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エピローグ
エピローグ(4)
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フリューゲルに聞こえないように小さな声でぽつりとつぶやく。それでも双子の片割れはそんな私の声すらも逃さずに拾ってしまう。
「アーラのせいじゃないよ。僕が神さまに望んで、それを神様と大樹様が受け入れてくれたんだから。きっと、僕が天使になるためには、アーラと庭園で過ごす日々も必要な事だったんだ。それが分かっていたから大樹様は自身のお力を使ってでもアーラを庭園に迎えてくれたんだよ」
「そうかしら?」
「うん。僕はそう思ってる。僕が守護天使になると決めたのは、きみのそばを離れたくないからだもの。そう思えるのは、やっぱり庭園での日々があったからだからさ。アーラが庭園にいたことは必然だったんだよ。きみが気に病むことは何もないさ」
「……そうだといいな。私も、フリューゲルといつも一緒にいられて楽しかったもの。そうね。もう気にするのは止めにするわ。私をここまで育んでくれた大樹様にも、司祭様にも失礼な気がするし」
私達は互いに笑みを交わす。こうして話していることさえ、近いうちに忘れてしまうのは、とても寂しい。それでも、私は塞ぎこんだりしたくない。今しかできないフリューゲルとの交流を心の底から楽しみたい。アーラが消えてしまっても、フリューゲルは絶対に覚えていてくれる。彼の中に残るアーラが寂しいものにならないように。悔いの遺した顔を彼の中に刻みつけないように。私はいつだって笑っていたい。
心配事をまた一つ吹っ切り口元を緩めている私に、心配そうにフリューゲルが顔を覗き込んできた。
「大樹様のことは、心配しなくても大丈夫。僕はまだきみの守護天使以外のお役目は頂いていないけれど、司祭様にお願いをして、これからは司祭様とともに僕も大樹様のお世話をさせてい頂くことにしたから。といっても、基本的には大樹様はご自身のお力で大きくおなりだから、僕たちは見守ることくらいしかできないみたいなんだけどね。でも、もし万が一、今回みたいに、大樹様に何かあった時は、僕が全力でお世話することを約束するよ」
フリューゲルの言葉に安堵し頷くと、彼は、「だから」と言葉をつなげる。
「僕のためにも、学びをやめるなんて言わないでよ」
「……どういうこと?」
「僕は、きみのそばでもっと人の気持ちも植物の気持ちも知りたいんだ。アーラだって、本当はもう園芸の虜なんだろ? 知ってるよ。きみがいつも泥だらけになりながらも、常に口元が緩んでいること」
「アーラのせいじゃないよ。僕が神さまに望んで、それを神様と大樹様が受け入れてくれたんだから。きっと、僕が天使になるためには、アーラと庭園で過ごす日々も必要な事だったんだ。それが分かっていたから大樹様は自身のお力を使ってでもアーラを庭園に迎えてくれたんだよ」
「そうかしら?」
「うん。僕はそう思ってる。僕が守護天使になると決めたのは、きみのそばを離れたくないからだもの。そう思えるのは、やっぱり庭園での日々があったからだからさ。アーラが庭園にいたことは必然だったんだよ。きみが気に病むことは何もないさ」
「……そうだといいな。私も、フリューゲルといつも一緒にいられて楽しかったもの。そうね。もう気にするのは止めにするわ。私をここまで育んでくれた大樹様にも、司祭様にも失礼な気がするし」
私達は互いに笑みを交わす。こうして話していることさえ、近いうちに忘れてしまうのは、とても寂しい。それでも、私は塞ぎこんだりしたくない。今しかできないフリューゲルとの交流を心の底から楽しみたい。アーラが消えてしまっても、フリューゲルは絶対に覚えていてくれる。彼の中に残るアーラが寂しいものにならないように。悔いの遺した顔を彼の中に刻みつけないように。私はいつだって笑っていたい。
心配事をまた一つ吹っ切り口元を緩めている私に、心配そうにフリューゲルが顔を覗き込んできた。
「大樹様のことは、心配しなくても大丈夫。僕はまだきみの守護天使以外のお役目は頂いていないけれど、司祭様にお願いをして、これからは司祭様とともに僕も大樹様のお世話をさせてい頂くことにしたから。といっても、基本的には大樹様はご自身のお力で大きくおなりだから、僕たちは見守ることくらいしかできないみたいなんだけどね。でも、もし万が一、今回みたいに、大樹様に何かあった時は、僕が全力でお世話することを約束するよ」
フリューゲルの言葉に安堵し頷くと、彼は、「だから」と言葉をつなげる。
「僕のためにも、学びをやめるなんて言わないでよ」
「……どういうこと?」
「僕は、きみのそばでもっと人の気持ちも植物の気持ちも知りたいんだ。アーラだって、本当はもう園芸の虜なんだろ? 知ってるよ。きみがいつも泥だらけになりながらも、常に口元が緩んでいること」
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