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秋の章
秋の章(23)
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自分でもなぜ部屋を飛び出してきてしまったのか分からない。正直、混乱もしているし、分らないことだらけだ。でも、フリューゲルと一緒の空間にいることが酷く苦しかったような気がする。
そんな事を思い、ふうっと小さく息を吐き出すと、それが聞こえたのか、青島くんが遠慮がちに声をかけてきた。
「白野? 大丈夫か?」
「……ちょっとね……混乱しちゃって……」
「やっぱり、俺が聞いちゃだめなことか?」
「ダメっていうわけじゃないんだけど……私自身が混乱していて、上手く話せないの」
「上手く話そうとなんかしなくてもいい。話せることがあるなら、何でも言ってみ。言葉にしたら、その混乱も解決するかもしれないし」
「そう……かな」
青島くんに促され、混乱したまま私は胸の内を、ぽつぽつと言葉にしてみた。
「あのね。えっと、上手く言えないんだけど、もし、もしも作られた世界だと思っていた場所が、実は本当の場所だったとしたら、どうしたらいいのかな?」
「ん? ごめん。ちょっと意味が……」
私の言葉を聞いた青島くんは、早速困り顔だ。
「ごめん。そうだよね。なんて言ったらいいのかな……」
「作られた世界って、最近流行りのVRの仮想世界ってことか?」
「VR?」
今度は私が青島くんの言葉がわからなくて首を傾げる。
「あ~。違うのかな? 疑似体験できる世界っていうか……」
「疑似体験? そう。そうかも。違う世界を体験できるっていう意味なら」
疑似体験とは、まさに庭園からこの下界へ来た私の生活そのものを表しているような気がして頷いた。
「仮想世界が現実だったら、どうしたらいいかってことか?」
「うん。そう。仮の世界ってことは、現実は、もちろん別にあるじゃない? でも、実は、仮の世界が現実なんだって言われたら、それまで、現実だと思っていた場所は何なんだろうって……」
「う~ん。確かに混乱しそうな内容だけど、白野はそんなことを考えてて、家を飛び出してきたのか?」
青島くんは腕を組みながら、私のよく分からない話に首を捻る。
「ああ。……えっと……うん。それは、まあ、きっかけっていうか、さわりっていうか……」
私がもじょもじょと曖昧な物言いをしている間も、青島くんは呆れることなく、私の話に真剣に付き合ってくれる。
「変わったこと考えるんだな。仮想世界が現実……か。向こうが現実ってことは、こちらの現実だと思っていた世界が仮想ってことになるのか?」
そんな事を思い、ふうっと小さく息を吐き出すと、それが聞こえたのか、青島くんが遠慮がちに声をかけてきた。
「白野? 大丈夫か?」
「……ちょっとね……混乱しちゃって……」
「やっぱり、俺が聞いちゃだめなことか?」
「ダメっていうわけじゃないんだけど……私自身が混乱していて、上手く話せないの」
「上手く話そうとなんかしなくてもいい。話せることがあるなら、何でも言ってみ。言葉にしたら、その混乱も解決するかもしれないし」
「そう……かな」
青島くんに促され、混乱したまま私は胸の内を、ぽつぽつと言葉にしてみた。
「あのね。えっと、上手く言えないんだけど、もし、もしも作られた世界だと思っていた場所が、実は本当の場所だったとしたら、どうしたらいいのかな?」
「ん? ごめん。ちょっと意味が……」
私の言葉を聞いた青島くんは、早速困り顔だ。
「ごめん。そうだよね。なんて言ったらいいのかな……」
「作られた世界って、最近流行りのVRの仮想世界ってことか?」
「VR?」
今度は私が青島くんの言葉がわからなくて首を傾げる。
「あ~。違うのかな? 疑似体験できる世界っていうか……」
「疑似体験? そう。そうかも。違う世界を体験できるっていう意味なら」
疑似体験とは、まさに庭園からこの下界へ来た私の生活そのものを表しているような気がして頷いた。
「仮想世界が現実だったら、どうしたらいいかってことか?」
「うん。そう。仮の世界ってことは、現実は、もちろん別にあるじゃない? でも、実は、仮の世界が現実なんだって言われたら、それまで、現実だと思っていた場所は何なんだろうって……」
「う~ん。確かに混乱しそうな内容だけど、白野はそんなことを考えてて、家を飛び出してきたのか?」
青島くんは腕を組みながら、私のよく分からない話に首を捻る。
「ああ。……えっと……うん。それは、まあ、きっかけっていうか、さわりっていうか……」
私がもじょもじょと曖昧な物言いをしている間も、青島くんは呆れることなく、私の話に真剣に付き合ってくれる。
「変わったこと考えるんだな。仮想世界が現実……か。向こうが現実ってことは、こちらの現実だと思っていた世界が仮想ってことになるのか?」
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