雲の上は、いつも晴れだった。

田古みゆう

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冬の章

冬の章(7)

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「相談したいこと?」
「うん。実は私、どうやらココロノカケラに出会ったみたいなの」
「え? ココロノカケラ? ココロノカケラって、あの?」
「うん。たぶんなんだけどね。以前に司祭様に教えていただいた、あのココロノカケラだと思う」

 私の言葉を聞いたフリューゲルは、しばらくの間、じっと私の事を見つめていた。

「……惹きあったのかな?」
「え? 何? どう言うこと?」

 ポツリとこぼれ落ちたフリューゲルの言葉に私が首を傾げると、それを見たフリューゲルは、のんびりと首を振った。

「ああ。えっと……なんでもない。この地に本来いるべき者じゃない同士だから、出会ったのかなって……」
「ああ。なるほど。そういうこと」

 私が一人納得しているそばで、フリューゲルは何かを考え込んでいるようだったが、しばらくすると、相変わらずののんびり口調で、口を開いた。

「僕も、そのココロノカケラに会えるかな?」
「え? ああ。うん。まだ花壇に居れば会えると思うよ。まぁ、この学校に思い入れがある子みたいだから、今日会えなくても、いずれは会えるはず」

 いつの間にか私たちは普段通りに会話を交わしていた。まぁ、それでこそ双子Noelノエルと言ったところだろう。

 私たちが、二人揃って花壇に戻ると、例の花壇の前には、先ほどの女の子がいた。相変わらず熱心に花壇を眺めている。

 少女の後ろ姿を認めた私は、フリューゲルに小さく耳打ちをする。

「ほら。あの子。不思議な気配の子よね?」

 女の子の後ろ姿をじっと見つめていたフリューゲルは、私の言葉にコクリと頷いた。

「確かに。下界の人とは違うみたいだね。でも、どうしてココロノカケラだと? 自分でそうだと言ったの?」
「ううん。彼女自身は、自分がココロノカケラだってことも知らなかったみたい。でも、どうやら強い想いがあるみたいなの」

 先ほど女の子から聞いたことを掻い摘んで話すと、フリューゲルは納得したようだった。

「それは確かに、ココロノカケラかもしれないね。心の一部がこちらに留まっている限り、彼女は転生が出来ないからね。なんとか僕たちで昇華させてあげられると良いのだけど」

 フリューゲルはそういうと、ゆっくりと小さな背中に近づいた。私もその後を追いかける。

「お待たせ。肥料持ってきたよ」

 近寄りつつ、女の子に声をかけると、振り向いた女の子の目は、私ではないところで釘付けになった。
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