121 / 124
エピローグ
エピローグ(14)
しおりを挟む
彼はそう呟き、何かを言おうとして口を閉じた。そして、また口を開く。
「あのさ、白野」
彼は真剣な眼差しで私を見た。その目を見つめ返しながら、「ん?」と返事をする。
「今度、映画観にいかないか?」
彼の口から出てきたのは意外な提案で、私は目をパチクリさせた。
「別に無理強いするつもりはないけど……。どうかな?」
「うん。もちろん良いよ」
間髪入れずに答えると、彼はホッとした様子を見せた。
「良かった。じゃあ、約束な」
「うん。絶対だよ」
私は青島くんに小指を差し出す。彼は、一瞬戸惑ったがすぐに察してくれたようで、同じように小指を出してきた。絡めた瞬間、胸の奥がトクンと跳ねる。
あぁ、きっと私はこの人のことが好きだ。
そんな想いが溢れてくる。でも、まだ気づかないフリをしよう。もう少しだけ、このままの関係に甘えよう。いつか私の中ではっきりと「好き」が形になったら、その時はしっかり青島くんに気持ちを伝えたい。
その時はきっとそれほど遠くないはずだから。だからそれまで、もう少し待っていて。
私は心のなかで青島くんに語りかけた。
絡まった小指が解かれ、私たちは再び歩き出す。私たちの足取りは軽かった。
「ねぇ、青島くん。そろそろ何処に行くか教えてくれない?」
私がそう訊ねると、青島くんは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「着いたぞ」
「え? ここ?」
私は目の前の建物を見て思わず声を上げてしまった。真新しい一軒の住宅。二階建ての白い外壁に青い屋根が映える、可愛らしい家だ。どう見ても個人宅のようだが、どうして青島くんはここに私を連れてきたのだろう。
訝る私をよそに、青島くんはそそくさとインターホンを押す。インターホンに向かって慣れた様子で挨拶をすると、門扉を押し開けた。
「こっちだ」
「え? だって人のおうちでしょ。勝手に入っていいの?」
慌てる私に先を行く青島くんが手招きする。渋々ついていくと、小さな庭があった。そこには、ベルのような形をした白い花が咲いていた。
「あ、この花……」
「一年前、白野が見ていた花ってこれだろ。ホワイトエンジェル」
私はコクリと首を振る。
「クレマチスの一種だよ。もうそろそろ終わりの時期だから、間に合ってよかったよ」
「へぇ~。やっぱり可愛い」
私はしゃがみ込み、間近で眺めた。花を眺めて楽しんでいると、後ろから声をかけられた。
「こんにちは。今日は可愛らしい子も一緒なのね」
「あのさ、白野」
彼は真剣な眼差しで私を見た。その目を見つめ返しながら、「ん?」と返事をする。
「今度、映画観にいかないか?」
彼の口から出てきたのは意外な提案で、私は目をパチクリさせた。
「別に無理強いするつもりはないけど……。どうかな?」
「うん。もちろん良いよ」
間髪入れずに答えると、彼はホッとした様子を見せた。
「良かった。じゃあ、約束な」
「うん。絶対だよ」
私は青島くんに小指を差し出す。彼は、一瞬戸惑ったがすぐに察してくれたようで、同じように小指を出してきた。絡めた瞬間、胸の奥がトクンと跳ねる。
あぁ、きっと私はこの人のことが好きだ。
そんな想いが溢れてくる。でも、まだ気づかないフリをしよう。もう少しだけ、このままの関係に甘えよう。いつか私の中ではっきりと「好き」が形になったら、その時はしっかり青島くんに気持ちを伝えたい。
その時はきっとそれほど遠くないはずだから。だからそれまで、もう少し待っていて。
私は心のなかで青島くんに語りかけた。
絡まった小指が解かれ、私たちは再び歩き出す。私たちの足取りは軽かった。
「ねぇ、青島くん。そろそろ何処に行くか教えてくれない?」
私がそう訊ねると、青島くんは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「着いたぞ」
「え? ここ?」
私は目の前の建物を見て思わず声を上げてしまった。真新しい一軒の住宅。二階建ての白い外壁に青い屋根が映える、可愛らしい家だ。どう見ても個人宅のようだが、どうして青島くんはここに私を連れてきたのだろう。
訝る私をよそに、青島くんはそそくさとインターホンを押す。インターホンに向かって慣れた様子で挨拶をすると、門扉を押し開けた。
「こっちだ」
「え? だって人のおうちでしょ。勝手に入っていいの?」
慌てる私に先を行く青島くんが手招きする。渋々ついていくと、小さな庭があった。そこには、ベルのような形をした白い花が咲いていた。
「あ、この花……」
「一年前、白野が見ていた花ってこれだろ。ホワイトエンジェル」
私はコクリと首を振る。
「クレマチスの一種だよ。もうそろそろ終わりの時期だから、間に合ってよかったよ」
「へぇ~。やっぱり可愛い」
私はしゃがみ込み、間近で眺めた。花を眺めて楽しんでいると、後ろから声をかけられた。
「こんにちは。今日は可愛らしい子も一緒なのね」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ハッピークリスマス !
設樂理沙
ライト文芸
中学生の頃からずっと一緒だったよね。大切に思っていた人との楽しい日々が
この先もずっと続いていけぱいいのに……。
―――――――――――――――――――――――
|松村絢《まつむらあや》 ---大企業勤務 25歳
|堂本海(どうもとかい) ---商社勤務 25歳 (留年してしまい就職は一年遅れ)
中学の同級生
|渡部佳代子《わたなべかよこ》----絢と海との共通の友達 25歳
|石橋祐二《いしばしゆうじ》---絢の会社での先輩 30歳
|大隈可南子《おおくまかなこ》----海の同期 24歳 海LOVE?
――― 2024.12.1 再々公開 ――――
💍 イラストはOBAKERON様 有償画像
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

愛されない皇子妃、あっさり離宮に引きこもる ~皇都が絶望的だけど、今さら泣きついてきても知りません~
ネコ
恋愛
帝国の第二皇子アシュレイに嫁いだ侯爵令嬢クリスティナ。だがアシュレイは他国の姫と密会を繰り返し、クリスティナを悪女と糾弾して冷遇する。ある日、「彼女を皇妃にするため離縁してくれ」と言われたクリスティナは、あっさりと離宮へ引きこもる道を選ぶ。ところが皇都では不可解な問題が多発し、次第に名ばかり呼ばれるのはクリスティナ。彼女を手放したアシュレイや周囲は、ようやくその存在の大きさに気づくが、今さら彼女は戻ってくれそうもなく……。

oldies ~僕たちの時間[とき]
菊
ライト文芸
「オマエ、すっげえつまんなそーにピアノ弾くのな」
…それをヤツに言われた時から。
僕の中で、何かが変わっていったのかもしれない――。
竹内俊彦、中学生。
“ヤツら”と出逢い、本当の“音楽”というものを知る。
[当作品は、少し懐かしい時代(1980~90年代頃?)を背景とした青春モノとなっております。現代にはそぐわない表現などもあると思われますので、苦手な方はご注意ください。]

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
フリー台本[1人語り朗読]男性向け|女性向け混ざっています。一人称などで判断いただければと思います
柚木さくら
ライト文芸
※140字で書いたものですが、本文に挿絵として画像をつけてますので、140字になってません💦
画像を入れると記号が文字数になってしまうみたいです。
⬛︎ 報告は任意です
もし、報告してくれるのであれば、事前でも事後でもかまいませんので、フリー台本用ポストへリプ|引用|メンションなどしてれると嬉しいです
⬛︎ 投稿について
投稿する時は、私のX(旧twitter)のユーザー名かIDのどちらかと、フリー台本用Tag【#柚さく_シナリオ】を付けてください
❤︎︎︎︎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❤︎
【可能なこと】
⬛︎タイトルの変更
◾︎私の方で既にタイトルをつけている場合があります。もし他に付けたいタイトルがあれば変更していただいてかまいません (不可なものには不可の記載します)
⬛︎ 一人称|二人称|口調|性別|語尾|読み方の変更
◾︎読み方の変更とは、一部を方言にしたり、英語にしたりとかです。
【ダメなこと】
⬛︎大幅なストーリーの変更
⬛︎自作発言(著作権は放棄していません)
⬛︎無断転載
⬛︎許可なく文章を付け加える|削る
※どうしても加筆や減筆をしないとしっくり来ないなどの場合は、事前に質問してください
✧• ───── ✾ ───── •✧
【BGMやSEについて】
⬛︎私が書いたものに合うのがあれば、BGMやSEなどは自由につけてもらって大丈夫です。
◾︎その際、使用されるものは許可が出ている音源。フリー音源のみ可
【投稿(使用)可能な場所】
⬛︎ X(旧twitter)|YouTube|ツイキャス|nana
◾︎上記以外の場所での投稿不可
◾︎YouTubeやツイキャス、nanaで使用される(された)場合、可能であれば、日時などを教えて貰えると嬉しいです
生配信はなかなか聞きにいけないので💦
【その他】
⬛︎使用していただくにあたり、X(旧twitter)やpixivをフォローするは必要ありません
◾︎もちろん繋がれたら嬉しいのでフォローは嬉しいです
⬛︎ 予告無しに規約の追加などあるかもしれません。ご了承ください
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる