雲の上は、いつも晴れだった。

田古みゆう

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冬の章

冬の章(26)

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 私とフリューゲルの繋がり。それについてはもう何となくは分かっている。今からは答え合わせということだろうか。

「私とフリューゲルはやっぱり双子だったのよね?」
「うん。あの日の記憶も僕たちのものだ」
「あの、暗い水の中の記憶?」
「そう。きみのお母さんが言っていたように、僕たちはお母さんのお腹の中でもうまくやっていた」
「……でも、私たちは庭園ガーデンに住むNoelノエルよ。私たちに親なんていないわ。だって、私たちは大樹様リン・カ・ネーションから生まれたのだもの。白野家の両親は、私の下界での学びのために用意された仮初の両親ではないの?」

 寂しそうに話を続けるフリューゲルの顔を見ていると、胸がザワザワと波立つ。そのざわつきを抑えたくて、私は早口に捲し立てる。そんな私に、フリューゲルはゆっくりと首を振ってから、傍らに立つ司祭様へ視線を向けた。

 司祭様は、フリューゲルの視線を受け止めると優しい微笑みを彼に向けてから、私の手を取った。

「アーラ。さぞや混乱していることでしょう。わたくしも、フリューゲルから話を聞いたときは、一体どういうことなのかと悩みました。そして、私たちはある可能性に気がついたのです」
「可能性?」

 司祭様とフリューゲルを交互に見比べながら、私は話の続きを待った。

「フリューゲルの話によりますと、母親の体内にいた時分、フリューゲルは神のお声を聞いたとか」

 司祭様の言葉に、フリューゲルはしっかりと頷く。

「神はフリューゲルのみを天界へ上げるおつもりだったのでしょう。しかし、貴方方の絆はとても強いものだった。そう、ココロノカケラが生まれてしまう程に」
「ココロノカケラ?」

 司祭様の話が飲み込めず首を傾げる私の耳にしっかりと言葉を届けようとするかのように、フリューゲルが私と視線を合わせてくる。

「あの時、お母さんのお腹の中できみと離れ離れになるのが悲しくて寂しくて、僕はきみの流した涙を一緒に天界へと連れてきてしまったんだ。もちろん、あの時の僕には何の力もなかったから、神様のご配慮があったのだけど」

 これから先の話は聞かない方が良いような気がするのに、聞かずにはいられない。私は、自覚もないままに聞き返していた。

「どういうこと?」
「きみはあの時、確かに下界に生まれ落ちたんだ。白野家の一人娘、白野つばさとして。そして、時を同じくして庭園ガーデンに僕と双子のNoelノエル、アーラが生まれた」
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