67 / 124
秋の章
秋の章(21)
しおりを挟む
なんで涙が出るんだろう。
鼻を啜り、手の甲で涙を拭う。拭っても拭っても、止まる事なく零れ落ちる涙に途方に暮れていると、ポンと肩を叩かれた。
瞳を上げると、トレーに大量のホットスナックを乗せた青島くんが立っていた。
「白野。夕飯食べた? まだだったら、コレ、一緒に食べよう」
私の隣に座ると、青島くんは早速、簡易包装された包みからアメリカンドッグを取り出し、付属のケチャップとマスタードを勢いよくかけた。それを包みへと一旦戻してから、私の方へ押しやる。
「俺、コレ好きなんだよ。なんか、衣甘いのに、ケチャップとマスタードの酸味がアクセントになってて。甘過ぎず、酸っぱ過ぎずって言うの? まぁ、なんかうまく言えないけど、とにかく美味いんだよ。食ってみ」
そう言いながら、青島くんは、もう一つのアメリカンドッグにもケチャップとマスタードを勢いよくかけると、待ちきれないというように、大きな口を開けてガブリと齧り付いた。
青島くんの食べっぷりに、思わず目を見張る。目を細め、本当に美味しそうに食べる姿を見つめていたら、いつの間にか私の涙は止まっていた。
しばらくモグモグと口を動かし、もう一口齧り付こうとして口を開きかけた青島くんは、一旦口を閉じると、口の端にケチャップを付けたまま、私に向き直る。
「ほら、白野も食べて。揚げたてにしてもらったから、温かいよ」
大人っぽい気遣いと、口の端に付いた子供っぽさに思わず笑みがもれる。
私は、鼻を啜りながら濡れたままになっていた頬を手のひらで拭うと、紙ナプキンを差し出した。
「ケチャップ付いてる」
笑いを少し含んだ声でそう言うと、青島くんは、慌てたように紙ナプキンを受け取った。
「マジ!?」
慌てて口の周りを拭いている彼に、軽く頭を下げる。
「ありがとう。いただきます」
小さく一口齧ると、確かにほんのり甘い衣と、甘酸っぱいケチャップ、それからちょっと酸味のあるマスタードが鼻から抜け、美味しさが口の中に広がった。
何より、揚げたてというのが、さらに美味しさをアップさせている気がする。まるで、青島くんの優しさを丸ごと食べているようで、私は夢中で齧り付いた。
食べ終わると、先程渡されたミルクティーをコクリと飲む。
ほうっと一息吐いた時には、冷え切っていた体と心が温かくなっていた。
そんな私のことを、フライドポテトを摘まみながら見ていた青島くんが、口を開く。
鼻を啜り、手の甲で涙を拭う。拭っても拭っても、止まる事なく零れ落ちる涙に途方に暮れていると、ポンと肩を叩かれた。
瞳を上げると、トレーに大量のホットスナックを乗せた青島くんが立っていた。
「白野。夕飯食べた? まだだったら、コレ、一緒に食べよう」
私の隣に座ると、青島くんは早速、簡易包装された包みからアメリカンドッグを取り出し、付属のケチャップとマスタードを勢いよくかけた。それを包みへと一旦戻してから、私の方へ押しやる。
「俺、コレ好きなんだよ。なんか、衣甘いのに、ケチャップとマスタードの酸味がアクセントになってて。甘過ぎず、酸っぱ過ぎずって言うの? まぁ、なんかうまく言えないけど、とにかく美味いんだよ。食ってみ」
そう言いながら、青島くんは、もう一つのアメリカンドッグにもケチャップとマスタードを勢いよくかけると、待ちきれないというように、大きな口を開けてガブリと齧り付いた。
青島くんの食べっぷりに、思わず目を見張る。目を細め、本当に美味しそうに食べる姿を見つめていたら、いつの間にか私の涙は止まっていた。
しばらくモグモグと口を動かし、もう一口齧り付こうとして口を開きかけた青島くんは、一旦口を閉じると、口の端にケチャップを付けたまま、私に向き直る。
「ほら、白野も食べて。揚げたてにしてもらったから、温かいよ」
大人っぽい気遣いと、口の端に付いた子供っぽさに思わず笑みがもれる。
私は、鼻を啜りながら濡れたままになっていた頬を手のひらで拭うと、紙ナプキンを差し出した。
「ケチャップ付いてる」
笑いを少し含んだ声でそう言うと、青島くんは、慌てたように紙ナプキンを受け取った。
「マジ!?」
慌てて口の周りを拭いている彼に、軽く頭を下げる。
「ありがとう。いただきます」
小さく一口齧ると、確かにほんのり甘い衣と、甘酸っぱいケチャップ、それからちょっと酸味のあるマスタードが鼻から抜け、美味しさが口の中に広がった。
何より、揚げたてというのが、さらに美味しさをアップさせている気がする。まるで、青島くんの優しさを丸ごと食べているようで、私は夢中で齧り付いた。
食べ終わると、先程渡されたミルクティーをコクリと飲む。
ほうっと一息吐いた時には、冷え切っていた体と心が温かくなっていた。
そんな私のことを、フライドポテトを摘まみながら見ていた青島くんが、口を開く。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

密約
Yamaoka
ライト文芸
遥か昔――。
レイン領がレイン。切なる。文明こそ確かであるが。
「魔術師」
たるや。機運も度外。抗争も度外いや恐らく土壌が違うのであろう。過激な術師が蔓延る中。
「その人は」
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************

ダンナ様はエスパー?
daisysacky
ライト文芸
灯里と一回り年上の久志の新婚夫婦。
憧れのマンションライフをスタートする。
自信がなく、引っ込み思案の灯里を
優しく見守るダンナ様…
彼女は常々思う。
彼はエスパーじゃないか?と…
ちょっぴりホッコリとして、
優しい話にしたいと思います。
よろしければ、お付き合いくださいね!

ノーバ大学、地球学科、日本学部
宇治茶々丸
ライト文芸
資源が極わずかしか残っていない惑星ノーバ。ここで新しい大学が設立された。そこにできた学部は対称的な学科だった。
そこから生まれる激しいぶつかりや、深い溝、果たして惑星ノーバの運命は……
泣けない、泣かない。
黒蝶
ライト文芸
毎日絶望に耐えている少女・詩音と、偶然教育実習生として彼女の高校に行くことになった恋人・優翔。
ある事情から不登校になった少女・久遠と、通信制高校に通う恋人・大翔。
兄である優翔に憧れる弟の大翔。
しかし、そんな兄は弟の言葉に何度も救われている。
これは、そんな4人から為る物語。
《主な登場人物》
如月 詩音(きらさぎ しおん):大人しめな少女。歌うことが大好きだが、人前ではなかなか歌わない。
小野 優翔(おの ゆうと):詩音の恋人。養護教諭になる為、教育実習に偶然詩音の学校にやってくる。
水無月 久遠(みなづき くおん):家からほとんど出ない少女。読書家で努力家。
小野 大翔(おの ひろと):久遠の恋人。優翔とは兄弟。天真爛漫な性格で、人に好かれやすい。

虚空戦線
朱雨
ライト文芸
「誰かを信じたいかなんて無責任だと思わないかい?」
昔、謎の変死体が発見される事件が急増しており、それに終止符を打った1人の人間がいた。それらの犯人は『異形種生命体』と称される、"見えない"生命体である。異形種生命体が発生する地域を閉鎖し、『旧帝都』という地名を付けられ、国から旧帝都以上の範囲から取り逃がさないように使命を受けた。
現在でもその戦いは行われており、『十二家』という家門、それに従う従者、適正のある人間、それら全てを束ねる『菊花内家』が任務を全うしている。ひとつにまとまっているように思えるが、進化するのは人間側だけではなく、異形種生命体も同様である。さまざまな想いが揺れる中で、誰が、誰を、何を信じることが正しいのか。
これは青年たちと大人たちの戦いの話である。
※厨二と趣味のごった煮
※BLだって百合だって入ってるキメラ
※各章の中で数日前後している場合あり

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる