雲の上は、いつも晴れだった。

田古みゆう

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エピローグ

エピローグ(7)

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 女子生徒も警戒した表情を貼り付けて、何も言葉を発せずただコクリと頷いただけだった。

「私は、園芸部員で、たまにここのお手入れをしてるんだ。怪しい者じゃないから、そんなに警戒しないで」

 私はコロコロと笑いながら、二人に目配せをしてからココロノカケラの女の子へ視線を戻す。

「それで? あなたは、もしかして、何か進展があった?」
「すごい! さすがは、センパイ。やっぱりわかるんですね」

 女の子は、嬉しそうな笑顔を見せる。そんな私達の親し気な様子に、男子生徒は痺れを切らしたように口を挟んできた。

「おい、この人って、もしかして、前に言ってた……?」
「そう。ココロノカケラの事を教えてくれた人」
「……じゃあ、やっぱり……」

 彼らの会話に私は眉尻を下げ、困り顔を作る。

「あらー。やっぱり言っちゃったか……。誰にも言わない約束だったでしょ?」

 私の指摘に、ココロノカケラの女の子はえへへと笑って見せる。

「ちょっとヒントを出しただけだよ」
「もう。そういう事じゃないんだよ。……まぁ、仕方ないか。じゃあ、あとは……」

 私は隣に並ぶフリューゲルをチラリとみる。フリューゲルも困ったような驚いたような顔をしていたが、私の視線に気が付くと小さく微笑んだ。

「まあ、言ってしまったものは仕方がないよ。僕たちの存在を信じるのかは別として、彼らがココロノカケラである彼女と交流を持てる、素直な心の持ち主であることには変わりないし。それに、彼女の状態からみて、間もなく彼女は昇華するだろう。そうなれば、関わっていた彼らの記憶からも、今日のことは消えてしまうだろうしね」

 私は、フリューゲルの言葉に頷いてから、男子生徒と女子生徒へ視線を向けた。

「彼女から、どうやって聞いているか分からないし、そのことを信じるかどうかは、きみ達に任せるよ。私は、肯定も否定もしない。ただ、きみ達には、あまり時間はないよ。それだけは信じてほしい」

 私は自分の存在云々よりも、仲良くなったらしい彼らに残された時間が少ないことを知ってほしくて、真剣な表情で語り掛けた。

 私の想いが通じたのか、彼らは困惑しながらも私の訴えを信じてくれる。あまりに素直に信じたので、こちらが拍子抜けしてしまうほどだったが、彼らには別れの時を大切にしてほしいと私は思った。傍らを見上げると、フリューゲルも同じ気持ちなのか、こくりと頷き私の背を押した。
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