119 / 124
エピローグ
エピローグ(12)
しおりを挟む
「うん。まぁね。でも、今日はもう終わり」
「そうなの。お疲れ様」
「白野は? いつものジャージじゃないって事は、これから部活?」
彼の問い掛けに、私は首を振る。今日の作業はもう終わりだと告げようとして、私は、首を傾げた。
「今日は……アレ? 作業は終わったんだっけ?」
さっきまで何をしていたんだっけ……。
頭の中は霞がかかったようで、よく思い出せない。ただ、何か大切なことをしていたような気がしてならないのだけれど……。
「どうした? 大丈夫か?」
心配そうに見下ろしてくる彼に、私は慌てて「なんでもないよ!」と笑ってみせる。
「あ! そうだ! ねぇ、青島くん。部活が終わったのなら、一緒に帰らない?」
思い付いたまま口にすると、彼は少しだけ目を見開いた後、「いいけど……」と呟きながらも苦笑いをする。
「えぇー!? ダメなの?」
私が口を尖らせると、彼は慌てた様子で手を振った。
「いや、違うよ。もちろん、全然OK。むしろ、大歓迎だけど……。その、白野は俺と帰っても良いのか? 俺たち、って言うか、俺、お前に告白しっぱなしなんだけど……そりゃ、待つとは言ったけどさ……」
最後はゴニョゴニョと口ごもりながら話す彼を見ているうちに、私は彼と最後に話した時のことを思い出す。
『付き合いたい』と言われた時、私は曖昧な返事をしてしまった。何故なら、その時の私は、彼への想いが分からなかったから。そして、それは今も変わらない。
私は、まだ自分の気持ちが分からない。どうして自分がこんなにも彼に惹かれるのか、理解できない。それでも、彼と一緒の時間を過ごしたいと願ってしまう。もっと彼のことを知りたいと思ってしまう。そんな自分に、私は気づいていた。だから、私は、こう答える。
「良いに決まってるじゃん」
そう言って笑うと、彼は嬉しそうに顔を綻ばせた。
二人で並んで校門に向かって歩き出す。
隣を歩く青島くんを見上げると、目が合った。
「白野は、これからどこか行くのか?」
「ううん。特に用事はないから、このまま帰るつもりだよ」
「じゃあ、ちょっと寄り道しようぜ」
「うん」
自然と緩む頬をそのままにして、私は微笑んだ。そのまま歩いていると、ふと、視線を感じた。
なんだろうと振り返ると、そこに一人の女の子が立っていた。木本徳香だ。彼女の顔を見て、私は思わず息を呑んでしまった。
「どうかしたのか?」
立ち止まった私を不思議そうに見下ろした青島くんは、私と同じ方向に顔を向ける。
「そうなの。お疲れ様」
「白野は? いつものジャージじゃないって事は、これから部活?」
彼の問い掛けに、私は首を振る。今日の作業はもう終わりだと告げようとして、私は、首を傾げた。
「今日は……アレ? 作業は終わったんだっけ?」
さっきまで何をしていたんだっけ……。
頭の中は霞がかかったようで、よく思い出せない。ただ、何か大切なことをしていたような気がしてならないのだけれど……。
「どうした? 大丈夫か?」
心配そうに見下ろしてくる彼に、私は慌てて「なんでもないよ!」と笑ってみせる。
「あ! そうだ! ねぇ、青島くん。部活が終わったのなら、一緒に帰らない?」
思い付いたまま口にすると、彼は少しだけ目を見開いた後、「いいけど……」と呟きながらも苦笑いをする。
「えぇー!? ダメなの?」
私が口を尖らせると、彼は慌てた様子で手を振った。
「いや、違うよ。もちろん、全然OK。むしろ、大歓迎だけど……。その、白野は俺と帰っても良いのか? 俺たち、って言うか、俺、お前に告白しっぱなしなんだけど……そりゃ、待つとは言ったけどさ……」
最後はゴニョゴニョと口ごもりながら話す彼を見ているうちに、私は彼と最後に話した時のことを思い出す。
『付き合いたい』と言われた時、私は曖昧な返事をしてしまった。何故なら、その時の私は、彼への想いが分からなかったから。そして、それは今も変わらない。
私は、まだ自分の気持ちが分からない。どうして自分がこんなにも彼に惹かれるのか、理解できない。それでも、彼と一緒の時間を過ごしたいと願ってしまう。もっと彼のことを知りたいと思ってしまう。そんな自分に、私は気づいていた。だから、私は、こう答える。
「良いに決まってるじゃん」
そう言って笑うと、彼は嬉しそうに顔を綻ばせた。
二人で並んで校門に向かって歩き出す。
隣を歩く青島くんを見上げると、目が合った。
「白野は、これからどこか行くのか?」
「ううん。特に用事はないから、このまま帰るつもりだよ」
「じゃあ、ちょっと寄り道しようぜ」
「うん」
自然と緩む頬をそのままにして、私は微笑んだ。そのまま歩いていると、ふと、視線を感じた。
なんだろうと振り返ると、そこに一人の女の子が立っていた。木本徳香だ。彼女の顔を見て、私は思わず息を呑んでしまった。
「どうかしたのか?」
立ち止まった私を不思議そうに見下ろした青島くんは、私と同じ方向に顔を向ける。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

クロッカスの咲く頃に
雨宮大智
ライト文芸
女子高校生の黒崎杏子、あだ名は「あんずちゃん」。杏子は、年の離れた叔母と親しくなる。小説や古典文学などを好む叔母の影響を受けた杏子は、文系の大学を目指す。大学進学・就職を経て、ひとりの女性となってゆく杏子。そして、自分の人生を注ぎ込む職業を探し出してゆく⎯⎯。与津を主人公とした小説『風と共に生きる』のアナザー・ストーリー。

私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

安楽椅子から立ち上がれ
Marty
ライト文芸
女生徒≪小沢さん≫は、学校の不思議な変わり者。あらゆる行動が常識外れでエキセントリックなお方である。五月三十日。主人公、山田島辰吉(やまだじまたつよし)は不運なことに、学校の課外活動を彼女と二人きりで行うことになってしまった。噂に違わぬ摩訶不思議な行動に面食らう山田島であったが、次第に心が変化していく。
人に理解され、人を理解するとはどういうことなのか。思い込みや偏見は、心の深淵へ踏み込む足の障害となる。すべてを捨てなければ、湧き上がったこの謎は解けはしない。
始まりは≪一本の傘≫。人の心の糸を紡ぎ、そして安らかにほどいていく。
これは人が死なないミステリー。しかし、日常の中に潜む謎はときとして非常に残酷なのである。
その一歩を踏み出せ。山田島は背を預けていた『安楽椅子』から、いま立ち上がる。

【完結】浄化の花嫁は、お留守番を強いられる~過保護すぎる旦那に家に置いていかれるので、浄化ができません。こっそり、ついていきますか~
うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
ライト文芸
突然、異世界転移した。国を守る花嫁として、神様から選ばれたのだと私の旦那になる白樹さんは言う。
異世界転移なんて中二病!?と思ったのだけど、なんともファンタジーな世界で、私は浄化の力を持っていた。
それなのに、白樹さんは私を家から出したがらない。凶暴化した獣の討伐にも、討伐隊の再編成をするから待つようにと連れていってくれない。 なんなら、浄化の仕事もしなくていいという。
おい!! 呼んだんだから、仕事をさせろ!! 何もせずに優雅な生活なんか、社会人の私には馴染まないのよ。
というか、あなたのことを守らせなさいよ!!!!
超絶美形な過保護旦那と、どこにでもいるOL(27歳)だった浄化の花嫁の、和風ラブファンタジー。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる