謀論を語らせましょう。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
名もなき朝の唄〈湖畔のフレンチレストランで〉
市來茉莉(茉莉恵)
ライト文芸
【本編完結】【後日談1,2 完結】
写真を生き甲斐にしていた恩師、給仕長が亡くなった。
吹雪の夜明け、毎日撮影ポイントにしていた場所で息絶えていた。
彼の作品は死してもなお世に出ることはない。
歌手の夢破れ、父のレストランを手伝う葉子は、亡くなった彼から『給仕・セルヴーズ』としての仕事を叩き込んでもらっていた。
そんな恩師の死が、葉子『ハコ』を突き動かす。
彼が死したそこで、ハコはカメラを置いて動画の配信を始める。
メートル・ドテル(給仕長)だった男が、一流と言われた仕事も友人も愛弟子も捨て、死しても撮影を貫いた『エゴ』を知るために。
名もなき写真を撮り続けたそこで、名もなき朝の唄を毎日届ける。
やがて世間がハコと彼の名もなき活動に気づき始めた――。
死んでもいいほどほしいもの、それはなんだろう。
北海道、函館近郊 七飯町 駒ヶ岳を臨む湖沼がある大沼国定公園
湖畔のフレンチレストランで働く男たちと彼女のお話
★短編3作+中編1作の連作(本編:124,166文字)
(1.ヒロイン・ハコ⇒2.他界する給仕長の北星秀視点⇒3.ヒロインを支える給仕長の後輩・篠田視点⇒4.最後にヒロイン視点に戻っていきます)
★後日談(続編)2編あり(完結)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる