雲の上は、いつも晴れだった。

田古みゆう

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エピローグ

エピローグ(12)

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「うん。まぁね。でも、今日はもう終わり」
「そうなの。お疲れ様」
「白野は? いつものジャージじゃないって事は、これから部活?」

 彼の問い掛けに、私は首を振る。今日の作業はもう終わりだと告げようとして、私は、首を傾げた。

「今日は……アレ? 作業は終わったんだっけ?」

 さっきまで何をしていたんだっけ……。

 頭の中は霞がかかったようで、よく思い出せない。ただ、何か大切なことをしていたような気がしてならないのだけれど……。

「どうした? 大丈夫か?」

 心配そうに見下ろしてくる彼に、私は慌てて「なんでもないよ!」と笑ってみせる。

「あ! そうだ! ねぇ、青島くん。部活が終わったのなら、一緒に帰らない?」

 思い付いたまま口にすると、彼は少しだけ目を見開いた後、「いいけど……」と呟きながらも苦笑いをする。

「えぇー!? ダメなの?」

 私が口を尖らせると、彼は慌てた様子で手を振った。

「いや、違うよ。もちろん、全然OK。むしろ、大歓迎だけど……。その、白野は俺と帰っても良いのか? 俺たち、って言うか、俺、お前に告白しっぱなしなんだけど……そりゃ、待つとは言ったけどさ……」

 最後はゴニョゴニョと口ごもりながら話す彼を見ているうちに、私は彼と最後に話した時のことを思い出す。

 『付き合いたい』と言われた時、私は曖昧な返事をしてしまった。何故なら、その時の私は、彼への想いが分からなかったから。そして、それは今も変わらない。

 私は、まだ自分の気持ちが分からない。どうして自分がこんなにも彼に惹かれるのか、理解できない。それでも、彼と一緒の時間を過ごしたいと願ってしまう。もっと彼のことを知りたいと思ってしまう。そんな自分に、私は気づいていた。だから、私は、こう答える。

「良いに決まってるじゃん」

 そう言って笑うと、彼は嬉しそうに顔を綻ばせた。

 二人で並んで校門に向かって歩き出す。

 隣を歩く青島くんを見上げると、目が合った。

「白野は、これからどこか行くのか?」
「ううん。特に用事はないから、このまま帰るつもりだよ」
「じゃあ、ちょっと寄り道しようぜ」
「うん」

 自然と緩む頬をそのままにして、私は微笑んだ。そのまま歩いていると、ふと、視線を感じた。

 なんだろうと振り返ると、そこに一人の女の子が立っていた。木本徳香だ。彼女の顔を見て、私は思わず息を呑んでしまった。

「どうかしたのか?」

 立ち止まった私を不思議そうに見下ろした青島くんは、私と同じ方向に顔を向ける。
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