44 / 124
夏の章
夏の章(17)
しおりを挟む
妙に納得した声の私に、緑は意味ありげな視線を向けながら、またもや可笑そうに笑う。
「えっ? そうかな? 優しいと思うけど? 前に私が怪我した時も肩を貸してくれたし。いつも何かと心配して声を掛けてくれるよ」
私の言葉に、緑は訳知り顔でうんうんと相槌を打つ。
「そう。ヒロくんは優しい」
「ほら、やっぱり」
しかし、いつまでもにやけ顔のままの緑は、首を振って、私の指摘を否定した。
「でも、それは、私の知る限り、つばさちゃんにだけだよ~」
「え?」
「ヒロ君、他の女子には、別に優しくなんかないよ。木本に対して顔を顰めることはあっても、間に入って、木本に絡まれている子を助けてあげているところなんて見たことないもん。私も、助けてもらった事ないし~」
冗談めかして唇を尖らせる緑の言葉が信じられなくて、私は目を丸くする。
青島くんはいつだって優しい。初めて会った時も、さっきだって。それだけじゃない。下界の生活に慣れなくて、いつもワタワタとしている私に何気なく声を掛けてくれる。あの不思議な色の瞳でじっと私を見つめ、私の心を落ち着かせてくれる。
そんな彼を優しくないと言う緑の言葉に、混乱していると、緑は、何かを言いたげに私の瞳を覗き込んだ。
「なかなかストレートだと思うよ。私は」
「えっ? 何が」
緑の言葉の意味が分からず、首を傾げて問い返すと、緑は、予想していたかの様な呆れ顔を私に向ける。
「まぁ、そう来ると思ったよ~。相変わらず、つばさちゃんは、つばさちゃんだね~」
「えっ? 何? 緑ちゃん、どう言う事?」
「ふふ。いいの。いいの。まだお子ちゃまには早かった様だね~」
目をパチクリとさせ、緑と傍らに静かに座っていた司書を交互に見やる。どうやら、司書は、私たちの会話から、内容を察した様で、ニコニコと微笑んでいた。
「司書先生~。緑ちゃんの言ってることって、どういう意味ですか?」
「う~ん。そうね。青島くんにとって、あなたは特別ってことかしら」
「特別?」
ふふふと、にこやかに笑いながら、お茶のカップを手にする司書の言葉は、私の疑問を何も解消してくれない。
混乱に眉根を寄せていると、緑が不思議そうな声を出した。
「それはそうと、さっきのつばさちゃんの言葉は、どういう意味だったの?」
「え? 何が?」
「ほら。私の話を聞いても、嫌いにならないでねって、あれ。話を聞く限り、嫌いになるも何も、つばさちゃんは木本の被害者なだけじゃない」
「えっ? そうかな? 優しいと思うけど? 前に私が怪我した時も肩を貸してくれたし。いつも何かと心配して声を掛けてくれるよ」
私の言葉に、緑は訳知り顔でうんうんと相槌を打つ。
「そう。ヒロくんは優しい」
「ほら、やっぱり」
しかし、いつまでもにやけ顔のままの緑は、首を振って、私の指摘を否定した。
「でも、それは、私の知る限り、つばさちゃんにだけだよ~」
「え?」
「ヒロ君、他の女子には、別に優しくなんかないよ。木本に対して顔を顰めることはあっても、間に入って、木本に絡まれている子を助けてあげているところなんて見たことないもん。私も、助けてもらった事ないし~」
冗談めかして唇を尖らせる緑の言葉が信じられなくて、私は目を丸くする。
青島くんはいつだって優しい。初めて会った時も、さっきだって。それだけじゃない。下界の生活に慣れなくて、いつもワタワタとしている私に何気なく声を掛けてくれる。あの不思議な色の瞳でじっと私を見つめ、私の心を落ち着かせてくれる。
そんな彼を優しくないと言う緑の言葉に、混乱していると、緑は、何かを言いたげに私の瞳を覗き込んだ。
「なかなかストレートだと思うよ。私は」
「えっ? 何が」
緑の言葉の意味が分からず、首を傾げて問い返すと、緑は、予想していたかの様な呆れ顔を私に向ける。
「まぁ、そう来ると思ったよ~。相変わらず、つばさちゃんは、つばさちゃんだね~」
「えっ? 何? 緑ちゃん、どう言う事?」
「ふふ。いいの。いいの。まだお子ちゃまには早かった様だね~」
目をパチクリとさせ、緑と傍らに静かに座っていた司書を交互に見やる。どうやら、司書は、私たちの会話から、内容を察した様で、ニコニコと微笑んでいた。
「司書先生~。緑ちゃんの言ってることって、どういう意味ですか?」
「う~ん。そうね。青島くんにとって、あなたは特別ってことかしら」
「特別?」
ふふふと、にこやかに笑いながら、お茶のカップを手にする司書の言葉は、私の疑問を何も解消してくれない。
混乱に眉根を寄せていると、緑が不思議そうな声を出した。
「それはそうと、さっきのつばさちゃんの言葉は、どういう意味だったの?」
「え? 何が?」
「ほら。私の話を聞いても、嫌いにならないでねって、あれ。話を聞く限り、嫌いになるも何も、つばさちゃんは木本の被害者なだけじゃない」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
パパLOVE
卯月青澄
ライト文芸
高校1年生の西島香澄。
小学2年生の時に両親が突然離婚し、父は姿を消してしまった。
香澄は母を少しでも楽をさせてあげたくて部活はせずにバイトをして家計を助けていた。
香澄はパパが大好きでずっと会いたかった。
パパがいなくなってからずっとパパを探していた。
9年間ずっとパパを探していた。
そんな香澄の前に、突然現れる父親。
そして香澄の生活は一変する。
全ての謎が解けた時…きっとあなたは涙する。
☆わたしの作品に目を留めてくださり、誠にありがとうございます。
この作品は登場人物それぞれがみんな主役で全てが繋がることにより話が完成すると思っています。
最後まで読んで頂けたなら、この言葉の意味をわかってもらえるんじゃないかと感じております。
1ページ目から読んで頂く楽しみ方があるのはもちろんですが、私的には「三枝快斗」篇から読んでもらえると、また違った楽しみ方が出来ると思います。
よろしければ最後までお付き合い頂けたら幸いです。
もう一度『初めまして』から始めよう
シェリンカ
ライト文芸
『黄昏刻の夢うてな』ep.0 WAKANA
母の再婚を機に、長年会っていなかった父と暮らすと決めた和奏(わかな)
しかし芸術家で田舎暮らしの父は、かなり変わった人物で……
新しい生活に不安を覚えていたところ、とある『不思議な場所』の話を聞く
興味本位に向かった場所で、『椿(つばき)』という同い年の少女と出会い、ようやくその土地での暮らしに慣れ始めるが、実は彼女は……
ごく平凡を自負する少女――和奏が、自分自身と家族を見つめ直す、少し不思議な成長物語
フリー台本[1人語り朗読]男性向け|女性向け混ざっています。一人称などで判断いただければと思います
柚木さくら
ライト文芸
※140字で書いたものですが、本文に挿絵として画像をつけてますので、140字になってません💦
画像を入れると記号が文字数になってしまうみたいです。
⬛︎ 報告は任意です
もし、報告してくれるのであれば、事前でも事後でもかまいませんので、フリー台本用ポストへリプ|引用|メンションなどしてれると嬉しいです
⬛︎ 投稿について
投稿する時は、私のX(旧twitter)のユーザー名かIDのどちらかと、フリー台本用Tag【#柚さく_シナリオ】を付けてください
❤︎︎︎︎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❤︎
【可能なこと】
⬛︎タイトルの変更
◾︎私の方で既にタイトルをつけている場合があります。もし他に付けたいタイトルがあれば変更していただいてかまいません (不可なものには不可の記載します)
⬛︎ 一人称|二人称|口調|性別|語尾|読み方の変更
◾︎読み方の変更とは、一部を方言にしたり、英語にしたりとかです。
【ダメなこと】
⬛︎大幅なストーリーの変更
⬛︎自作発言(著作権は放棄していません)
⬛︎無断転載
⬛︎許可なく文章を付け加える|削る
※どうしても加筆や減筆をしないとしっくり来ないなどの場合は、事前に質問してください
✧• ───── ✾ ───── •✧
【BGMやSEについて】
⬛︎私が書いたものに合うのがあれば、BGMやSEなどは自由につけてもらって大丈夫です。
◾︎その際、使用されるものは許可が出ている音源。フリー音源のみ可
【投稿(使用)可能な場所】
⬛︎ X(旧twitter)|YouTube|ツイキャス|nana
◾︎上記以外の場所での投稿不可
◾︎YouTubeやツイキャス、nanaで使用される(された)場合、可能であれば、日時などを教えて貰えると嬉しいです
生配信はなかなか聞きにいけないので💦
【その他】
⬛︎使用していただくにあたり、X(旧twitter)やpixivをフォローするは必要ありません
◾︎もちろん繋がれたら嬉しいのでフォローは嬉しいです
⬛︎ 予告無しに規約の追加などあるかもしれません。ご了承ください
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

黒蜜先生のヤバい秘密
月狂 紫乃/月狂 四郎
ライト文芸
高校生の須藤語(すとう かたる)がいるクラスで、新任の教師が担当に就いた。新しい担任の名前は黒蜜凛(くろみつ りん)。アイドル並みの美貌を持つ彼女は、あっという間にクラスの人気者となる。
須藤はそんな黒蜜先生に小説を書いていることがバレてしまう。リアルの世界でファン第1号となった黒蜜先生。須藤は先生でありファンでもある彼女と、小説を介して良い関係を築きつつあった。
だが、その裏側で黒蜜先生の人気をよく思わない女子たちが、陰湿な嫌がらせをやりはじめる。解決策を模索する過程で、須藤は黒蜜先生のヤバい過去を知ることになる……。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる