雲の上は、いつも晴れだった。

田古みゆう

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秋の章

秋の章(28)

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 ここがどういう所だか分からない。フリューゲルと私の繋がりも詳しくは分からない。でも、私とフリューゲルの間には、確かに繋がっている部分がある。

 そんな繋がりの強い彼を哀しませないためにも、私は私らしく笑っていよう。

「うん。それでこそ白野だ」

 私の顔を見て、青島くんは大きく頷くと、すぐにイタズラっぽく笑って見せる。

「よし、じゃあ、さっさとこれ食べて帰るぞ。あの状態じゃ、どうせ母ちゃんに何も言わずに家を出てきたんだろ?」
「あっ……」

 青島くんの指摘に、思わず声を上げた私を見て、彼は、やっぱりと言いたげに呆れた顔をした。

 どうしても家まで送ると言う彼の優しさに甘えて、家まで送ってもらう。

 門扉の前で、話を聞いてくれたお礼を言って頭を下げると、青島くんは気にするなと笑って返してくれた。

 それじゃ、と踵を返し帰りかけた青島くんは、最後に嬉しい言葉を残してくれる。

「あのさ、双子と一緒に過ごせるパラレルワールドがあったらいいな」

 彼の言葉に、私はとびきりの笑顔で大きく頷き返す。それをチラリと確認した彼は、それじゃあと軽く手を上げて、暗闇を駆けて行った。

 小さくなる彼の背中に向かって、もう一度ありがとうと言って私は、自宅へと戻る。

 なにが現実で、なにが真実なのかは、全てが終わればはっきりするはず。今の私には、双子Noelノエルがそばにいること、それが現実。

 フリューゲルを哀しませない。

 そう自分に言い聞かせ、明るい笑顔で自室のドアを開ける。

 「おかえり、アーラ」と聞こえるはずとどこかで期待していた声は、しかし、私を迎えてはくれなかった。

 「フリューゲル、どこ?」

 彼を呼んでみるが、返事がない。

 「フリューゲル! フリューゲル!」

 私が話したいと思ったときはいつでも話せると言っていたくせに、フリューゲルは、どんなに呼んでも、さっぱり反応をしてくれない。

 一体、どこへ行ってしまったの? フリューゲル。
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